18:ゾンビの巣

2月21日 深夜

ある部屋

壁面に投影された複数のCG

「報告~!。」「出来た?。」「ベータ版のリンク送りますね~。」「技術部長!仕事早いね~。」「いや~、ぺルラ君のリストのおかげっす!。」「おーーーーいいんじゃね!。これさ、ひとりひとりにコメントとか出来るんだ。」「おらぁわくわくっすぞ!。」「昭和アニオタでたーーーーははは!。」「これ部長ひとりで作ったん???。」「うんにゃ、海外の職人をいろいろ組み合わせた。」「金使った?。」「うん。」「あ、そろそろ資金足りなくね?。」「じゃ、スポンサーに!。」「で、で、で、でさぁ、ベータ版は公開します?。」「いいんじゃね!。」「さんせーい!。」



2月22日 深夜

ネットでは、‘’#ゾンビの巣‘’というハッシュタグがドミノ倒しのように拡がる。


ある部屋

真空管アンプのオレンジの灯りがゆっくりと揺れる室内、ラヴェルの不協和音がコンクリートの壁面に反射する。デスク上のディスプレイにカウントアップされて行く数字を、少し離れたソファから見ている男。、、7012、、、7804、、、8334「みんな暇なんだね、、、。」9301、、9475、9839、10000「あ~ああっ、、、。1万超えたよ、、、。」まだ増えるカウンターを見ながらバッとソファから跳ねるように立ち上がり、両手を振り上げ‘’水の戯れ‘’に委ねるように妙なダンスを踊り出す。「あーーーーーー!!!。」っと髪を搔き乱しながら膝から床に落ち「違う、なんか違う、、、。」と波打つように仰向けに床に伏した。ムラになったグレーの天井をぼんやりと見ている、首を横に倒すと視界の隅にあるビンテージエルメスのバッグが見えた。バッグに這って行きガサガサと中を探り、今では珍しい紙巻タバコと鈍く光るコッパ―のジッポーを取り出す。「なんで、こんな体に悪いモン、止められないんだろ、、、。」と自虐的に言うと一本咥える、(キン、シュ)(あれ?)(シュ、シュ、、、)「オイル切れか、、、。」開いた唇にタバコが張り付きぶら下がる。


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