だってあなた、泣いているもの
「さて」
そろそろ閉幕の時間だ。
「いかがでしょうか」
笑劇は終わりを迎える。これ以上ない、素晴らしい終わり方だ。
「これにて
これは愛する人を救う代わりに、大切な人を失ってしまった男の物語。
「皆さん、笑えましたか」
僕のような愚か者を笑うがいい。さあ、笑うがいい。
「あはは! 何で返事をしないんだ」
観客は答えない。
「笑えよ! おかしいだろ⁉ 僕は滑稽だっただろう⁉」
やはり観客は答えない。
「昔からそうだ! 愛する人が! 大切な人が皆死んでいくんだよ!」
答えるはずがない。
「それなのに僕はいつも何もできないんだよ! 馬鹿だろ⁉ なあ!」
この劇場には、僕しかいないのだから。
「じゃあ僕が笑うよ! あははは!」
こんな駄作、誰も見に来ないのだから。
「チョージ」
それなのに誰かが呼んでいる。まだ挨拶が終わっていない。邪魔をしないでくれ。
「笑えるはずが、ない」
「どうしてさ?」
「だってあなた、泣いているもの」
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