46:エピローグ

2037年9月

かすかに秋を感じさせる色見の夕陽。かつてのコミュニティーであった廃校の校庭に佇む2人。1人が足元にある文字が刻まれた石の横に本を置いた。本には‘’レビス‘’というタイトルと‘’恩師へ最愛の人へ‘’という帯が付いている。‘’TOMODA‘’と陰影を見せる刻まれた文字を穏やかな表情で見つめる佐久間。「櫻井じゃないんだ?」「いいんです。彼は伴田として此処で生きて、私に再会しましたから、それに伴田でも櫻井でも、彼が素晴らしい人である事には変わりませんから、、、。」「なんか、元カレを自慢されてる今カレの気分。」「え?今カレ?、佑月さん男だったんですか?ははは、、、。」と佐久間が笑った。「男だって~酷くない!。」と胸に抱かれている赤ん坊に笑いながら佑月は話しかけた。楽し気な2人の後ろ姿、‘’TOMODA‘’の墓標と近くに並ぶ ‘’MAKINO‘’‘’ SUZURAN‘’‘’NOZOMI‘’の墓標が夕日に包まれている。


道の左には合理的に整然とした高層マンションが連なり、

道の右には古く朽ちたような建物が静かに佇んでいる。

道の中央には暮れる陽がオレンジ色から赤に、そして鮮やかな紫を滲ませ左右の景色に浸透している。

その夕日を受けキスをする佐久間と佑月。

「へたくそ。」と悪戯っぽく笑う佑月。

「慣れてないので、、、。」苦笑いの佐久間。

「まぁ、いいんじゃない。」と微笑む佑月の背に手をまわすと歩き出す三人。

「もうすぐ、桜の季節だね、望。」熊のぬいぐるみを抱き佑月の胸で眠っている望に佐久間は語りかけた。


寄り添う影は、失った半身を見つけたアンドロギュヌスのようだった。


END

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