第18話 夏休み最後の祭り

夏休みも残り僅か。


父親とも母親とも

東郷さんとも

今のところ良好な関係を築けている。


周りから見ると歪かも知れないが

大輝からしてみれば

今が、ようやくたどり着いた

普通なのだ。


そんなこんなで、充実した毎日を送っていた。


若葉とも毎日、連絡を取り合っている。

もちろん父親の事もちゃんと話した。

そのほかはたわいもない会話が

ほとんどである。


そんな話をしていると若葉が


「今週の夏祭りもみんなで一緒に行こうよ!」


と、言ってきた。


なので


「いいよ!もう誘ったの?」


と、聞いてみた。


「まだ誘ってないから

私は女の子に連絡するから

男の子は大輝が連絡しといて!」


と、言われた。


そのあとすぐに、

男友達に連絡を取り

来られる人を誘ってみた。


何人かは別な友達と約束していたみたいで

前回と同じメンバーになりそうだった。


一人だけ前回は来ていなかった

友達が来ることとなった。


女の子の方も前回と

ほぼ同じメンバーだったので

集合時間を決めて

連絡を済ませた。



夏祭り当日になり

若葉を迎えに行った。


前回は私服だったが

今回は浴衣を着ていた。


「どう?似合うでしょ!」


と、言われてふと我に返った。


「すごく可愛いよ!」


と、しか言えなかった。


本当に見惚れてしまっていたのだ。


「ありがとう!大輝!」


と、若葉はいつもと変わらなかった。


「じゃ、行こっか!」


と、言って集合場所に二人で向かった。


大輝はドキドキしながら歩いていた。


でも気持ちを見せてはいけないと思い

いつもと変わらない

普通通りを意識した。



集合場所に着くまで

何を話したか覚えてないくらい

必死に気付かれない様にしていた。


集合場所に着いたら

やはり男子は若葉に見惚れていた。


そのくらい若葉は、

可愛かったのだ。



みんなと合流してからは、

前回と同じように

若葉にアピールする為

男子が

いや、前回よりも積極的に

アピールしていた。


今日に若葉は一段と可愛く

男子は必死だったのだ。


しかし大輝は前回と同じで

その輪に加わらず

他の友達と一緒にいた。


前回は転んでしまった友達と

女友達何人かで話しながら

祭りを楽しんでいた。


若葉もみんなで楽しみたいから

男子だけではなく女子とも

楽しそうに過ごしていた。


大輝とは、祭り会場に着いてからは

話せていなかった。



大輝は大輝で、本当は若葉と話したい。

でも、いつも一緒に居るんだから

こういう時くらい話さなくても

いいよね。

と、言った感じの空気をすごく感じるのだ。


男子の中でも恋愛の空気感はあるのだ。


ましてや、大輝自体が

弟のように見られているから

なおさらだ。



それでも二人とも

夏休み最後の祭りを楽しんでいる。


みんなで出店に並んだりするだけで

楽しかったのだ。



前回は来なかった

友達も楽しそうにしていた。

若葉と同じクラスの


白石蓮


イケメンで、頭も良く

身長は、今日きた男子の中でも

一番高かった。


ハイスペック男子である。


若葉と並んでも

お似合いに見えてしまう。


若葉ともちょこちょこと話ているが

こちらは女子がほっとかない。


前回来ていなかったった為

今回は大人気だ。


気付いたら3グループに分かれていた。


若葉グループ


白石グループ


色恋興味なしグループ


大輝は色恋興味なしグループに

居るしかなかった。



花火の時間も近づき

また花火が見える所へと

移動を始めた。


前回と違う会場での祭りだった為

花火を観る場所は

考えていなかった。


みんなと相談しながら歩き

少し人が混み合う場所へと

たどり着いた。


若葉も下駄を履いている為

歩きにくそうにしていた。


花火が始まるまでには

人が溢れてきた。


そんな時、

若葉に誰かがぶつかり

足を挫いてしまったのだ。


一番近くにいたのは

白石蓮だった。


すぐに若葉に駆け寄り

肩を貸していた。


「みんなは花火観てて。

美咲を座れるとこまで

運んでくるから。」


と。言って背中に乗るように促していた。


若葉も、花火が始まってしまうのに

みんなに迷惑をかけてしまうと思い


「ごめんみんな、ちょっと休んでるね」


と、言って

いつもならそんな事はしないが

背中に乗ることにした。


みんなも一緒にと思ったが

人混みを移動するだけで大変だ。


男子は悔しそうに

女子は羨ましそうに


見送った。


大輝はもう花火どころではなかった。


今見た光景ばかりが頭の中に浮かんだ。


若葉を背中に背負うなんて

した事もないし

された事もない。


しかも、白石は自然だった。

当たり前のように若葉を背負って行った。


その姿を、見送るしかなかった。

胸が苦しくなった。


また昔のように

嫌な気持ちになった。


なんとも言えない気持ちになり

花火が終わるまで

只々、その事ばかり考えてしまった。



花火が終わるまで

白石も戻って来なかった。

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