第17話、商売計画

 だがこれはもう女神なのか悪魔なのか分からんな。


「へぇ、そんな仕組みなのね。商人や錬金術師って。」


「お前も知らなかったのか?」


「私は冒険者以外興味ないから、他の職業とかそういうのは調べてないのよね。」


 どうやらルビーも商人等の仕組みについては、知らなかったらしい。まぁこいつは今までの行動からして、サファイアよりは雑と言うか何と言うか。


「……何か言いたそうな顔ね?」


「いえ、何も。」


 それにしても冒険者、冒険者かー。比較的安全そうな商人を目指すにしても、まずは区分を二段階上げないといけない。俺が今区分ホワイトで、一個上がアイアン。上がるための条件は、半日以内に単独でゴブリンを五体撃破。少なくとも今の俺には無理だな。ゴブリン一体だって怪しい。


「ねぇ、そういえばあんたさ。商人になるかもしれないって言ってたけど、一体何を売るつもりだったわけ?」


「え? そりゃあお前、精液に決まってるだろ?」


「……薄々感づいてはいたけど、あんた本気? 確かにあんたの精液はすごい力があるみたいだけど、流石にそれを商品として売り出すのはどうかと思うわよ。」


 ルビーが俺の商売計画に文句を付けてきた。流石の俺も精液を直接売ったりはしない。そこまで馬鹿じゃあない。まぁでもこいつは知らないからな。俺の精液は水に溶かしても効果を発揮するってことを。


「何も直接売るってわけじゃないぞ。俺の精液は水等の飲み物に溶かしても、ある程度の効果があるらしくてな。詳しくは実験してみないと分からないが、多分市販のポーションくらいはあるんじゃないか。だから何か濃いめの味の飲み物に溶かして売るつもりだった。」


「……ってことは何? あんたは自分の精液を溶かした飲み物を、これは回復効果のある不思議な飲み物ですよ! って感じで売るつもりだったってわけ?」


「まぁ……そうなるな。」


「助けてもらっておいてこんな事言うのも何だけど、あんた最低ね。後変態。」


 俺の精液に助けられ、挙げ句の果てには妹を助けるために、自身のOPPAIをさらけ出した女が何を言うか。次またああいう機会があったら絶対揉む。心に決めた。


 最低というのには、遺憾ながら同意せざるを得ない。だが変態というのは納得できない。俺はあくまでも人助けのために精液を溶かした飲み物を売るつもりだったのであって、別に俺の趣味でそんなことをやるわけではない。断じてない。俺は変態ではない。


「ところで、これからどうしましょうか。もう日も落ちてくるころですし、今日は解散してまた明日集まりますか?」


「私もそれでいいと思うわ。あんたは?」


「俺も別にそれで問題はない。」


「では明日の朝、またこの冒険者ギルド前に集合しましょう。明日はまずザーメンさんの装備を最低限整え、その後試しに外へ出てみましょう。」


「それがいいわね。こいつがどれくらい戦えるのかも知っておきたいし。」


 おいおいおい、それはいきなり過ぎやしないか? 装備を整えて外に出る、つまりモンスターと戦ってみるって事だよな。この町に来る途中で出会った奴らと。いやー、厳しいんじゃないだろうか。厳しいというか無理。


「そんな心配そうな顔しなくても大丈夫よ。いざとなったら私が助けてあげるから。」


「そうですよ。それに明日戦う予定なのは、最弱のモンスターって呼ばれてるゴブリンです。私でもすぐに倒せるようになりましたし、ザーメンさんもきっと大丈夫だと思いますよ。」


 ふっ……こいつら好き勝手言いやがるな。いいさ。だったら明日、俺がいかに戦えない男なのかということを、こいつらに教えてやるとするか!

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