満面の笑みを浮かべてくれた

「ザーナおねえちゃんはこっちのチームね!」

「ん?」


 パン屋を出た僕が公園の近くを通りかかると、そんな声が聞こえた。


「えー。こっちのチームじゃなきゃ、嫌だ」

「アタシたちのチームよ!」

「こら! 慌てるでない! チーム分けはもっと公平にだな――」


 幼い子供達の中に混じる、聞き覚えのある話し方の少女。


「ザーナ」

「おお! チョージではないか!」


 子供達を引き連れながらザーナがこちらにやってくる。


「人気者だね」

「わ、我にもよくわからないのだ。気がついたら小さいのがたくさん――」


 きっとザーナの隠れた優しさに、子供達は気づいてくれたのかもね。


「あ! そうだ、今夜お城でパーティーが――」


 早速僕は王女のパーティーについて説明する。


「おお、宴か! それは心が躍るではないか!」


 ザーナが目を輝かせていると周りの子供達が話し始めた。


「ザーナおねえちゃん、嬉しそう」

「うむ! 宴は我が力を蓄える絶好の機会であるからな!」

「ねえねえ、この人ザーナおねえちゃんの彼氏?」

「ち、違うのだ! チョージは我の、その……」


 指で必死に顔を隠しながら、ザーナは答える。


「チョージは私の主人だ!」

「主人?」

「旦那さんってことだよ」

「じゃあザーナおねえちゃん、お姫様だったんだ」

「カカア天下だ」


 何かいろいろ知識が混ざっていないか? 最近の子供はおそろしいな。


「じゃ、じゃあ僕はこれで……」


 これ以上ここにいたら誤解される一方だ。退散しよう。


「チョージ!」

「何さ?」

「そなたは我等と遊んでくれないのか?」


 だが、ザーナからは逃げられない。


「あはは……わかったよ」

「やった!」


 ザーナは子供達とハイタッチをしながら満面の笑みを浮かべてくれた。

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