第13話、怪我の理由

「……そうね。もしかしたら、あんたも襲われるかもしれないし、知っておいた方がいいと思うわ。」


 ルビーが何やら物騒な事を言いだした。襲われる? サファイアの傷はどう考えても人間業ではなかったように思える。ということはやはりモンスターなのだろうか。そんな危険な奴がこの辺にいる? やだなぁ。こわいなぁ。


「私達は冒険者、といってもまだまだ駆け出しなんだけどね。それでもゴブリンやウルフ程度なら、一人でも問題なく対処できる程度の実力はあるわ。何十とかは無理でも、数体くらいなら同時に相手できる。私もサファイアもね。でもあの時の相手は、ゴブリンやウルフが可愛く思える相手だったのよ。」


 どうやら彼女らはゴブリン程度なら一人で戦えるらしい。ウルフがどんなモンスターかは知らないが、名前的に多分狼とかその辺だろう。それらを数体程度なら同時に相手もできる。俺だったら、逃げないと確実に殺されるだろうな。


「その相手ってのは、この辺じゃ絶対にいないはずのモンスター、オーク。しかも雌のオークよ。」


「雌のオーク?」


「あんたはこの辺じゃ見かけない顔出し、冒険者ってわけでもなさそうだから、知らないのも無理はないわね。一般的にオークは雄が有名よね。女性冒険者とかがオークに捕まったら、それはもう悲惨なものよ。死ぬまで犯され続けるから。」


 雌のオークは、冒険者以外の一般人には知られていない、珍しい存在なんだろうか。俺もオークは、雄しかいないイメージがある。それにしても何と言うか、どの世界でもオークは人間の女性をレイ○する、みたいな感じなんだな。


「それで雌のオークってのは、基本的には雄のオークの反対。人間の雄を捕まえたら死ぬまで犯し続けるの。雄のオークは雌以外に興味ないから、それ以外の相手は最短距離で殺そうとしてくる。でも雌のオークは違う。同性の相手は散々苦しめてから殺すのよ。」


「……」


「しかも雌のオークは雄の何倍も力が強いの。武器を振った際の風圧で相手の体勢を崩して、それから相手を捕まえて苦しめる。雄のオークだったら、駆け出し冒険者が何人かで挑めば倒せるって言われてるけど、雌のオークは中級の冒険者が何人かで挑んでやっと倒せる強さ、って言われているわ。」


「……それであんな感じにされたってわけか。」


「そうよ。私達も雌のオークはあの時初めて見た。そして驚いている内に相手の攻撃の風圧を受けてしまって、そのまま体勢を崩したところを捕まって、って感じだったわ。私は何とか一回くらいなら耐えられたんだけど、サファイアは私と違って近接タイプじゃないから……」


 なるほどな。そんなヤバい奴がこの辺にいると。中級冒険者ってのがどんなものか知らないけど、数は多くないのだろうか。できれば早急に退治していただきたい。でないと安心して日々を送れない。


「オークはよほど小さい村でもない限り、人間の住んでいる所い攻め入ってくることはないわ。だからこの町から出ない限り、大丈夫だと思う。」


 俺の不安が顔に出ていたのか、ルビーが安心させるような言葉を述べた。町から出ない限りは、多分大丈夫か。それなら安心できるような、できないような。


「……俺は冒険者について詳しくないんだが、その中級冒険者ってのはこの町にたくさんいたりしないのか?」


「多分いるとは思うけど、あまり進んで討伐に乗り出してはくれないと思うわ。」


「そりゃまた何故。」


「この町にいる中級冒険者の方は、男性ばかりですから。雌のオークは男性と対峙した時、普段以上の力を発揮すると言われています。なので男性冒険者の方は、あまり雌のオークとは戦いたがらないんですよ。」


「へー。」


 男性冒険者と戦う時、雌のオークはパワーアップするのか。ただでさえも男性にとって厄介な相手なのに、男性と戦う時はパワーアップまで果たす。それは戦いたくないだろうな。


「まぁ今の所は私達も一体しか見かけてないし、私達以外に見かけたって報告もない。だから多分注意していれば大丈夫よ。私達も万全の状態で、かつある程度距離がある状況だったらまず逃げ切れる相手だから。この前は直前の戦闘で疲れてたし、まさか雌のオークがいるとは思わなかったから油断したの。けど次からはもっと注意深く行動するわ。」


 俺も遭遇しないよう気を付けよう。もしも出会ってしまおうものなら、死ぬまで逆レイ○され続けてしまうだろう。俺の童貞は、綺麗な同種族の女性に捧げると決めている。間違ってもオークなんかには絶対にやらない。そう、絶対にだ!


「だからあんたも気を付けなさいよ。見た所戦えそうな感じでもないし。」


「気を付けるよ。」


 その後軽く雑談等をしていると、旨そうな料理が運ばれてきた。食べる前は飲み物でお腹いっぱいだったが、なんやかんや腹はそこそこ減ってきた。今日はルビーの驕りらしいし、せいぜい腹いっぱい堪能させてもらおう。


「あっ、料理が来たわね。さぁ、食べましょう!」

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