第二章

第23話 二人の変化

夏休みが明けるまで


二人が会うことはなかった。


連絡は、今まで通り

毎日取っていたが、

変わり映えの会話ばかりだった。



大輝は、

部活や父親の所に遊びに行ったり

東郷さんが来ていたりと

暇を作らないようにしていた。


若葉も、足の腫れは引いたものの

一応、病院で

見てもらう事になったが

軽い捻挫だった。

大事を取って、部活は休んで

家でゆっくりしていた。


暇をしていたので、

女友達や、部活に友達が

遊びに来てくれた。


楽しい夏休み、最後を過ごしたのだ。



しかし、若葉は物足りなかった。

大輝と遊べていなかったからだ。


今までは、部活もなかったから

夏休みは、いつも大輝が一緒にいた。


でも今年は、部活もあり

大輝も、家族との事情があった為

ほとんど遊んでいない。


夏祭りだって結局

大輝とは、ほとんど一緒に居られなかった。


若葉は、物足りなさと同時に

言い知れぬ不安も

感じていた。


あの夢を見た日から

大輝が、

離れて行ってしまうんではないかと

思うようになった。


「お姉ちゃん離れかなぁ…」


もしそうなら仕方がないが

寂しいのは変わらない。


と、思い込もうとしていたのだ。



まだ若葉にとっては

好きと言う気持ちだとは

思っていなかった。


若葉も、大輝と同じで

思い込みが激しいのだ。


若葉は、

大輝を守ると決めた時から

大輝を弟のように

見守る事ばかり考えすぎて

自分を姉のような存在だと

思い込みすぎて


自分の気持ちには、気付けなかった。


大輝は、

普通に執着しすぎて

変化を恐れている。

普通が壊れることが

トラウマになってしまっていた。

その為、自分の気持ちを抑え込み過ぎて


若葉に、自分の気持ちを素直に伝えることを

決してしない。


若葉に、

気持ちを、気付いてもらう事をしなかった。



二人とも、お互い様なのだ。



しかし、不思議なもので、

一度、すれ違ってしまうと

どんどんすれ違っていくのだ。



夏休みが明け

学校が始まった。


朝は、いつも通り

大輝を若葉が迎えに行き

学校へと歩いて向かった。


いつもと変わらない

いつも通りの登校である。


そして、いつも通り学校に着き

教室の前で分かれて

お互い教室の中に入って行った。


始業式のあとは

授業がなく

その日の学校は終わりだった。


そのあとお弁当を食べ、

部活をし

帰りはまた、

二人で一緒に帰宅した。


何も変わらなかった。



若葉は安心した。

いつも通りの大輝を見て、

いつも通りに大輝と過ごせて


しかし、

大輝は、あの日から

邪魔にならずに

嫌われずに

徐々に距離を保つ事を考えていた。


だから、少しずつ

邪魔にならないように

嫌われないように

幼馴染でいてもらえる

距離を保ちつつ

今と変わらないようにと。



若葉は、この時には気付けなかった。

少しずつ変わっていく事を…


大輝もまた、変化を恐れている自分が

今の関係に、変化を与えようとしている事に、

まだ気付けなかった…



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