すれ違って、トラウマを抱えてそれでも…

ya_ne

第一章

第1話 最初の始まり

浜中大輝には、

幼い頃からの

幼馴染がいた。


彼女の名前は、


美咲若葉


近所に住む、同い年の

とても可愛らしい女の子だった。


近所に子供は、

あまり住んで居なかったので


いつの間にか

仲良くなって


いつも一緒にいる事が、

多くなっていった。


親同士は、

普通の近所付き合い程度だったが


いつも近くの公園で

二人で遊んでいたのだ。



幼稚園も一緒だったので

そこでも、いつも一緒にいた。


仲良く遊ぶ姿は、

とても微笑ましく

暖かい空気に包まれていた。



おままごとをしていても

夫婦役ではなく、

母親と息子といった感じで

遊んでいたので、


お互いに、

この頃は、

そう言った感情は、

なかったように思えた。




幼稚園を卒園し

同じ小学校に入ってからも

姉と弟のような関係が続き


いつも一緒にいる事

が多かったのだが


高学年になり

少し年頃になると

男友達・女友達と

お互いに、

別々で遊ぶ事が増えていった。


仲が悪くなった訳ではなく

いつも、行きと帰りは、

一緒に帰っていた。



若葉はいつも姉のように

大輝を守るように


大輝は姉の後ろをついていくように


微笑ましい関係だった。


その頃

大輝の両親は、

冷め切った関係になっていた為


家では

子供ながらに

両親が

仲良くない事がわかった。



ある日

いつものように

若葉と大輝が学校から帰り

公園で遊ぶ約束をして

荷物を置きに家に帰ると



母親が知らない男性と

一緒にいた。


焦っていたのか

声を掛けてきた。


公園で遊ぶ為

走って帰ってきたのでいつもより

早く家に着いていた大輝だったが


母親は

知らない男性を

そそくさと送り


引き攣った笑顔で


「お母さんに昔のお友達なの。」


と言っていた。


この時はよくわからず


「そうなんだ!

公園行ってきます!」


と、言って

出かけていった。



公園で若葉と

何事もなかったかのように遊び


その日は、楽しく過ごした。


次の週も

丁度、家から

知らない男性が、

出ていった後だった。


その時は、

まだ家から離れたところにいたので


鉢合わせする事はなかった。



また次の週の別な日も

来ていたみたいで


「いつも来てるね。」


と、母に聞いてみたところ


「お母さんの昔からの友達だから

家に来て昔話を良くしているのよ。」


と、言っていた。



まだ小学校の大輝には、

その意味がよくわからなかった。




また次の週も来ていて


「また来てるんだね」


と、若葉が言ってきた。


「本当にお友達の人なの?」


と、聞いてきた。


「でもお友達って言ってたよ?」


と、大樹が伝える。


「今度来そうな日に、急いで帰って

確かめてみよ!」


若葉は、好奇心を掻き立てられ

次の週は毎日二人で

急いで帰った。



大輝の

最初のトラウマになる事になるとも知らずに…


若葉にとっても、最初の後悔の始まりである。



学校が終わり

二人で急いで帰った。


家の前まで着くと、息を整えた。


そっと、家の裏口に周り

隠してあった鍵で

勝手口をそっと開けた。


忍び込むように家の中に入った。


忍者ごっこのようで

ワクワクしていた。


男性の声がしたので、

今日はいるみたいだ。



リビングで話をしているようだったので


リビングまで足音を立てないように歩いた。



そこから聞こえて来る話を

二人で耳を澄ませて聞いてみると



母親が話していた。


「あの子が年々、あなたに似てきているわ。

最近は、仕草まで似てきていて、

あなたが近くにいるのかと

思ってしまうくらいよ。」


と聞こえてきた。


「俺に似るのはしょうがないよ…

俺と君の子供なんだから…

本当に申し訳ない…

旦那さんには、いつ話す予定なのかな?」


「あの人は仕事ばかりで

話しをする時間がないの…

もしかしたら、もう気付いていて

避けられているのかも…

最初から私には興味がなかったんだと思う…

いつも比べられている気がしたから…」


「本当にすまない…

こんな思いをさせてしまって…

俺があの頃

もっと力が有れば…

抗えるだけの力が有れば…」


「仕方がないわ

あの頃は若かったし

何も知らなかったのだから…」


「すまない…」


「もうこんな時間!

そろそろあの子が帰ってくるわ!」




急いで二人は隠れて

勝手口から外に出た。



よくわからず聞いていた。


「あの人がお父さん?」


などと、呑気に考えながら。



外に出てから

若葉が、気まずそうに見ていた。


「大丈夫?」


と、だけ聞いてきた。


「大丈夫だよ!

あの人もお父さんなのかな?」


と、応えると


若葉が、抱き付いてきた。

頭を撫でながら


抱き締めるのではなく

抱きついてきた。


そのまま


「大丈夫だよ…

大丈夫だよ…」


と、言いながら。


若葉は、その言葉の意味を

子供ながらに理解していたのかもしれない。


大輝も徐々に理解していったのか

若葉に頭を撫でられながら

自然と涙が流れた。



落ち着きを取り戻した二人は、

そのまま公園に行くことにした。


遊ぶ気にはなれなかったが


このまま家にいる事もしたく無かった。


荷物も置かず公園に行った。


何も話さず、

只、公園に行き

ブランコに乗った。


「私が、確かめようなんて言わなければ…」


若葉は、後悔した。

それと同時に

若葉は、心に誓った。


「大輝は私が守るんだ!」


元々、弟のように思っていたので

姉のような気持ちで、そう思った。



若葉のすれ違いの始まりである。



大輝は、今後の事を考えていた。


「今のお父さんは、お父さんじゃない?

あのおじさんが、本当のお父さん?

お母さんは、どっちが好きなんだろう?

僕はどうしたらいいのかな…?」


考えても考えても答えは出なかった。



はっきりした事は、

今の家族が、本当の家族ではなく

嘘の家族だったという事だ。


普通だと思っていたものが

普通ではなかったのだ。


子供ながらに色んな感情が巡った。



大輝のトラウマの始まりであった。








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