閑話 転校生

 あれから、映えスポットに行ってはパシャリ、映えスポットに行ってはパシャリを繰り返した。

 ときには、妹とくっつき、ときには、夏織かおりの胸がふにゃりしたりして、結果的に俺は満足、夏織かおりみのりも満足そうなので、いい感じになった。

 それから、もういい時間になってたため、解散ということになった。

 まあ、夏織かおりは、「今日はみのり先輩のお家にお泊りしたいなーって」なんてことを言い出したが、みのりにチョップされていた。

 まあ、それでもなんだか喜んでるように見えたが、たぶん気のせいだろう。

 そんなおふざけもそこそこに、そこで別れることとなった。

 別れ際、夏織かおりから謎のウインクをされたが、その理由はわからなかった。

 夜道を妹と二人きりで歩く。

 なんとはなしに、俺は妹のゴスロリドレス姿を思い浮かべた。

 あれはほんとによく似合っていた。そして、そこからの時間もまるで夢を見てるかのように楽しかった。

 けどきっと、それは偽物だ。

 嘘をつき、それで得たものが本物になるわけがない。

 だから、妹が幸せを手にするその日まで、俺は本物にはなれない。


 俺たちはコンビニに寄っていた。


「なに飲む?」


「カフェオレ」


「おっけー」


 そんなやり取りをしながら、コンビニの中を物色する。


「あっ、夜ごはんどうしよう。にぃ、なんか食べたいものある?」


「いや、みのりが作ってくれたものならなんでもいいよ」


みのりって言うな。バレる」


 そう言われて、二人して不用心に呼び合っていたことに気づく。

 それでも、今はそれでいい気がした。


「てか、作ってくれたものならって、家帰ってから私に作らせようとしてるでしょ? まあ、いいけどさー。今日ぐらい外食とかで済まそうかと思ってたけど、にぃにそう言われちゃ仕方ない」


 それから、コンビニのスイーツコーナーでマカロンを見つけ、カフェオレとともにお会計に向かう。

 俺はそんな妹の様子を呆然と眺める。

 コンビニを出てすぐのところで、俺はカフェオレを受け取る。

 妹はここでマカロンを食べいくつもりらしく、包装をむき始めた。

 それから、なんともなしに妹は言った。


「今日は、ごめんね? 私のワガママでせっかくの休日を潰しちゃってさ」


 妹らしくない、しおらしい彼女の様子に一瞬キュンとくる。

 けど、そらを誤魔化すように俺はこう言った。


「別にいいよ。俺も楽しかったし。たまにはこういうのもありかなって思った」


「そっか。それなら、よかった。でもね、にぃ。我慢はしちゃだめだよ?」


 なにを思っての言葉なのだろう。

 今の俺には理解できない。いや、理解することはできない。

 だから、俺には茶化すことしかできなかった。


「我慢とかするわけないだろ? 知っての通り、俺がクソなことはお前が一番知ってるだろ?」


「ふふっ、そうだね。そうだった」


 それからマカロンを食べ終わった妹と手をつなぎ、家に帰ったのだった。


 ✻


 連休明け、教室に入ると変態もとい愛莉珠ありすに「会えなくて寂しかったのですわ!」なんて言われながら抱きつかれた。

 それから少ししてチャイムが鳴り、愛莉珠ありすは渋々という感じに自分の席に戻った。

 そして、先生は教室に入ってくるなり、転校生がいると言い出した。

 それから、入ってきたのは地味な感じの女の子だった。

 ただ、その子になんとなく見覚えがある。

 それから彼女は自己紹介をすると、俺にだけわかるようにウインクをした。

 頭の中に疑問符を浮かべる俺とは対象的に、彼女はそそくさと自分の席に向かってしまったのだった。

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