それ木刀じゃなくて本物――
『パン屋の二階、まだ部屋空いているかな』
あの後。他の《
「審査?」
「はい。一応あなたと《
「ふーん――」
審査ねえ。そういう堅苦しいのは苦手だ。もっといい方法はないだろうか。
そうだ。久しぶりに、あれをやろう。
「そういうことなら、『第十一回ミスガーデルピア選手権』を開催しちゃうよ!」
そう宣言する僕の隣でパスタちゃんと王女が頭を抱えている。どうしたのだろう。
「貴様は何を、するつもりだ?」
「え? ガーデルピア王国で一番可愛い女の子を決める大会だよ」
「第一回から第十回はいつ開催したのですか?」
「時間のある時に頭の中で開いたよ。ちなみに優勝者は全員パスタちゃんだった」
「完全に貴様の独断と偏見じゃないか!」
「うん。何回やってもパスタちゃんが優勝しちゃうから飽きちゃってさ――あ、別にパスタちゃんに飽きたわけではなく、この大会に飽きただけだからね?」
「ふん。私は何も聞いていないぞ」
拗ねないでよ、パスタちゃん。
「それを開催してどうなるというのですか?」
「簡単だよ。僕が可愛いと思った子は僕と相性が良いのさ」
「結局、独断と偏見ですか。女性に対して最低です」
「貴様。真面目に審査をしろ、いいな」
「はーい。じゃあ早速始めようか」
僕はあらかじめ他の研究員から渡された書類を読み上げていく。
「エントリー、ナンバーワン! アコ・アンサンブル!」
アコーディオンを抱えながら、一人の少女がやってくる。
「アコ・アンサンブルよ! 防御支援は任せなさい!」
「優勝」
「おい」
だってしょうがないじゃん。あの子可愛いんだもん。
「まあ一応質問しようかなぁ……」
「その態度は何だ? 貴様がこの茶番の主催者だということを忘れているのか?」
「ち、違うよ!」
「貴様には任せておけない」
そう言って書類を奪われる。パスタちゃん、意外とノリノリじゃん。
「アコ・アンサンブル。貴様の防御支援とは具体的に何ができる?」
これじゃあミスコンじゃなくて、尋問だよ!
「パスタちゃん! もっと優しく質問しないとあの子泣いちゃうよ?」
「むぅ……そうか」
「これから僕が教える通りにやってみて」
一分ほどパスタちゃんに指導し、再びアコの方を向く。
「ほ、本当にこれでいいのか?」
「大丈夫。パスタちゃんなら、やれる!」
「それなら――」
パスタちゃんが大きく息を吸い、ゆっくり吐き出す。
「ようこそお嬢様――執事のシェルレッティです」
「は、はぁ……?」
あはは。動揺しているな、アコ・アンサンブル!
「後は作戦通りに行けば……」
パスタちゃんは美少女であると同時にイケメンの素質を備えたイケてる女子でもある。その素質を応用してイケメン執事のようにアコに話しかければ――イチコロだ!
「いかがなさいますか、お嬢様?」
パスタちゃんが驚異の演技で、そのイケメン力を発揮していく。
「あ、違うの! 別に何でもないの!」
アコは後ろに下がるが――イケメン執事はそれを逃さない。
「お嬢様、お気を確かに」
イケメン執事はアコの耳元に口を寄せ、そして――
「一緒に、ベッドへ参りましょう」
「はうっ……」
一瞬、アコの身体に謎の数式や記号が表示され、彼女は倒れた。
「もうミスコンから趣旨が変わっていませんか?」
「あはは。まさか――」
「ところでワラヅカ軍曹。あなたは先程から何を読んでいるのですか?」
「これ? 古本屋で買った旧文明の少女漫画だよ」
「少女漫画、ですか」
「うん。これは最高だよ。イケメンと美少女のキュンキュンするようなシーンを第三者として、じっくり観察することができるからね」
「そ、そうですか……」
それにしても昔の女子学生は髪の毛にイモけんぴを着けていたなんて、ワイルドだったんだなぁ。これをパスタちゃんが着けていたとしたら――
「貴様ぁ! 何かおかしいと思ったら、旧文明の知識か!」
「あ」
鬼神のようなオーラを周囲に撒き散らしながら、パスタちゃんがゆっくりこっちに歩いてきた。その右手には軍刀が握られている。
「覚悟はいいなぁ?」
「待って! それ木刀じゃなくて本物――」
「問答無用だ、この馬鹿者!」
次の瞬間、僕が意識を失ったことは特に言う必要はないだろう。
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