第47話 広がるすれ違い

若葉と、別に帰ることになった後、

一人で歩きながら、


「白石は、告白したんだろうな…」


と、思っていた。


「若葉の答えはわからないが、

若葉を家まで送って行くと言うくらいだから

上手くいったんだろう。」


大輝は、この時

勘違いをしていた。

白石が、花火の最中に告白したのだと、

そして、上手く行ったので

友達と笑い合っていたのだと、

上手くいったから帰りも、

白石が若葉を送って行きたかったんだと

何も聞かずに、

そうだと決め込んでしまったのだ。


大輝は、

これからの事を考えながら

家までゆっくり歩いた。


若葉との連絡は、今までも

大輝からしないようにしていたが、

これからは、

もっとしないように意識しないといけない。

若葉から連絡が来ても

あまり返さないようにしないといけないと、

また勝手に決めていた。


若葉と白石は、

付き合ってもいないのに

付き合い始めたと、

思い込んでしまった。

家に着くまで、

そんな事ばかり考えてしまっていたのだ。


家に着き、

風呂に入ってから部屋で

ゆっくりすることにした。

だが、また考えてしまう。


「明日、父さんの所に帰ろ。」


と、ふと思った。

まだ何日間かは、

家にいる予定だったが

すぐに帰ることにした。


そこから、急いで荷物を纏めて帰る準備をした。

準備をしている時間は考えなくて済むからだ。


準備を終え、

母親と司さんにも伝えに行った。


まだいればいいのにと言ってくれたが、

勉強が残っていると伝え納得してもらった。

この日、

若葉からの連絡はあったが

簡単な返信だけして終わりにした。



翌日は、大輝は、

朝から支度をして、

急いで父親の元へ帰っていった。

若葉に、連絡することなく。

何も伝えずに。


大輝は、父親の所に戻ってから

他の事を考えたくなかった。

特に、若葉と白石の事は、

考えたくなかった。


夏休みが終わるまでは、

勉強や、高校の友達と遊んだりと、

無理やり予定を詰め込んだ。

何かしていないと、

いつの間にか考えてしまう。

気を紛らわすためには、

ちょうどよかったのだ。


夏休みが明けてすぐにテストがあるので

高校の友達とテスト勉強をしようとなって

朝からみんなで集まって勉強会をした。

詩音や他の女子も集まって図書館に向かった。


図書館に着くまでは

みんなで楽しく移動していたが、

図書館に着き勉強が始まると

みんな集中していた。

大輝も集中して勉強していると

けっこうな時間が経っていて休憩しようと思い

席に座りながら背伸びをしていると

隣は誰もいなかったはずなのに

いつの間にか詩音が隣に座っていた。

大輝は驚いたが詩音は気にせず


「大輝君すごく集中してたね。

私が隣に座っても全然気づいてなかったね。」


と、小声で伝えてきた。


「詩音、いつの間に座ってたの?」


と、大輝が聞くと


「10分くらい前に疲れたから

一緒に休憩しようって誘おうと思ったら

大輝君が真剣な顔して勉強してたから

気付くまで隣に座って待つことにしたんだ。」


と、伝えてきた。


「10分も前から?

全然気付かなかった。

じゃあ今から休憩しようっか!」


と、自販機の所まで行き

ジュースを2本買って1本は詩音に渡した。

詩音はお金を出そうとしたが


「待たせてしまったぶんだよ。」


と、言っておいた。


「ありがとう大輝君。」


と、詩音も言ってくれ

休憩をしながら夏休みの話などをした。

詩音と話してくると時間がけっこう経っていて

また勉強に戻った。

この日はお昼までみんなで勉強をしてから

ご飯を食べて帰ることになった。


みんなでファミレスに向かい

席に着くと詩音が大輝の隣に座ってきた。

男子はみんな羨ましがっていたが

大輝なら仕方がないと我慢していた。

何気ない話をみんなでしながら

ご飯を食べてゆっくりとしていた。

詩音は大輝の隣でよく笑っていた。

とても楽しそうだった。

大輝も色んな事を考えずに済んでいたので

とても楽しい時間を過ごせたのだ。

この日はそのまま解散となった。

帰りも詩音と途中まで一緒だったので

テストの話などをしながら帰ったのだ。


夏祭りの次の日から

若葉からの連絡は夜だけ簡単に返すようにし

一、二通ほどのメッセージの

やり取りをするだけにしていた。


大輝もどうして良いのかわからなかった。

ただ、邪魔をしてはいけない。

それだけは思っていたので

若葉を避けるようにしていた。


大輝も、

普通から遠ざかっている事を

気付けずにいたのだ。


そんな時、

佐々木千花から連絡が来た。


「白石君と若葉が

いい感じみたいだから、

邪魔しちゃダメだよ!」


と、メッセージには書いてあった。


「やっぱりそうだったのか…」


大輝は、そう思った。


自分が我慢をすれば

自分が気持ちを抑えれば

若葉が幸せになれる。

若葉との関係も今までと同じ

幼馴染でいられると本気で思っていたのだ。




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