第47話、ごつめの男4

「……正義まさよしにふさわしいのは僕だけだ。それをここで証明してあげるよ!」


 真珠しずくはそう言うと、こちらへ向かって突っ込んできた立石たていしを迎撃すべく、戦闘体勢に入った。


 立石たていしの見るからに重そうな一撃が真珠しずくに襲いかかったが、真珠しずくはそれをひらりと躱し、そのまま立石たていしの腕にカウンターを決めた。


「流石に硬いな……」

「何だぁ……!? 今何かやったのかぁ……!? 軽すぎてまるで効かないぜぇ……!!」

「君の攻撃も遅すぎてまるで当たらないよ。だからおあいこだね……!」


 真珠しずくはその後も立石たていしの全身に斬撃をお見舞いした。正直俺の眼じゃ何が起こってるのかイマイチよく分からない。


「……すごいわね、あの二人……今の私達なんかじゃ到底届かないわ……」

「……はい……一体どれほどの修羅場をくぐれば、あのような動きができるようになるのでしょうか……今何回斬りつけたんでしょう……」

「……ねぇ、ザーメン。あの二人もあんたと同じ様にこの世界に召喚? されたのよね? あんたの世界ではあんな動きができる人達がゴロゴロいるの?」


 どうやらルビサファ姉妹もあの二人の戦いは追えていないようだな。そしてルビーがとんでもない事を聞いてきた。あんな訳の分からない動きができる奴がいてたまるか。俺のいた世界は一部を除けば、こことは違ってもっと平和だ。


「いや、あんな動きができる人間はいない、はずだ。あの二人もこっちに召喚された効果であんな動きができているだけで、元の世界であんな訳の分からん動きなんかできないはずだ。」

「……そう。まぁあんたは結構アレだったもんね。」

「……」


 ルビーが笑いながら俺の事を若干ディスってきた。だが笑っていられるのも今の内だけだ。昨日までの俺とは違うって事を、すぐに証明してやろう。この戦いが終わったらだがな!


 二人の戦いは完全に均衡状態に入ってしまっているようだ。真珠しずく立石たていしに相当な手数で攻撃しているが大したダメージを与えられず、逆に立石たていし真珠しずくにそもそも攻撃が当たらない。


 さらに立石たていしの身体は、時間はかかっているが次々と傷が塞がっていってるように見える。おそらくアンデットになった事で自然治癒力が上がったとか、多分そんな感じなんだろう。


宝石たからいしぃ……! テメェの攻撃は軽すぎるぅ……! そんな攻撃じゃあ何千、何万発喰らおうが俺は倒せねぇぞぉ……!!」

「……ふぅ。確かに今のままだとそうかもね。でも君の攻撃だって遅すぎて、何発繰り出そうとも僕には当たらないよ。」


 ん? 真珠しずくが今俺の方をちらりと見た気がするな。今のままだとの部分で。何か作戦でもあるのだろうか。俺がその戦いに手を出そうものなら、そこでくたばっている冒険者達のようになるぞ。絶対に。


 ……待てよ。もしかしてアレか? アレを出せと俺に言っているのか? アンデットへの特効薬であるアレを。でもそれ以外で、戦いの最中に俺を見る理由なんかないよな。とりあえず出そう。


 俺は後ろを振り向いて、外の世界に息子だけこんにちはさせた。それを見たルビサファ姉妹が驚いてはいたが、特に何も言わずに真珠しずく達の戦いへと視線を戻した。二人も慣れた物だな。


 俺はこれまで何千、何万回とやってきたように、自分の息子を扱き始めた。息子の先には俺のショートソードがセットしてある。そう、今から俺は、武器に聖水をかけるかの如く、自分の精液を武器にかけようとしている。


 これがどのくらいの効果になるかは分からないが、普通の武器で闘うよりは多分大分マシになるんじゃないだろうか。


 俺は慣れた手付きで息子を扱き、そして自分のショートソードに射精をかました。自分の武器を狙って射精をする、何とも言えない敗北感がある行為だ。正直あまりやりたくはない。


 だがこれで準備はできた。理由は分からないが、真珠しずくとヤッて以降、といっても昨日の事だが、射精時の精液量が半端ない事になった。おそらく最初にルビーのOPPAIを見た時、つまりサファイアの治療をした時と同等、もしくはそれ以上の精液が出るようになった。


 なのでショートソードくらいなら、一回の射精で先端部分程度なら満遍なく精液を塗布できる。


真珠しずく! 準備ができたから一旦こっちに来い!」


 俺は真珠しずくを大声で呼んだ。真珠しずく立石たていしの隙を見計らってこっちへとやって来た。


「ほら、とりあえずこれを試してみてくれ。」


 俺は真珠しずくに自分の精液を塗布したショートソードを渡した。


「ありがと、正義まさよし。もしもこれで効果があるようだったら、僕のこの武器にもかけておいてくれるかな。」

「了解だ。」

「じゃ、行ってくるね。」


 真珠しずくは俺のショートソードと引き換えに自分の武器を渡し、再び立石たていしの元へと駆けて行った。


「テメェ……! 随分余裕があるじゃあねぇかよぉ……! 勝負の最中に正義まさよしといちゃつくなんざよぉ……!!」

「別にいちゃついてたわけじゃないよ。僕は正義まさよしからおまじないのかかった武器を貰ってきただけさ。君を倒すおまじないのかかった、ね!」

「グワアアアアアァァァァァ……!!!」


 真珠しずくが先程までと同じように立石たていしの腕を斬り裂いた。すると今度はまるでスポンジでも斬ったかのように、スッパリと立石たていしの前腕部分が地面へと落ちた。


「アアアァァァァァ……! 俺の腕がアアアアアァァァァァ……!! 宝石たからいしぃ……テメェ何しやがったんだぁ……!!」

「……やっぱり正義まさよしはすごいよ。あんなに硬かった腕がこんなにも簡単に斬れるようになるなんてさ。」

正義まさよしぃ……? 正義まさよしが何かやったて言うのかよぉ……!?」

「そんな事教えるわけないだろう? まぁでも、とにかくこれで形勢逆転だね。君の攻撃は僕に当たらない、けど僕の攻撃は君に有効。もし君が敗北を認めて首を差し出すっていうんなら、楽に仕留めてあげるよ?」

「……ふざけんなふざけんなふざけんなぁ……!! 俺はこんな所で負けるわけにはいかねぇんだよぉ……!!」


 勝負は真珠しずくの勝利で決着かのように思えたが、立石たていしが叫んだ直後、奴のの身体がボコボコと、今よりもさらに大きくなっていっている。これは……?

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