34:凶行の傷跡

3月6日 朝

佐久間の部屋

「昨夜未明、レビス患者の施設が襲撃されました。犯行は複数の男性グループと見られ、犯行予告を行ったカザドールとの関連を含め容疑者の足取りを追っています。なおこの襲撃によって、住人の1名が死亡、複数の住人がケガを負ったとの事です。では次のニュース、都内では、、、。」というテレビの映像に佐久間は立ちすくんだ。瞬きが激しくなり動揺する、あわててスマホを手にし通話履歴からコミュニティーをタップするが、直ぐに思いなおし切る。(まずは落ち着こう、、、。)自分に言い聞かせ、何度も電話を迷ったが、不安に勝てず掛けてしまう。電話の向こうでは動揺する佐久間とは対照的に伴田はいつもと変わらず話始め、気が付くと電話を切っていた。放心状態だった佐久間は伴田の言葉を思い出そうとする、しかし『心配しないで欲しい』『行政や支援者の方々が助けてくれています』『住人が動揺しているので』『しばらくそっとして下さい』と断片しか覚えていない。


ある部屋

壁面に投影された複数のCG

「昨夜はお疲れ様でした!。」「あれ?ぺルラ君はお休み?。」「有給ですね。」「私が許可しましたぁ、はははははー。」「で、、、で、おれら現場じゃないから見てないんだけどぉ。」「確かにぃ。」「ドローンさ、結局LIVEじゃ無かったんだよね?。」「そそ、編集して公開だったみたい。」「あーーーー、編集ぺルラ君じゃね?。」「ですですです。」「じゃ、連絡待ちですねー。」「じゃ、今日やることないじゃん。」「ですですです。」


薄暗い生活感は希薄な部屋

床に敷かれたマットには右側を下に横たわりスマホを操作している男。スマホの画面には、息をしていない望と号泣する鈴蘭が映っている。男は同じ部分をループするように見ている、感情が見えない顔、しかし右の目尻が沈む枕は涙で濡れている。男は編集アプリを閉じ、別のアプリを起動し動画を選択すると‘’アップロード‘’をタップした。そして、メールを打ち始めた。(動画確認LINK 資金源→義父 所有する複数の会社をロンダリング その他詳細添付。)、そして‘’送信‘’ボタンをタップした。「やっぱり間違ってたよママ、、、。」というと濡れた枕に額を押し付け、声を漏らした。

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