2:狂犬病のようなレビス

~回想~

5年前の2031年7月22日、場所は板橋区、3歳の幼児から始まった。夜中に頭痛を発症、両親は暫く自宅で様子を見ていたが二日後、急に意識混濁となり両親に噛み付くなど発作を起こす。病院に緊急搬送されたが、治療の甲斐なく同日に粘膜から大量に出血し死亡した。両親の同意により解剖され、刺咬痕と症状からイボダニによるクリミア・コンゴ出血熱の可能性があり、両親も緊急に隔離される事になった。しかし、その隔離に準備中に母親が発作を起こし院内で複数名が襲われた。パニックになった父親は病院から逃亡し市中で発症、周囲の人間を襲った。警察など関係各署が沈静化に動き極秘裏に封じ込めが成功したかに思われた、しかし、この病気がクリミア・コンゴ出血熱ではなく、未知のウィルスによる物と分かり、時の政権は解決策が見えないこととパニックを恐れ隠蔽を行った。しかし、市中で父親に襲われたがかすり傷の数名が、政府の情報隠蔽が災いし危険性を知ることなく、その後も日常生活を過ごした事が原因となり感染者が増加し始める、ネットでは‘’ヤバい病気‘’等と騒ぎになり始め政府に見解を求める声が高まるが政府は沈黙した。そして、女優・瀬野未羽の感染告白と自死によって極めて危険な事態である事が、政府発表よりも早く一般に知れ渡る事になり一機にパニックが起こる。加速度的に感染者が増え大半が亡くなるが感染拡大は止まらず戒厳令が敷かれ、隔離政策や治療法の試行錯誤によって戦いは続いた。

2032年、ドイツのウィルス学者ユヴァル博士らによって、永久凍土の融解によって見つかったトナカイの遺骸から発見された狂犬病ウイルスに類似したレトロウィルスが体内に入る事によって、脳内の正常プリオン蛋白を異常プリオン蛋白に変化させ神経細胞を変性させる事が原因である事が判明した。そして、日本人に固有なY染色体D1d 34.7%、O-47Z 22%、C-M 4.4%という遺伝子配列を有する人に発症率と重症化率が極めて高い事も分かった。この病気はユヴァルレビスプリオン病(レビス‘’Rebies‘’は狂犬病を指す)と名づけられ、レビスと呼ばれるようになる。レビス発症者は皮膚や粘膜が炎症や壊死を起こし人に対して攻撃的になる事から映画のゾンビのように恐れられ、過剰に恐怖心を煽りこの感染者に対して差別が生まれた。感染経路については発症者の体の表面と唾液や血液など体液にウィルスがあり、主に接触や噛まれる事で感染する。また、感染者による感染性のみと当初は思われていたが、後の研究で孤発性の症例も見つかっている。

2033年、遺伝子の解析が進みワクチンが開発された。以降パンデミックは沈静化し始めたものの、ウィルスも様々な変異株を生み、ワクチン開発とのいたちごっこは続いた。そして昨年、発症後も初期段階であれば98%の治癒率を示す治療薬が開発され、レビスから生還した者はサバイバーやRE(アールイー)と呼ばれ、国民に安心感を与えるようニュースで日々数値の報道が行われている。しかし、回復・生還しても差別は根強く残っており、ネットによる中小誹謗や差別事案が多発し、その被害による鬱病の発症と自殺者が増加、新たな社会問題が生まれている。

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