そう言いたいわけね?

「はぐれ《焔奏怨負インフェルノーツ》が王国内に?」


 王女の部屋に行くと、王女とパスタちゃんが出迎えてくれた。


「うん。まあリールが倒してくれたけど」


 僕が先程の出来事を王女に話すと、彼女は少し困ったような顔で、「リールが《音楽姫ビートマタ》の力を使った、ということですか?」と聞いてきた。

 僕がそうだと答えると、さらに困ったような顔をした。


「貴様ぁ。この計画は極秘裏に進められていると王女様がおっしゃっていただろう!」

「そうだけど、パスタちゃん。あれは民間人が襲われていたから助けただけで」

「民間人を助けたのは評価するが……」


 パスタちゃんまで困ったような顔をし始めた。どういうことだろう。


「何かあったの?」

「リールはメジャーバトン――つまりドラムメジャーの力を持った《音楽姫ビートマタ》だ」

「そうだね」

「《焔奏怨負インフェルノーツ》と戦ったことで、リールが無意識の内に指揮能力を使ったようだ」

「指揮能力?」

「リールはドラムメジャーの力を使って、ガーデルピア製の《音楽姫ビートマタ》を制御することができるのです」

「うん? まさか――」

「そうだ。その能力に反応して、他の《音楽姫ビートマタ》が目覚めてしまった」

「他のって――まだ調整中なんじゃないの⁉」

「ああ」

「他の演奏者もいないのに起動したらまずいんじゃ?」

「ええ。だからあなたには隊長としての責任を取ってもらいます」


 この王女、万が一面倒なことがあった時全てを僕に押し付ける気だ。ようするに――


「他の《音楽姫ビートマタ》とも契約しろと、そう言いたいわけね?」

「その通りです」

「はぁ……」


 パン屋の二階、まだ部屋空いているかな。

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