第4話、再生

 さて、これからどうしようか。とりあえずぶらっと町の中を見て回って、それから考えるか。まずは宿屋とか飯屋とかの位置をザッと確認して、それからは色々見て回るとしよう。


 ちなみにだが、この世界での言語や文字の読み書きは、召喚された時に不思議な力が働いたおかげで特に問題なく可能となっている。本来は勇者である友人達だけに適用されるはずだったのだが、何故かおまけで召喚された俺にもその力が働いたらしい。多分運が良かったんだろう。


 ◆◇◆


 小一時間程かけて宿屋と飯屋の位置、その他雑貨屋等の位置も簡単に確認した。そしてついでに宿屋で2泊程度する部屋を取った。これで後はぶらつきながら適当に時間を潰すだけだ。


 それにしても、この世界は流石異世界というべきか。俺みたいなTHE・日本人みたいな人間が全然いない。外国人チックというか何と言うか。完全に浮いてしまっているのか、道行く人達に結構ジロジロ見られる。正直かなり恥ずかしいが、可愛い女性や美しい女性に見られるのは悪い気がしない。むしろ興奮する。


 そんな下らないことを考えながら歩いていると、フードを目深に被った怪しげな人物を発見した。俺みたいな一般人が、絶対に関わってはいけない類の人間だ。その人物は人目につかないように移動し、近くの路地裏へと入っていった。避けるのが無難だろう。


 だが何だろう。妙に気になるというか。やはり俺も健全な男子高校生。こういう危険なシチュエーションに憧れがないわけではない。むしろ憧れがある。怪しげなフードを被った人物が、人目を避けつつ路地裏へ入る。何か暗殺とかそういった感じの戦いが繰り広げられそうなシチュエーションだ。


 ちょっとだけ路地裏に入ってみて、危険そうだったら逃げればいい。そうだ、そうしよう。そーっと近づいて、バレないように路地裏を覗いて……


 そーっと路地裏を覗いてみたら、さっきのフードの人物が壁を背にして倒れているのを発見した。しかもよく見てみると何やら血の跡みたいなのが地面に。あれ? よく見たらこの人、左腕無くないか……?


 いや間違いない。この人左腕の先っぽがない。そしてそこから大量の血が流れている。これは何と言うか……とても厄介な状況じゃないか? この人は絶対に何らかの戦いに巻き込まれている。そしてそこで左腕を失いながらも、何とかここまで逃げてきた、多分そんな感じだろう。


 それにしてもこれはアレだな。こういっては何だがものすごく気持ち悪いな。腕が欠損しているグロテスクな断面に加え、この血の臭い。ヤバい、気持ち悪オロロロrr。


 ……ふぅ。吐いたら少しすっきりした。そして冷静にもなった。このとてもじゃないが関わり合いになりたくない状況、だが考えようによっては俺の力を実験するのにいい状況じゃないだろうか。


 そう、俺の精液は欠損を治すことができるのか否か。これの実験ができるじゃないか。幸いなことに、相手は俺が吐いたのにも気付いてないようだし、多分気絶しているんだろう。なおいい状況だ。


 そうと決まれば話は早い。とりあえず息子さんをこんちにはして……っとその前に相手の性別を確認しておこう。できれば女性がいいなー、なんて。


 自分の吐いた吐瀉物や相手の血をなるべく踏まない、かつ音を立てないようソーッと相手に近づく。


「すみませーん。大丈夫ですかー……?」


 軽く声をかけてみる。だが反応はない。そして意を決してフードを取り払った。するとどうだ。そこにはとても美しい赤髪の女性が姿を現したじゃないか。


 ふつくしい……この町は結構な美人さん達がいるなーなんて思っていたが、この女性は先程すれ違った女性達よりも遥かに美しい。そう、まるで物語のヒロイン。そんな感じの見た目だ。これは俄然やる気が湧いてきたぞ。俺の息子さんもすでに臨戦態勢に入っている。


 意識を失っている女性の腕に射精するという行為。正直言って、とてもよくないことだと思う。誰か別の人間に見つかろうものなら、即通報されるかその場でボコられるかするだろう。


 だがこれは人命救助。そう、あくまでもこれは人命救助なのだ。決してやましい気持ちがあって、射精するわけではない。あくまでも人命救助、人命救助……それにしてもこの人、本当美人だよな。


 俺はそんな感じで自分に言い訳しながら息子を扱く。血の臭いを嗅いだらまた気持ち悪くなるかもしれないので、なるべく呼吸は浅く、かつ口呼吸で。そして射精しやすいよう妄想しながら、スピーディーに扱く、扱く。射精をする直前、女性の左腕に照準を合わせるのを忘れずに。


 この背徳的な状況と緊張感からか、通常よりも早く射精に至ることができた。音を付けるならピュッピュが適切だろうといった勢いで、女性の左腕に俺の精液が付着する。するとどうだ。先程までグロテスクな断面をしていた女性の腕が、これまたグロテスクな見た目でみるみる内に再生していった。


「マジかよ……」


 思わず平凡な言葉を呟いてしまった。だがそれ以外に言葉が出ない。人間の肉体が再生する現場を間近で見ようものなら、誰しもが「マジかよ」と呟くことだろう。


 用が済んだらこんなところに長居は不要だ。俺は息子をしまって足早に立ち去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る