領収証発行してください

「ゼルネス。ちょっと買い物に行ってくる」

「いいけど、またトラブルを起こすんじゃないよ!」

「わかっているよ」

「本当にわかっているのかしら?」


 後ろでゼルネスが何か言っているが、気にしない。

 僕がトラブルを起こすはずがない。僕は――紳士だぞ?


「さて、まず何から買おうか? やっぱり服かな?」

「機械人形に服が似合うと思っているの?」

「機械人形かどうかは関係ないね。リールは可愛いから、君に合う服を買いたいだけさ」


 リールを連れて、商店街の服屋に入る。あまりおしゃれな店には入り慣れていないが、リールのためだ。ここは堂々と店で買い物をしてやる。店員だってリールを見れば、その可愛さに気づいてきっとコーディネイトしたくなるはずだ。


「何かお探しですか?」

「この子に一番似合う服が欲しいんですけど」

「かしこまりました。それではこちらに――」


 店員に連れられて試着室の奥へと消えるリールを待つこと二十分。ファッションのことは一切わからないので全て店員にお任せしたのだが――


「お、おお!」

「チョージ?」


 そこに天使がいた。今まで神だの天使だの信じてきていなかったが、今日から少しだけ信じてやってもいい。リールの可愛さに免じて許してやろう。


「ふふん、どうですお客様? 彼女さん、もっと可愛くなったでしょう?」

「ああ! 最高だよ、店員さん!」

「それで、お値段の方なのですが――」


 店員から渡された紙を見て、ちょっと、いやかなりの量の汗が出てきた。え? この服、こんなに高いの? そういうもんなの? おかしいな、おかしいな。


「チョージ?」

「あはは、なんでもないよ」


 そう言って支払いを済ませる。あ、そうだ。


「領収証発行してください。そうです。宛名はハイス・シェンダム・ガーデルピアで」

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