普通の任務だった

 その日は任務だった。寒い、冬の日だったことを今でも覚えている。


「起きろ、チョージ」

「んあっ?」


 馬車の中で友人のジャーニーに起こされた僕は気の抜けた声で返事をする。


「しっかりしろ。俺達落ちこぼれにとってこの任務は名誉挽回のチャンスだぞ」

「そうかもしれないけどさ」


 今、僕達は任務でガーデルピア王国の端の方にある村へ向かっていた。


「この先の村は先日、《焔奏怨負インフェルノーツ》に襲撃されて壊滅したと聞く。一人でも生存者がいればいいのだが――」

「《焔奏怨負インフェルノーツ》、か」

「チョージ。お前が《焔奏怨負インフェルノーツ》に対してトラウマを持っているのは知っているが――」

「ああ、大丈夫。気にしないで」

「本当か?」

「うん」

「そういうことなら、いいが」


 任務の内容は二つ。

 この先の村で生存者を探すこと、生き残りの《焔奏怨負インフェルノーツ》を殲滅すること。


「村が見えてきたぞ」


 落ちこぼれの一般兵士である僕達のような暇人に与えられた、普通の任務だった。

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