2月5日　昼過ぎ

佐久間の部屋

（2時か、、、。）時間を見るがまだ完全に目覚めていない、まだ目は半分閉じてる。ベッドから出ようとするが体温を測る事を思い出し、ベッド脇のサイドテーブルに置いた体温計を手にし額の筋肉でむりやり瞼を引き上げ体温計を見る、“START”と小さく刻印されたボタンを押し脇に挟む。物の10秒くらいか、ピピピピと音がし計測が終わった。体温を見ると“Ｅｒ”と表示されている、（なんだ？。）と思ったが説明書のエラー項目を思い出した、「スマホスマホ、、、。」と言いながら枕元のスマホを顔認証で立ち上げアプリを起動すると体温計がまたピピと鳴る、表示を見ると‘’OK‘’になった。（あー、これでデータが送られたって事か、、、ちょっと便利かも。）と妙な納得。昨日送ったメッセージが気になりメッセージアプリを立ち上げるが、既読になっていない。（まぁ、メッセージとかメールにマメな人じゃないしな、、、。）と自分を窘めた。

ベッドからモゾモゾと這い出る、ソファの前にあるテーブルの上には空いたビールの缶、（えっ、4本も開けたのか、、、）と少し自分に呆れる。口の中が粘つき気持ちが悪い、手で口を覆い「はぁー。」と自分の臭いを嗅ぐ、案の定臭い。ずっとシャワーだったのでバスタブに浸かることにする。湯を溜めている間に顔を水で洗う、タオルで水滴を拭いながら鏡に映る自分の顔、いつもは顔を洗う時も意図して鏡は見ないようにしている、自分の顔が嫌いなのだ。男らしさが無い童顔で白い肌、少し長いまつ毛の端正な顔立ち。客観的にはイケメンだと思うが、中学生になった頃から同級生に揶揄されイジメに合い、顔に良い思い出が無い、むしろトラウマになっている。久しぶりにちゃんと顔を見て昔の事を思い出したが、湯が溜まったアラートが遮ってくれた。「ふん！。」と鼻から息を吐きスウェットを脱ぎ、歯ブラシを持って湯に体を沈めた。

2月6日　夕方

佐久間の部屋

今日も未読

（何時に起きたっけ、、、）ダラダラ過ごし、気がつくと夕方になる、何もしていないからか腹も減らない。定位置のソファに座る、背もたれに掛かる病院から帰った時のシャツとズボンが気になり、（チッ）っと舌打ちしすると、脱衣所にある洗濯機に入れる。脱衣カゴの入院前から放置してある靴下や下着に気づき「チッ。」とまた舌打ちし、洗濯機に投げ込んだ。ソファに座るとテーブル上のリモコンに手を伸ばす、「今日のレビスからのアールイー者数は、、、。」とテレビにはアナウンサーの何となく嬉しそうな声。（気楽でいいな。何も考えてないんだろう。）と無声で毒づいていると、「ただいま入りましたニュースです。先月23日、レビス患者にＳＮＳで殺害予告を送り、集団で暴行を加えた事件の主犯格と見られる仲江川洋二28歳が逮捕されました。殺害予告など脅迫行為については認めているものの暴行については否認。警察では、レビス患者に対する同様の事件についての関連を含め捜査を進めるとの事です。」というニュースに目を見開いた、（あ、ちょっと待てよ、俺も被害者になる可能性あるって事だよな、、、。）と現実を認識し恐怖を感じた。視界に薬の袋を見つけると精神安定剤を取り出し唾液で飲み込んだ。

ドアをドンドンドンと叩く音でハッと目を見開いた「なんだよ、焦った、、、。寝落ちかぁ？。」点けっぱなしテレビのドラマだった、浅く早い呼吸に気づき落ち着こうと目を閉じ数を数えながらゆっくり呼吸する、そのうちに安定剤の効果かウトウトしていた。その後も夢なんだか現実なんだか曖昧な状態が続く、挙句は室内に動く人影やヒソヒソ声がハッキリ見聞きしたように思え、（もう、夢うつつとかじゃなく幻覚なんじゃないか？、、、。）不安が強くなり、安定剤と睡眠導入剤を良くないと思いながら追い薬した。

※夢を見た※

ゴッ、、、ゴッ、、、ゴッ、、、

鈍い振動

（ごめん、ごめん、、、）

止まらない

ゴッ、、、ゴツ、ゴツ

（許して、、、）

ドロっとした感触と温い粘る臭い

（わかってんだろ）

（大丈夫？、、、大丈夫？、、、大丈夫？、、、大丈夫？、、、）

背中に手が周り体が浮く

体がフワっとして、視界が青くなる

（飛んでる？）

ブワー！っと体に圧力が掛かり、背中や腕やあちこちの筋肉がギュ！っと収縮し、肩に首がめり込む位に身がすくんだ。

※※※

「落ちる！。」という自分の声で目が覚めた。額や脇、体が汗でベタベタしている。喉の渇きを感じ、ベッドの脇に置いたペットボトルから炭酸の抜けた緩い水を一気に飲んだ。（この夢、前も見たな、、、いつだっけ、、、。）と思い出そうとしている内に、えも言われぬ不安が過る。カーテンの隙間は暗闇で（眠らないと、、、。）と思うが目が冴えてしまって薬に頼ろうと安定剤の入った薬袋を探す。（そういえば、気にせず飲んでたけど、どんな薬なんだ、、、。）と思い資料を見るが‘’ベンゾジアン‘’という名前と‘’不安を感じた際、眠れない時に１錠を経口服用。‘’としか説明がなく、検索しても見つからない。こうなると不安が益々強くなり悪循環になる、不安に勝てず安定剤を導入剤を適量の倍飲んでしまう。