サンドイッチではないか!
こうして《
『あなたが鼓笛隊長? ま、せいぜい頑張りなさい』
アコーディオン型
『よろしくお願いします……チョージさん』
リコーダー型
『君が指揮するのかい? ふふ、面白そうだね』
バスドラム型
『うむ? そなたに我を奏でられるかな』
シンバル型
彼女達はとても個性的で、僕にない輝きを持っていたのが印象的だった。
「あれから一週間経ったけど、これなら何とかなるかな」
王女の指示で隊長を務めることになったガーデルピア王国軍特殊戦術鼓笛隊。それがいよいよ活動を始めようとしていた、そんな日のことである。
「さて皆。いよいよ今日から僕達は王国軍の鼓笛隊として活動を開始するけど――」
一階のパン屋でいつものようにパンを食べている時、僕は皆に話しかけた。
「昨日までは秘密にされていた私達の存在も、ようやく認められることになったのね」
「いやアコ。お前達存在を秘密にされていた割には、この一週間好き放題だったじゃん」
「うむぅ? このパン屋を手伝っていただけではないか?」
「これからもパンのテイスティングなら任せてくれたまえ」
いや、それがただの手伝いの仕方なら良かったけどさ。
「じゃあ、あの店の外に見える人達は何さ⁉」
『リールちゃん! こっち向いて!』
『アコ様! 叱ってください!』
まだ開店前のパン屋の前に人が集まっている。リール達アンサンブル姉妹に好意を寄せつつ、僕には殺意を向けるという器用な人間達が集まっているのだ。
「ほらあんた達! まだ開店前なんだからどっか行きな!」
「はーい」
ゼルネスが集団を追い払うのを見ながら、僕はため息を吐いた。
「確かにお前達は可愛いけどさ、ちょっと看板娘としてスペックが高すぎないか⁉」
特にフーロさん。あなたゼルネスとの息がぴったりじゃないですか。どういうこと?
「私はパンが好きだからね」
もう、鼓笛隊じゃなくてパン屋として活動した方がいいような気がしてきた。
まあいいや。本題に入ろう。
「そんなわけで王女から連絡があった。今日から軍の敷地内で訓練していいってさ」
「ようやく活動ができるのですね……」
「腕が鳴るわね!」
本当に大丈夫だろうか。王女はどのように軍の皆に伝えたのだろう。心配だ。
「チョージくん。クリームパンはおやつに入るかい?」
「フーロさん。ちゃんとジーガルが昼食を用意してくれましたから」
ゼルネスから籠を受け取り、皆に見せる。
「おお! サンドイッチではないか!」
「皆でお昼に食べてね」
「ありがとうゼルネス」
「お礼ならあの人に言っておくれ。今は生地を作っているから、また後で、ね?」
「それじゃあ行こうか」
ゼルネスが開店の準備を始めたのを見て、僕達はパン屋を後にしたのであった。
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