第46話、ごつめの男3

宝石たからいしぃ……! よくも、よくも俺の正義まさよしを……!! テメェだけは、テメェだけは絶対に許さねぇ……!」

「……正体を現したね。何となくは気付いていたけど、やっぱり君は僕なんかじゃなくて、正義まさよしを狙ってたんだね。」


 ……この二人は何を言っているんだ? あのごつめの男が俺を狙っていた? 真珠しずくじゃなくて、この俺を? HAHAHA。脳の処理が追いつかん!


「で? 君は正義まさよしの何なのさ。何で正義まさよしの事を狙っていたんだい?」

「……正義まさよしぃ……! 俺の事、本当に覚えてねぇのかぁ……!? 俺だよ、俺ぇ……! 小学校四年まで一緒だった、立石 剛志たていし つよしぃ……!」


 小学校四年まで一緒だった、立石剛志たていしつよし!? ……駄目だ、全然思い出せん。そんな奴いたか?


「ほらぁ……! お前よくさぁ……! いじめられて一人ぼっちだった、俺と遊んでくれてたじゃねぇかよぉ……! 本当に覚えてねぇのかよぉ……!!」


 いじめ……一人ぼっち……遊んでいた……? あーあーあー、そういえばいたな、そんな奴。何か名前がつよそうな癖に、ひ弱で声が小さく泣き虫とかって理由でいじめられていた奴。


 え? あいつあの立石たていし? 城にいた時もデカかったが、小学校の時とまるで別人だぞ?


「お前、あの立石たていしか……? 小五で転校していったあの……?」

「!? そうだよ、その立石たていしだよぉ……! うれしいぜぇ……! ようやく思い出してくれたんだなぁ……!!」

「え、いやでも、お前さ……昔は俺より身長低かったし、それに、ほら、もっと細かっただろ? 昔の立石たていしと全然イメージが違うんだが……」

「あれから俺も色々あってよぉ……! 転校先の学校でも当然いじめられたのんだよぉ……! だから、俺はぁ……! 身体を鍛えたんだぁ……!! 学校にも行かずになぁ……! 日に三十時間の鍛錬という矛盾を乗り越えぇ……! 俺は誰にも負けない圧倒的なパワーを手に入れたんだぁ……!! それが今の俺だぁ……!!」

「……」


 こういう時、俺は一体どういう反応をすればいいんだろうか。数年ぶりに再会した友人(?)が、転校先でいじめられないように身体を鍛えた結果、身長2m近くある筋肉だるまになってしまった。なるほどなるほど。やはり脳の処理が追いつかんな。


「……そしてあの時はびっくりしたぜぇ、正義まさよしぃ……! 何せもうお前とは会えないと思っていたからなぁ……! だがあの時お前と再会したことでぇ……! 俺が自分の心の奥底に仕舞っていた、ある感情が目を覚ましたんだぁ……!! 正義まさよしの事が好きだって感情がぁっ……!!」


 クソッッッ!! 一体何がどうなったらそうなると言うんだ!! 何で俺にばかりこんな……こんな訳の分からない展開が次々と起こるんだッ!!


「……宝石たからいしぃ……! あの時はマジで死ぬかと思ったよなぁ……! あの女が殺されてよぉ……!」

「……そうだね。」

「だから俺はよぉ……賭けに出たんだよぉ……! アンデットに身を堕とすことでぇ……! 奴らに対抗できる力が手に入るんじゃないかってよぉ……! その試みは無事成功したぜぇ……!」

「……それはよかったね。」

「だがテメェはどういうことだぁ……! 俺がぁ……! アンデットの力を制御しようとしている間ぁ……! テメェは正義まさよしと仲良くしてましたってかぁ……? ふざけるんじゃねぇぞ……!!」

「……」

宝石たからいしぃ……! テメェは初めて会った時から気に食わなかったんだよなぁ……! 俺の方が正義まさよしと出会ったのは早かったのによぉ……! その後出会ったお前が正義まさよしと楽しそうにしてるんだからよぉ……! そして挙句の果てには正義まさよしとヤっただとぉ……? 許せねぇ……! テメェだけは……! 絶対に許せねぇ……!! 俺がこの場でぶっ殺してやるよぉ……!!!」


 何がどうなったらそうなるんだ! こんな展開になると一体誰が予想できたと言うんだ! 真珠しずくの事を好きだと思っていた男が、実は俺の昔の知り合いで!? 俺の事が好きだと判明し! 恋敵である真珠しずくに襲いかからんとするこの状況! ルビサファ姉妹なんか完全に蚊帳の外じゃないか!


「……正義まさよしにふさわしいのは僕だけだ。それをここで証明してあげるよ!」

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