15:アンドロギュヌス
2月19日 朝
佐久間の部屋
※夢を見た※
ゴッ、、、ゴッ、、、ゴッ、、、
鈍い振動
(ごめん、ごめん、、、)
止まらない
ゴッ、、、ゴツ、ゴツ
(許して、、、)
ドロっとした感触と温い粘る臭い
(わかってんだろ)
(大丈夫?、、、大丈夫?、、、大丈夫?、、、大丈夫?、、、)
背中に手が周り体が浮く
体がフワっとして、視界が青くなる
(飛んでる?)
男女の頭部を持つ羽根が生えた人が飛んでいる
その人の手が私の手を掴んでいる
飛んでいる
町が見える、通りを行く
(この間見つけた本買っとくか?、あ、でも急がないと)
(あ、新しいマンション出来たのか?前なんだっけ)
目の前に噴水
ゴッ、、、
意識がフワっとなった
全身にドンという衝撃
ゴッ、、、ゴッ、、、
(ぃたねーんだぉ、ぇめー)
ゴッ、、、ゴッゴツ
ミシッ、鼻から温い血が溢れ、口に逆流し鉄臭い味がする
湯船に顔を付け鼻から湯が入って咽せるように、咳き込んだ。
ゲホッゲホッ、ゴッ、(きたねーははは!)ゲホッ、ゴッ、ゴッ、(おもしれー)
(舐めろよ、おい、舐めろ)
ゴッ、、、ゴッ、、、
(もういいかな、疲れたな)
ぼんやり遠くを見ると人が走ってくる
ぼんやり見ている
なんだか怒鳴り声とかが遠くで鳴っている
その人を見ているとハンモックで揺れている気分
ユーラユーラユーラユーラ
ギュン!って高く飛んだ!高い所から見下ろす。
(お前がやったのか?!)
(知るか)
急に引き上げられる
どんどん引き上げられる
(ぎゃーぎゃーぎゃー)
(なんだ????)
男女の頭部を持つ羽根の人が大きな石の前で叫んでいる
(ぎゃーぎゃーぎゃー)
その人は物凄いスピードでこちらに向かって来る
(あ!)目を閉じると
顔に凄い風と羽根の感触
目を開くと、視界の上ギリギリの黒い影が
黒い影を遮るように羽根がいくつも舞っている
男の顔はこちらに向け怒りの声を女の顔は嘆きの声を何度も何度も叫ぶ
何度も何度も、、、そして聞き取れ無かったが人間の言葉を呟くと飛び去った。
いきなり高いところから落下する。
※※※
「あっ!。」声を出して体が痙攣した。「はぁー、はぁー、はぁー、、、。」(あの男女の頭部なんだ!?、何を言った!?、、、やっぱり意味があるのか?。調べないと、調べないと、、、!。)佐久間は枕元にあったスマホを手に取ると慌てる手で‘’男女‘’‘’頭部‘’羽根‘’と検索する。アクセサリーやダウンジャケットという結果が並ぶ、(違う、、、、これじゃない、、、違う、、、。なんだろ、男女一体、、、雌雄同体か?。)雌雄同体の昆虫や動物が並ぶ、何度も検索を繰り返す。(違う!、、、宗教的な物か?。雌雄同体、、、いや、人だからオスメスじゃない両性?、、、両性だ。)と閃き検索結果をスワイプし多量の情報を目で追う、「これか?!。」と声が漏れる、‘’プラトンの神話‘’‘’アンドロギュヌス‘’という単語を見つけ直観的にタップした、そこにはゼウスによって半分に裂かれた男女をアポロンが癒し同体にしたという話と、腰から二つに別れた男女の体とそれを抱く黒く大きな鳥の画像が表示された。「これだ、、、。」目と口を開き顔をスマホの画面に寄せる。‘’それぞれの半身はそれぞれの半身を、失われた半身を求める。‘’という言葉を見つけると、佐久間の脳裏に過去の映像が断片的に浮かぶ。(え、、、見覚えが。なんだ、なんだ、なんだ。誰だ、、、。)脳内が映像や声や音が乱反射し、そのまま意識が途切れた。
スマホのアラームで起こされる、(寝落ちしたのか、、、。)と体をゆっくり起こしながらアンドロギュヌスの画像を思い出す。ベッドから気だるげに抜け出し、身支度を始める。今日は経過観察で病院に行かなければならない。昨日までは久々に人に会う事が楽しみだった筈が、いざ今日になると気が重い、ドアの外にある見えない差別も不安だが、それだけでは無いようだ、少し手が冷たく震えている。なんとか自分を奮い立たせて出かける準備をする。玄関で靴を履きドアノブに手を触れるが、握る気になられない、、、ドアに顔を近づけ頬と耳を当てる、ドアを介して外の様子を伺う隣人の気配は無い、思い切ってドアを開ける。肩甲骨から首にかけて筋肉が硬直している、浅い呼吸でマンションの外まで行く、幸い誰にも会わなかった。最寄りの駅までの途中は、人通りは少ないが商店街があり、僅かに聞こえる街中の会話にさえ懐疑的になる。慌ててイヤフォンをする、心許ない防護シールドだがこんな物にも頼らざるを得ない。
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