第12話、自己紹介2
「俺は……ザーメン。歳は17。職業は絶賛模索中だ。やろうとしていることはあるがな。こちらこそよろしく。」
ザーメン、我ながら酷い名前だとは思う。だが偽名なんて大体こんなもんだろう。多分。逆に考えれば、俺の能力をシンプルに表した、素晴らしい名前だと言えなくもない。
「ザーメン……覚えたわ。私達を助けてくれて、本当にありがとう。正直感謝してもしきれないと思うわ。」
何かこう、アレだな。女性の口からザーメンとかそういう類の言葉が出ると、ちょっと嬉しくなるな。しかもルビーは、それを下ネタな言葉だと知らず発言している。そこがまたいい。
「……ねぇ。食事の前に聞く話でもないと思うけど、食事中に聞くよりはマシだから今聞いておくわ。あんたのアレ何なの?」
「……アレとは?」
「その……せ、精液よ! せ・い・え・き! 何回も言わせないでよね……」
正直ルビーの事は強引で粗雑な感じの女性だと思っていた。サファイアの件を抜きにしても。だがこうして接してみると何と言うか、からかいがいのありそうな女性だな。やりすぎて殴られようものなら痛い目見るのはこっちなので、程々にしておかないといけないが。
「何って言われてもな。回復効果のある精液だとしか。詳しい事は俺も知らん。」
「回復効果があるって話どころじゃないわよ。なくなった腕や脚までキレイに再生させるなんて。」
そんなこと言われても、俺も詳しいことはまだ分かってないしな。何かすごい精液だとしか。
「姉さん、せいえきって何ですか?」
「え!? それはーそのー、アレよアレ! 聖水のすごい版! みたいな!」
「そんな物があるんですね。初めて知りました。ザーメンさんはそのせいえきという貴重な物を使用して、私達を治してくれたのですよね? その、大丈夫なのでしょうか、そのような貴重な物を使われてしまって……」
「……あー、問題ない。日の制限はあるが、俺はいつでも精液を作れるからな。そこは気にしなくてもいい。」
ルビーの奴、俺がサファイアにどんな治療を施したのか言ってないのか?
「そうなのですか!? 欠損した四肢すらも治せるせいえき、そのような素晴らしい物をいつでも作れるだなんて……ザーメンさんは、本当にすごいお方なのですね!」
いや違うな。どうやらサファイアは精液について、というか多分性に関する知識がないんだな。大方ルビーが、過保護に妹を守ってきたみたいな話なんだろう。多分サファイアは精液の事を、聖液みたいに勘違いしてるんだろうな。ごめんよ、そんな綺麗な物じゃなくて……
そういえばルビーの腕の調子とか、サファイアの脚の調子とかってどんな感じなんだろうか。後学のためにも一応聞いておこう。
「あー、そういえば、腕の調子とかはどんな感じなんだ? こう、治る前と違って違和感とかないか?」
「んー、特にないわね。少なくとも私は治る前と違わないと思うわ。サファイアはどう?」
「私も特に違和感はありません。怪我をする前と全く同じに感じます。」
「なら良かった。」
まだ安心はできないが、とりあえず俺の精液は四肢の再生が出来、なおかつ治す前と変わらない動きができるようだな。もはやチートの領域なんじゃないか。異世界召喚されて、一番のチート能力を持っていたのは実は俺でした、みたいな展開。まぁ絵面が汚いから主人公はできそうにないな。
「……差し支えなければ聞きたいんだが、その、何であんな状態になってたんだ?」
俺は疑問に思っていた事を、思い切って聞いてみた。彼女達の力がどれほどかは知らないが、俺の数倍~十数倍は確実に強いはずだ。その彼女達があれ程の怪我を負う相手が、もしもこの近辺にいるのだとしたら? 俺なんか瞬殺だよ、瞬殺。そんな相手がいるのだとしたら、早急に逃げなければいけない。
「……そうね。もしかしたら、あんたも襲われるかもしれないし、知っておいた方がいいと思うわ。」
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