第22話 徐々に…
大輝は、
若葉が家の中に入るまで
見続けていた。
若葉が家に入った後も
庭先で、
立ち続けていた。
さっきまで見ていた光景ばかりが
頭の中で流れ続けていたのだ。
しばらく立ち続けていると
玄関から母親が出てきた。
「大輝?」
母親の声すら聞こえないくらいに
今日の事ばかり考えていたのかもしれない。
何度も呼んでいたらしいが、
全く気付かなかった為
外まで来たと言っていた。
「大丈夫、大輝?」
ふと我に返り大輝は、
「ごめん大丈夫!
庭になんかいた気がしたから
見てただけだから!
何もいなかったから大丈夫だよ!」
と、言って家の中に入り
そのまま風呂場に向かった。
シャワーを浴び
風呂に入った。
いつもより、
ゆっくり浸かる事にした。
風呂に浸かりながら、
また、
今日の光景ばかり思い浮かんでくる。
何も考えたくないのに
その事ばかり考えてしまう。
落ち着く頃には、
のぼせてしまいそうだったので
のぼせる前に、風呂から上がった。
それでも少しのぼせていたので
リビングのソファに寝転んで
少し休む事にした。
母親も、大輝の姿を見て
すぐに、のぼせてしまったと気づき
飲み物を渡し、
うちわで仰いでくれた。
「大輝、大丈夫?
珍しいね。のぼせるなんて。
さっきそうだけど
何かあったの?」
と、うちわで仰ぎながら
聞いてきた。
大輝は、
「祭りが楽しかったから
思い出してたら
長風呂になっちゃって
だから大丈夫だよ!」
と、言って答えた。
そのまま落ち着くまで
目を閉じて話さないようにしていた。
母親も、思うところはあったが
大輝が言いたくない事を
無理に聞くわけにもいかず
そのまま少しの時間
うちわで仰ぎ続けてくれた。
少し楽になった来たので
部屋に戻る事にした。
母親には、
「だいぶ楽になったよ!
ありがとう!
もう寝るね!
おやすみ。」
と、言って部屋へ向かった。
母親は、まだ心配だった。
だが、若葉と何かがあったんだとは、
思っていた。
でも、若いから
明日には、普通になってるだろうと思い、
若葉にも、
今日の事は、伝えない事にしたのだ。
大輝は部屋に入ってからも
考えてしまっていた。
それでも時間も遅かった為
ベットに横になる事にした。
帰ってからは、
携帯を見ていなかった事に
気付きチェックしてみると
みんなから連絡が来ていた。
もちろん若葉からも、
連絡が来ていたが、
今は、
返したくなかった。
友達からのメッセージをチェックして、
無事に着いた事を返信した。
その中に
「若葉が連絡しても返信が無いって
心配してたよ?」
と、女友達からのメッセージが入っていた。
その友達にも返信をしてから
若葉のメッセージもチェックした。
「先に帰っちゃってごめんね。
ちゃんと着いた?」
と、最初は来ていた。
若葉からは、電話も来ていたが
「何かあった?
大丈夫?
携帯見たらすぐ連絡して。」
と、もう一つメッセージが来ていた。
なんと返していいか分からず
「ごめんお風呂に入ってた!
僕は大丈夫だよ!
若葉も足をしっかり冷やしてから寝てね!
おやすみ。」
と、風呂に入っていた事にした。
やり取りもしなくて良いように
寝るアピールも一緒に。
「何かあったのかと心配したんだよ!
でもよかった!大丈夫そうで!
安心したからもう寝るね!
おやすみ!」
と、若葉からも返信がすぐに来た。
大輝は、嬉しい気持ちもあったが
今日は素直に喜べなかった。
「白石と楽しそうだったな…
美男美女でお似合いだし…」
と、また考え混んでしまった。
ループのように光景ばかり浮かんでくる。
いつの間にか眠りについた。
大輝も夢を見ていた。
白石と若葉が、
楽しそうに話をしている姿を
白石に背負われて
顔を赤らめている、
若葉の姿を
その姿を、
離れた所で一人見つめる
自分の姿を
無意識のうちに
勝手に、
そう思い込んでしまっていたのだろう。
夢にまで見ていると
それが一番いいんじゃないかとも
思ってしまっている。
大輝は、普通が壊れる事を
恐れている。
無意識に
感情をコントロールしている。
普通が壊れない為には、
今のまま、変わらない関係が一番だと
それでも、若葉に嫌われたくない
若葉に好きな人が出来たなら
邪魔をしてはいけない。
若葉に甘えてばかりでは
若葉の邪魔になってしまう。
若葉とは、今まで通り
そして、今までより少しずつ離れて
幼馴染として見守る。
夢の中なのに
勝手に
そんな事を思ってしまった。
大輝は、
自分がそう思ってしまうと
行動にしてしまう。
自分が我慢する事に
慣れてしまっている。
まだまだ未熟な考えかもしれないが
大輝にとっては
それが正解だった。
「夏休みが明けたら
徐々に
徐々に距離をとって
若葉の邪魔を
若葉の恋を
応援しよう。」
若葉は、恋などしていない。
でも、大輝にはそう見えてしまった。
近くにいるからこそ聞けない。
近くにいるからこそわからない。
少しずつ、すれ違って行く…
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