20:揺れ始める思い

※夢を見た※

ゴッ、、、ゴッ、、、ゴッ、、、

鈍い振動

(ごめん、ごめん、、、)

止まらない

ゴッ、、、ゴツ、ゴツ

(許して、、、)

ドロっとした感触と温い粘る臭い

(わかってんだろ)

(大丈夫?、、、大丈夫?、、、大丈夫?、、、大丈夫?、、、)

背中に手が周り体が浮く

体がフワっとして、視界が青くなる

(飛んでる?)

男女の頭部を持つアンドロギュヌス

その男の手が私の手を掴んでいる

飛んでいる

町が見える、通りを行く

(この間見つけた本買っとくか?、あ、でも急がないと)

(あ、新しいマンション出来たのか?前なんだっけ)

目の前に噴水

ゴッ、、、

意識がフワっとなった

全身にドンという衝撃

ゴッ、、、ゴッ、、、

(ぃたねーんだぉ、ぇめー)

ゴッ、、、ゴッゴツ

ミシッ、鼻から温い血が溢れ、口に逆流し鉄臭い味がする

湯船に顔を付け鼻から湯が入って咽せるように、咳き込んだ。

ゲホッゲホッ、ゴッ、(きたねーははは!)ゲホッ、ゴッ、ゴッ、(おもしれー)

(舐めろよ、おい、舐めろ)

ゴッ、、、ゴッ、、、

(もういいかな、疲れたな)

ぼんやり遠くを見ると人が走ってくる

ぼんやり見ている

なんだか怒鳴り声とかが遠くで鳴っている

その人を見ているとハンモックで揺れている気分

ユーラユーラユーラユーラ

ギュン!って高く飛んだ!高い所から見下ろす。

(お前がやったのか?!)

(知るか)

急に引き上げられる

どんどん引き上げられる

(ぎゃーぎゃーぎゃー)

(なんだ????)

アンドロギュヌスが大きな石の前で叫んでいる

(ぎゃーぎゃーぎゃー)

そして物凄いスピードでこちらに向かって来る

(あ!)目を閉じると

顔に凄い風と羽根の感触

目を開くと、視界の上ギリギリの黒い影が

黒い影を遮るように羽根がいくつも舞っている

アンドロギュヌスは、こちらに向け怒りの声を女の顔は嘆きの声を何度も何度も叫ぶ

何度も何度も、、、そして聞き取れ無かったが人間の言葉を呟くと飛び去った。


※※※

佐久間は目覚める事なく、飛び去って行くアンドロギュヌスの姿と舞う羽根を見詰め、残した嘆きの声の意味を夢の中で探し続けた。



2月24日

佐久間の部屋

佑月が出してくれた薬が良かったのか、ここ数日は気分が安定している。夢を見た時に脳裏に浮かぶ人物やアンドロギュヌスの言葉は謎のままだが、その事で不安になることもなく、少しづつだが取材ルポを書き綴っている。ヤマカガシ絶滅のニュースを見て、ルポに新しい切り口を加えていた。


佑月の自宅

「佐久間聡、、、。これじゃないな、、、。」ベッドでうつ伏せになりタブレットを操作する佑月、「これでもない、、、これ?、あっ違う、、、。」と佐久間をググっている。「これか?。」とタップする、「‘’滅び行く動物達‘’、‘’生態系と文明社会‘’、‘’江戸の人々と動物達‘’、、、色々書いてるんだ、、、。2004年生まれ、信州長野大学文学部卒業か、、、。」と見つけた佐久間のプロフィールに目を通しているとスマホに(今晩とかどう?。)とメッセージが届く、いつもなら即レスする佑月だが何故か気が進まない。(どうしたんだろ、私、、、。)そう思いながら、隣で寝ている猫の首根っこをギュ―っと握り「ノエちゃん、おねえちゃん変なんだけど、、、。」とノエの後頭部に頬を埋めるように擦り付ける、ノエは迷惑そうな顔で遠くを見ているが少しするとジタバタし、シャーと言って逃げ出した。「痛ってぇ、爪伸びてるぅ。」と言いながらゴロンと仰向けになった。「あー、面倒くさいぃぃぃ。」と天井に吐き出す、スマホを取って(忙しい、来週にして。)と返信すると、そのまま手を広げ大の字になって天井を見ている。(佐久間さんの本、買ってみようかな、、、。)とゴロンと転がり、手を伸ばしてタブレットを掴む。開いたウィンドウのプロフィールにある著作のリンクをタップして2冊注文した。


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