概要
世界が、ひとりの歌うたいを忘れるまでの物語
二年前の夏、彼女はマイクを置いた。
誰も疑問を持たなかったし、覚えてもいなかった。わたしだってそうだった。
けれども今、目の前で歌をうたっている彼女は。
あの頃の面影はどこにもなく、今にも消えてしまいそうに、儚く笑っている。
――たったひとつだけ。あの頃と同じ、世界でいちばん美しい旋律をのせて。
だからわたしは、ただひたすらに言葉を落とす。
わたしが、わたしだけが、あなたを決して忘れないように。
20XX年、東京の片隅。
「超感覚」と呼ばれる能力に翻弄される若者たちがいた。
誰も疑問を持たなかったし、覚えてもいなかった。わたしだってそうだった。
けれども今、目の前で歌をうたっている彼女は。
あの頃の面影はどこにもなく、今にも消えてしまいそうに、儚く笑っている。
――たったひとつだけ。あの頃と同じ、世界でいちばん美しい旋律をのせて。
だからわたしは、ただひたすらに言葉を落とす。
わたしが、わたしだけが、あなたを決して忘れないように。
20XX年、東京の片隅。
「超感覚」と呼ばれる能力に翻弄される若者たちがいた。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!誰も思い出せない歌声が、他の何より心を揺さぶる
歌声を聴くと、人々はそれを誰が歌っていたのか忘れてしまう。
これは、そんな特殊な能力を持つ歌い手『アオ』の物語です。
世間のみならず友人や家族にすら忘れ去られてしまった、人気バンドの元ボーカル・アオ。
二度と歌わないと心に決めていたにも関わらず、唯一自分を覚えていた少女・トウカの誘いで、大学の軽音サークルに入ります。
歌いたい。歌えない。
葛藤を抱えつつも、音楽に触れる楽しさや仲間たちの存在で、アオは徐々に自分の居場所を見出していきます。
瑞々しい筆致で描かれるアオのキャンパスライフが眩しく、トウカを始めサークルメンバーと過ごす時間の楽しさや尊さを感じました。
それゆえ、終盤から畳み掛…続きを読む