第33話 あっという間に

年が明け、休みが終わり、

新学期が始まった。


あれからは、

大輝と若葉は、少しずつ変わって行った。


しかし、

周りにはほとんど変わらないように

見えていた。



大輝は、少しずつ

若葉といる時間を

減らすようにしていった。


男友達や、部活の友達と

遊ぶ機会を増やし、

学校以外で会わないように

心掛けて、

若葉の邪魔をしないように

意識していったのだ。


学校の行き帰りは、

今まで通り、一緒に行き

学校の中でも、ほとんど変わらない。


毎日、連絡のやり取りも

簡単にはしていた。


普通の幼馴染を

しっかり演じていた。


好きな気持ちも変わってはいないが

抑え込めるようになっていた。


若葉と白石が一緒にいるところを見ても

我慢できるようには、なっていた。


仕方がないと思うようにしていた。


まだまだ大輝と若葉では、

吊り合っていないと

思い込んでいたのだから。



若葉は、自分の気持ちがなんなのか

まだ、よくわかっていなかった。


だが大輝との距離に、

徐々に違和感を感じ始めていた。


学校の行き帰りや、

学校のなかだと普通なのだが

家には帰ってや、休みの日に会うことが

ほとんどなくなっていた。


少しずつ、

遊ぶことがなくなっていったので

最初は、気付きもしなかった。


今では、二人で休みに遊ぶ事は、

なくなっていた。


夏祭りや、クリスマスパーティーなど

みんなと一緒に遊ぶ時は一緒に行くのだが、

みんなと合流すると

近くには、来なくなっていた。


大輝の変化に、

戸惑い、寂しさを感じていたが、

無意識に

自分の気持ちに気付かないようにしていた。



蓮からのアプローチも増えていき

周りは、二人を付き合わせようと

いつもくっ付けてくるようになった。


そんな事もあり

蓮とも仲良くなってはいったが

まだ、仲の良い異性くらいにしか

思えなかった。


蓮もまだ手応えを感じていないのかな

告白まではしてこなかった。


その間も、

若葉は、違う男子に

告白されたりはしていたが

全て断っていた。



部活も無事終わり、

若葉はテニスの個人で

県大会ベスト8まで進んだ。

ベスト8の時の対戦相手が

優勝候補の選手で

僅差で負けてしまった。


大輝も、サッカーで県大会まで進んだが

そこで敗退してしまった。


そのまま中学も受験の時期が来た。


大輝と若葉は、

成績も良かったので

地元の進学校に受験する事にした。


大輝は、

若葉と、別な学校に受験する事にした。

大輝の偏差値だとギリギリだったが

挑戦する事にしたのだ。


若葉は、最初から

地元の進学校に行く事を決めていた。


もちろん大輝も

同じ学校を受験すると思っていたので

当たり前に、大輝と高校も一緒だと

思っていた。


その話を聞いた時は、

産まれて初めて

学校が別になってしまう事に

若葉はショックを隠せなかった。


大輝の決意も固かったので

なにも言えずに

一人で落ち込んでしまった。


「どんどん離れていくな…」


寂しさを感じた。


しかし、受験生に時間はない。

なんとか切り替えて

受験勉強を一緒にやろうと

大輝を誘そったのだが、

部活のみんなに教えながら

勉強をするからと断られてしまった。


若葉も、蓮たちに誘われて

勉強する事になった。


他の日も誘おうとしたが

なかなかお互いの予定が合わずに

一緒に勉強出来なかった。


そんな感じで

朝は、一緒に登校するものの

帰りは、ほとんど別になっていった。


朝は、まだ一緒に登校出来ているので

話す機会はあるが、

最近では、

登校の途中で、蓮が待っているようになった。


なので大輝とは、本当に少ししか

話せなくなってしまった。


蓮も加わり歩いていると

いつも大輝が後ろから

少し離れて歩くようになって、

違う友達を見つけて

そちらに行ってしまう。


若葉は、また寂しい気持ちになるのだ。



大輝は、若葉の邪魔にならないように

朝以外は、

なるべく用事を入れるようになった。


「白石と若葉がいい感じらしい」


と、友達みんなが言っていた。

なので邪魔をしないように

心掛けいたのだ。


朝も

部活を引退してからは、

白石が若葉を待ってから

登校する様になった。


白石と合流するまでの少しの時間が

若葉と二人で話せる時間なのだが

昔と同じ、いつも通りの話だけしかしない。


白石と合流してからは、

少し後ろを歩き、

なるべく会話に加わらず

友達を見つけたら

そっちに行くようにして

邪魔をしないようにしていた。


大輝は、

朝以外の時間も

勉強に打ち込むことで

考えないように

見ないようにしていた。


最初に比べれば

だいぶ慣れてはきたが

白石と若葉が、

楽しそうにしている姿をみると

どうしても、

胸が締め付けられた。


勉強をしていれば

考えないで済んだ。


気付くと、

大輝の成績は、良くなっていた。



大輝は、

最初にギリギリだった高校の

合格ラインまで届いたのだ。


先生からも


「この成績なら大丈夫だろう!」


と、お墨付きを貰えたので

成績を落とさないように

更に勉強に励む事にした。


若葉も、

地元の進学校に受かる為に

必死に勉強をしているのだろうと

思っていたので、

連絡も、最低限のものになっていった。




受験当日

大輝は一人、駅に向かい

電車に乗って受験会場へとむかった。


試験が始まり、

手応えを感じられる出来だった。




若葉は、地元の進学校に受験するために

必死で勉強していた。


合格ラインは超えてはいるが

絶対ではない。

落ちないように必死だった。


大輝が、違う高校に

行ってしまうからと言って

若葉が受験を

失敗するわけにもいかない。


大輝の成績が

どんどん伸びている事も

知っていた。


大輝も頑張っているのに

若葉が頑張らないわけにもいかない。


若葉も、前より成績が上がっていた。


受験の日は、

大輝にメッセージを送り

お互いの健闘を祈った。


試験も

しっかりとした手応えを持って

終えることができたのだ。



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