第66話 詩音と初詣
大輝は、
詩音とイルミネーションを見に行ってから
毎日、何気ない連絡を取り合っていた。
二人は、年が明けてからの話にもなり
初詣にも一緒に行こうという事になったのだ。
大輝は、大晦日までは家に帰り
年が明けてすぐに、
父親のところに戻ることになっていた。
例年通りだと
地元の友達と一緒に初詣に行っていたが
今年は一緒に行きづらかった。
なので詩音と初詣に行く事が決まって、
地元の友達にも断りやすくなったので
ちょうど良かった。
詩音とは、
二人でいても楽しくいられるので
楽しみが増えて逆に喜んでいたのだ。
いつまでも
若葉の事を引きずっていても仕方がないし
気持ちを切り替えるためにも
良いタイミングだった。
詩音といつ初詣に行くかを決めたりしながら
連絡をとり大晦日を迎えていた。
初詣には二日に行く事が決まり
大晦日を家族と共に過ごした。
来年には大輝も兄になるので
三人で過ごす最後の大晦日となる。
父親も誘ったのだが
「なんとなく気まずいから嫌だ!」
と、言って来なかった。
気にしなくても良いのにと
大輝は思っていたのだが
父親は、母親と司さんに気
を使ったのだろうと思った。
父親は、結局来なかったが、
三人で楽しく大晦日を過ごす事が出来た。
今までだったら
どこか気を使いながら過ごしていたが、
今年は、本当に気を使わずに楽しく過ごせた。
大輝にとっては、
ようやく普通の家族になれたと思った。
年が明け、父親のところに帰って来た。
父親も楽しみにしていたのか。
お節まで用意してあった。
二人で新年の挨拶をし、
お節を食べ昨日と同じように
本当に楽しく過ごせた。
お年玉も貰い明日の詩音との初詣も
これで少しは出してあげられると思い
父親に感謝した。
次の日になり、
前日に決めていた待ち合わせ場所に向かった。
お正月ということもあり
人もたくさんいたが
詩音に連絡を入れて周りを見渡すと
大輝に向かって走ってくる女性がいた。
詩音だった。
「お待たせ!」
まさか着物を来てくるとは
思っていなかったので正直驚いた。
だが、
その姿はとても綺麗でみんなが詩音を見ていた。
「どうですか?」
照れながら詩音が聞いて来たので
「本当に良く似合っているよ!
すごく素敵で詩音がさらに美人になった感じ!」
大輝は、思っていた事をそのまま口にした。
詩音は、顔を真っ赤にしながら
「ありがとう!」
と、大輝に伝えた。
お正月に着物を来て初詣に行く事が
ずっとしてみたかったらしく
今日は勇気を出して
お母さんの振袖を着させてもらったといっていた。
正月に、新調した綺麗な着物を着て新年を迎える「着衣始め」という文化があり
「着衣始め」は着物が普段着であった昔は、
どの家庭でも行われていた習慣だったらしい。
と、ドヤ顔で詩音が説明してくれた。
「本当は着物も新調するらしいんだけど
そこまではしてないんだけどね。」
最後は可愛らしい笑顔を浮かべてそういっていた。
そんな詩音の心遣いにも嬉しくなって
初詣は楽しく、ドキドキしながら過ごせた。
大輝にとっては、
若葉以外にドキドキしたのは初めてだったので
新鮮な気持ちで歩いていた。
神社に行き、出店を周る。
詩音も振袖なので歩きにくそうだ。
さすがに手は繋いだりはしなかったが、
人混みを歩く時には、
大輝の服を掴んでもらった。
詩音も顔が赤かったが、
大輝も顔が真っ赤だった。
初々しいカップルのようだ。
賽銭箱の前まで辿り着いた二人は、
お金を入れ、お詣りをした。
大輝は、家族の健康と今の幸せが続く事を願った。
詩音は、内緒と言って教えてくれなかったが、
笑顔で楽しそうにでも恥ずかしそうに話していた。
お腹も空いたので、
出店でたこ焼きなどを買い
食べながら歩いた。
そのあとは、
さすがに詩音も振袖に疲れて来たようで
早めに帰る事にした。
詩音は、もう少し回りたいと言っていたが、
冬休み中に、
もう一度二人で出掛けようというと
嬉しいそうに頷き、
今日は帰ることに納得してくれた。
詩音といると大輝も自然と笑顔になれる。
新年早々、
大輝はとても気分が良い
スタートを切る事が出来たのだ。
すれ違って、トラウマを抱えてそれでも… ya_ne @ya_ne
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