僕の命令に従わないのか
待っていて
「パスタちゃんが行方不明?」
翌朝。僕が目を覚ますと朝早くパン屋に来客があった。
「そうだチョージくん! 娘のシェルレッティが昨日から帰ってきていない!」
この人の名前はエドワード・スパーダさん。パスタちゃんのお父さんだ。名門貴族スパーダ家の当主で、王国軍の上層部にも属している。そんな彼が朝早くこんなに慌てて僕を訪ねてきた理由、それは彼の娘であるシェルレッティ――つまりパスタちゃんが昨夜スパーダ家の屋敷に帰ってこなかったというものだった。過保護だな、もう。
「エドワードさん。パスタちゃんはもう子供じゃないんだから、好きな男と夜遊びくらいしているかもしれないでしょ? そんなに心配する必要は――」
「娘に彼氏がいないことくらい調査済みだ!」
「そんなに堂々と言わなくても。相手が彼氏じゃなくても夜遊びはするかもしれないよ」
「君は私の娘がそんな破廉恥行為に及ぶ女だと言いたいのか!」
「い、いえ。思っていません」
まあ確かにパスタちゃんが脳内淫乱過激妄想乙女だとしても根は真面目な淑女だ。そのようなことがあるはずがない。あるはず、ないよね。ちょっと、不安。
「とにかくだ。これだけ探しても見つからないのだから後はもう君に頼るしかない」
「エドワードさん。僕はそんな優秀な人間じゃないよ」
「確かに君は数か月前、民間人を殺害した。でもあれは仕方がないことだったのは承知している。軍の一部には変な噂も流れているが少なくとも私は君を信じている」
「お義父さん……」
「誰がお義父さんだ! まだそれは認めんぞ!」
くそっ! もう少しだったのに!
「私は部下達と共に引き続き王都で娘を捜索する。君は《
「はーい」
エドワードさんがパスタちゃんを探しに行ったのを確認し、僕は店の中に皆を集めた。
「さて皆。我らが鼓笛隊監督のパスタちゃんが行方不明になった」
「大丈夫……なのですか?」
「ああ。大丈夫さ」
「どうしてそう言い切れるのよ?」
「僕がパスタちゃんを見つけるからさ!」
ここぞとばかりに決めポーズを取る僕。どうだ、かっこいいだろう。
「チョージ。早く探しに行こ?」
「そうね」
「私……街の人に聞き込みをしてきます……」
「まずは腹ごしらえをするよ」
「我は風の声を聴いてくるぞ!」
皆は僕を無視して、それぞれ店の外に出て行ってしまう。
おかしいな、おかしいな。今のポーズは最高にカッコイイはずなのに。
「あんたも早く行きなさい!」
「痛っ⁉」
開店の準備をするゼルネスに押され、店の外に出た僕は――
「シェルル。待っていて」
ある場所を目指して、歩き出した。
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