二十四話 雨の日
午後になると、天気はくずれ雨が降っていた。
正直、雨自体は嫌いなのだが、そのおかけで体育は体育館で自由に体を動かすことになった。
まあ、絶賛サボり中ではあるけど、名目上は「私はいいからみんなが先にやりなよ」ということで、限りある卓球台の一台を順番に使っていこうということになっている。
最近だと、友達と呼べるかはわからないけど、仲のいい子が少し増えて、俺も声を出すのを頑張ったこともあり、わりといい感じに馴染めてきてる気がしている。それと、
正直、
ちなみに、
「川和さん。そろそろ交代しませんか?」
「あー、うん。今、何対何だっけ?」
「えっと、どうだったっけ?」
俺がそう聞くと、最近仲良くなった友人がそこにいる人たちに問う。はっきり言うと、現在このグループには5人いて、うち一人が
つまり、俺を含めて三人はよく見知ってる人物なんだけど、残り二人は全くもって知らない。というか、覚えてない。
今、こうして話しかけてくれのが、その名を覚えてない子1だったりする。
とりあえず、このままはまずい気がするし、見た目からテキトーにあだ名を決めよう。
さっき俺に話しかけてくれた子は、もう最悪話しかけてくれた子でもいい…………くはないか。さすがにそれはやばいか。
うーん、黒髪ロングのザ・女の子、まさに大和撫子って感じだし撫子ちゃんとでも呼ぶか。……胸があまりないから、和装とか似合いそうだし。もう一人はポニーテールに髪をまとめたスポーツ少女って具合だから、もうスポ女でいいや。面倒くさいし。
そんなわけで、名前を覚えてないという窮地からは脱した。知らんけど。
でも、こうして改めて見ると撫子ちゃんとスポ女、わりとしっくりくるな。もうこれでいいよ。
「たしか、7対9? だったかな。こっちが7ね」
そう言って、負けてるのにも関わらずにっこりと笑ってみせるスポ女。ちなみに、負けてるのは隣にいる
「それじゃ、決着つけちゃいなよ。私はここで見てるよ」
「えー、もう次でいいよー。そう言って、川和さんもう六回は逃げてるしー」
「そうですよ。今度は私が見てるので、川和さんも卓球してください」
珍しく
「
「そ、それなら、私が川和さんとペアを──」
「あんたはこっちね。ゲームバランス的に」
「というわけですから、私と交代ですね」
そう言った
「みっともないプレーはノーですよ」
そのあまりにおぞましい言葉に、プロの力を感じる。そして、そんなプロの力にあてられた俺は思わず、後ろを振り向く。
そこには、プロの笑顔だけがあった。
その裏に隠された真意は、きっと俺にしか理解できないことだろう。
「それじゃ、点数はこのままでいい? 時間も時間だしちょうどいいでしょ」
「そうだね。私達がリードしてるし、全然いいよ」
「なにをー。すぐ追いついてやるから。それじゃ、いくよー」
俺は運動が嫌いだ。できればやりたくないし、サボれるならそれにこしたことはないと思ってる。
けど、別にできないわけじゃない。こと卓球においてもそれは変わらない。ただ運動は疲れるからやりたくないだけだ。
俺は彼女のかけ声に合わせて、ラケットを握る。
そうして、放たれた彼女からのサーブを見事に変な方向に飛ばしてみせた。
「ちょっ、どこ飛ばしてるのー」
「あ、あれ? ごめん」
「あんなこと言っといてあれだけど、回転かかってたしそれが普通だよ。それじゃ、次は手加減していくね」
次きたのは普通に返せた。なるほど、スポ女は普通にスポーツできるのか。やっぱり、あだ名は最強である。
そして、一点詰められたのにも関わらず、撫子ちゃんが見た目に反してスマッシュでマッチポイントまでもっていく。
本人曰く、「なんだかバカにされた気がしたので」ということらしい。
「せっかく川和さんと手合わせできる機会ですのに、今のところなにもいいところがありません」
「いや、
そこで、少し口論になりかけたところで、撫子ちゃんが空気もよまずにサーブをする。それにいち早く気がついたスポ女だったが、時すでに遅し。
そのピンポン玉は、相手コートについたあと低反発かのように二度目のバウンドをした。
「あー!」
「ほんとにいいところなしになってしまいましたー」
「私たちの勝ちですね、川和さん」
「そうだね」
まさに三者三様の反応だった。唯一面白くない顔をしていたのは、
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