あたたかい笑顔をしていた

「やあ、チョージくん」


 アコに手洗いとうがいの任務を与えた後、パン屋の手伝いをするフーロさんに会った。


「フーロさん、実は――」


 王女の提案をフーロさんにも伝える。


「パーティー、ということはごはんがいっぱい食べられるのかい?」

「食事は出るけど食べ放題と決まったわけじゃ――ん?」


 そうだ。そんなにごはんをいっぱい食べたいなら、あれを食べてもらおう。


「王女様特製の麻婆豆腐は食べ放題だと思うよ」

「麻婆豆腐だって⁉」


 フーロさんの声が店内に響き渡る。


「フーロ。どうかしたのかい?」


 その声を聞いて驚いたゼルネスがフーロに駆け寄る。


「あ、ゼルネス。城で麻婆豆腐パーティーをやるらしいから言ってきていいかい?」

「良いに決まっているじゃない。ぜひ行ってきな」

「店の方は心配するな」

「ジーガル……」


 休憩に入ったジーガルもやってくる。二人して娘の声を聞いて駆け寄ってくるなんて、やはりこの三人は家族なのだろう。少し、妬けてしまうのは内緒だ。


「チョージ」


 ジーガルが僕の肩を軽く叩く。


「お前、強くなったな」

「ジーガル」


 あなたのそれのおかげで、僕が何回助けられてきたか。


「ありがとう」


 僕はそれだけ言うと二階に上がった。


「楽しみだなぁ、麻婆豆腐」

「ウチのパンも持っていったらどうだい?」

「うん。そうしようかな」


 上がる直前、視界の端に映った三人はあたたかい笑顔をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る