第56話 心配
若葉は、千花に言われた事を
保健室で休みながら考えていた。
若葉は、
休まなくても大丈夫と言ったのだが
千花に、
考える時間も必要だと言われ、
調子が悪いと言って
休ませてもらっていた。
「どうしたらいいんだろう…」
みんなに会うまでは、
蓮に若葉の気持ちを伝えようと思っていた。
だが、
みんなにあれだけ言われてしまうと
すぐには言い出しづらい。
「元々は、
私がはっきりしなかったのが
悪いんだから断るしかない。
ちゃんと伝えなきゃ。」
と、若葉は伝える事を決めたのだ。
保健室から教室に戻ったが
若葉の考えが甘かった事がわかった。
1限目を休ませてもらったので
休み時間に戻ったのだが
教室に入った瞬間
「大丈夫?まだ調子悪かったのにごめんね。」
「良くなった?」
などと声をかけられたので
「もう大丈夫だよ。ありがとう。」
と、元気よく答えると
「ならよかった。
じゃあさ聞きたいんだけど、
白石君からいつ告白されたの?」
「聞きたい聞きたい!?」
と、みんなが一斉に話しかけて来た。
若葉が困惑していると、
「返事はもうしたの?」
「もちろん付き合うんだよね?」
などと答える前から
どんどん話が広がっていってしまう。
何も答えていないのに
勝手に盛り上がっている。
そこでチャイムがなった。
「お昼にたっぷり聞かせてね!」
と、みんな席に戻っていった。
若葉は、千花を見た。
千花も、予想していた以上だった為
助けに入る隙もなかった。
若葉も自分の席に座り
自分の考えが甘かったことに気づいた。
若葉と蓮だけの問題だと思っていた。
だが、
もうすでにみんなの問題になっていた。
高校生の若葉に、
この問題に立ち向かう勇気はなかなか出ない。
若葉の気持ちとは裏腹に物事は勝手に進んでいく。
気持ちを伝えて断わってしまえば
なんのこともなく
終わっていたかもしれない。
だが、伝えるまでが一番怖いのだ。
何が起こるのか
何が変わるのかがわからないから。
千花は、今の光景を見て
やはり今伝えるべきでは無いと
改めて思った。
元々目立つ二人が付き合いそうになっている。
野次馬が騒がないわけがないのだ。
千花は、また責任を感じてしまった。
自分が余計なことをしないで
すぐに断わらせておけば
こんな事にはならなかった。
なんとか若葉を守らなければと
穏便に済ませる為には
少し時間をかけないといけない。
そう思っていたのだ。
大輝は、あの日以来
ずっと笑顔だった。
みんなと合わせるために
みんなに心配をかけないために
学校でも家でも常に笑顔だった。
友達はみんなその違和感に気付き始めていた。
詩音も大輝になるべく声をかけるようにし
変化を伺っていたがなにも変わらなかった。
なので詩音は直接聞いてみることにした。
「大輝君、大丈夫?
文化祭の時以来
無理して笑顔を作ってるように見えるよ?
地元の友達っぽい人達がいたけど
その人達と何かあったの?
何かあったのならちゃんと聞くから
話してくれないかな?」
大輝にそう伝えてみたのだが
「無理なんかしてないよ!
いつもと変わらないから大丈夫だよ詩音。
心配してくれてありがとう!」
と、言われてしまった。
そんな大輝の事が心配で仕方なかった。
詩音に今出来ることは、ほとんどなかった。
ちゃんと話してくれるまで待つしかなかったのだ。
友達みんなも心配していたが
大輝はきっと理由を話してくれないから
自分から言い出してくれるまで待つしかなかった。
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