第15話 初めまして
モヤモヤとした祭りが終わり
八月が始まった。
父親が出て行って以来
父親とは、一度も会っていない。
やはりこのまま
会わなくなってしまうのだろうか
とは思っている。
会いたいとは思うが
本当の息子ではない
と、言う事実があるため
大輝からは、言い出せなかった。
八月に入ってすぐ
母親から話があると言われた。
どんな話かは、なんとなく想像がついた。
わからないふりをして聞いてみると
やはり本当の父親のことだった。
お盆休みに入る前に
一度会って欲しいらしい。
会いたいわけではないし
話したいわけでもない。
大輝にとっては、
普通を壊した人物に
代わりわないのだから。
しかし母親の頼みでもある。
今の普通を守るために
会う事を了承した。
母親は安心したのか
「ありがとう大輝。」
と、言って笑顔になった。
今回も偽る事が正解だったと
大輝は思っていた。
その事を大輝は、
若葉にだけは伝えた。
若葉からは、
「会うのはいいけど
我慢とか無理とかしちゃダメだからね!」
と、言ってもらえた。
若葉に心配して貰えるだけで
大輝は、嬉しかった。
本当の父親に会う日が決まり
その当日がやってきた。
家に来ると言うことなので
一応、支度をして待った。
母親もそわそわしている。
大輝としては何度か見ているので
顔はわかるが
話した事はなかった。
どんな話をすれば良いのか
よくわからない。
とりあえず合わせる事にした。
インターフォンがなり
とうとう対面する時がきた。
「初めましてまして
東郷司です。
今日は、会ってくれて
本当にありがとう。」
と、深々とお辞儀をしていた。
「初めまして
浜中大輝です。
よろしくお願いします。」
と、お辞儀をして挨拶をした。
父親の苗字は滝田だったが
大輝の苗字は、
元々母親の苗字だった為
変わっていなかった。
挨拶をを終えてリビングに向かい
テイブルの所で対面に座った。
「改めまして
東郷司と言います。
大輝君も聞いていると思うけど
僕が君の父親です。
今まで会う事も出来ず
本当に申し訳ない。」
と、深々と頭を下げてきた。
「今さら父親と言われても
受け入れてもらえるとは思っていない。
受け入れてくれなくても構わない。
ただ、大輝君と過ごすチャンスは
与えてもらえないだろうか?
…
大輝君の父親にならなくても
大輝君の一番近くにはいる
叔父さんでも良い。
…
いきなりのお願いになってしまうのだけれど
聞いてもらえないだろうか?」
頭を下げたままお願いされた。
母親も一緒に頭を下げてきた。
とりあえず身を任せ
合わせる事にした。
「僕にとっては、
父親は一人なので
一番近くにいる叔父さんでも良ければ
よろしくお願いします。」
と、応えた。
二人とも手をとって喜んでくれた。
とりあえず正解だろうと思った。
その後、色々話を聞いた。
東郷さんの家系は
昔からの由緒ある家系で
許嫁みたいな人がいたらしく
自由恋愛は学生までとなっていたようだ。
今時珍しいとも思ったが
あるにはあるのだろう。
学生の時に付き合っていたのが
母親だったらしく
そのまま結婚をしようと思っていたらしい。
しかし東郷さんの親は
それを許してくれなかったようだ。
なんとか説得を試みたが
許嫁の方との婚姻を
無理やり結ばれてしまったらしい。
母親に連絡も出来ないよう
裏で手を回され
無理矢理引き離されてしまった。
仕事だと言って海外に行かされ
日本に帰る事も出来なかったらしい。
やっとの思いで日本に帰国し
母親を探し
母親の仕事先に向かったのだと言っていた。
そこで大輝君の事を初めて聞いて
驚いたし
すごく嬉しかったと言っていた。
しかし旦那様にも大輝君にも
本当に申し訳が立たないとも
思ったとも言っていた。
それからなんとか
母親と一緒になる事が出来ないかと
模索して、ようやく目処が立ったらしい。
許嫁だった今の奥さんも
東郷さんには興味がなく
政略結婚だった為
仕方なく一緒になったと言われたらしい。
そしてお互いに協力し合って
円満に別れる方法を探して
両親に納得してもらい
離婚が出来たと言っていた。
大輝の父親とも話をさせてもらって
「大輝が嫌がらなければ良い」
と、言われ
「だが俺が大輝の父親だ!」
と、言っていたらしい。
その言葉が一番嬉しかった。
父親は、父親なりに悩んでいたらしく
息子だとは、思っているが
本当の事を知った時
父親として選ばれなかったら
と、思うと怖くて
仕事ばかりに逃げ
そのうち大輝とも、どう接して良いか
わからなくなってしまった。
と、言っていたらしい。
「本当に良かった。」
心の中でそう思えた。
東郷さんと大輝が会うまでは
会う事はしないと言って
大輝が、そのあと会ってくれるなら
会いたいと言ってくれたらしい。
父親に会えると思うだけで
嬉しかった。
父親との話し合いも全て済んだのが
中学に入る前だったと言っていた。
そのあとは、今後の事などを話して
大体の事が決まった。
まず、
毎週末は、泊まりに来る事になった。
徐々に親睦を深める為らしい。
次に、
来年には、母親と婚姻を結ばせて欲しい
と、言うことだ。
そこは、好きにして貰えたらと答えた。
最後に、
父親に会える日が決まった。
お盆休みに
母親の両親の所に挨拶に行く為
その間、父親のところに
一泊することなった。
お盆休みが楽しみになった。
そのあとは、
東郷さんが会社を作り成功させて
両親を納得させた話や
奥さんとの離婚のために
お互いが自由恋愛をしたかった事を
伝え続けて
最終的には謝らせ
東郷さんと元奥さんは、
晴れて自由になったらしい。
その説得に時間が掛かってしまって
会いにくるのが遅くなったと言っていた。
色々な話を聞けて良かった。
時間も遅くなり、
東郷さんは、帰っていった。
次に来るのは、お盆明けに来る事になった。
今日会うのは、
本当は、嫌だったが
次に会うのは、
嫌ではなくなったのだ。
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