私の命令、聞いてくれますね?

 そのまま僕達は城の方まで飛ばされた。


「あれは……え⁉」


 僕の視線の先には、驚愕の表情で顔を固めた王女がいる。


「王女様そこどいてええええええええええええ!」


 ま、まずい! このままでは王女の部屋に突っ込――


「ああ⁉ 王家に伝わる貴重な壺が⁉」


 ああ、間に合わなかったようだ。何か割ったような気がする。王女の悲鳴が聞こえた。


「軍曹! あなたという人は!」


 あれ? この破片、見覚えがあるな。ああ、王家の壺か――え。

 これ、滅茶苦茶高価な壺じゃん。なんてこった。明日から借金地獄決定だ。


「ご、ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」

「まったく、もう……」


 王女は僕に手を差し伸べ、微笑む。


「王女様?」

「壺の弁償代。払う代わりに私の命令、聞いてくれますね?」


 な、何さ。破廉恥なのは、やめてね。まだ父親になるための心の準備が――


「命令です。王国民の皆さんを必ず守ってください」

「あはは――もちろんだよ」


 そうだ。王女は昔からこういう方だった。

 いつだって国民の安全を第一に考える、そんな女性だ。


「王都の皆さんがここに避難しています。皆さんを傷つけたら、怒りますからね」

「怖いねえ。それなら――」


 僕は傍らに落ちていたマスターバトンを握る。


「王女様にも見せてやる。僕の、僕達の笑劇ってヤツを!」

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