第8話、真実
赤髪の美人がいる方向へと目を向けると、そこには滅茶苦茶グロテスクな状態の人間が倒れていた。その人間、おそらく女性は、それはもう見るも無残な姿で地面に倒れている。
まず右脚の太ももより下がない。満貫。そして噛みちぎられたのか抉り取られたのか分からないが、左腹部もえらいことになっている。跳満。さらに右腕もない。肩から先がない。倍満。そして終いには顔も右半分くらいが潰れていてもうグッチャグチャだ。三倍満。かろうじて役満は回避できたといった感じの状態だ。
こんなグロテスクな現場を目の当たりにした俺は、当然吐いた。赤髪の美人の時に吐いた量とは、比較にならない程の吐瀉物を。多分寝る前に食べた串焼きも吐いたと思う。
それにしても、何だって俺がこんな目に合わないといけないんだ。俺は異世界召喚に巻き込まれただだけの一般人で、しかも城を出てまだ1日しか経ってないんだぞ。腕を再生できる精液を出せる人間を一般人と定義していいかは、この際置いておく。
とにかく、俺は何かすごい精液を出せる以外は至って普通の人間だ。それがいきなり、腕がない女性や、それ以上にグロテスクな状態の女性を何で目撃しないといけないんだ。
「ねぇお願い! 早く、早くこの子を……!」
赤髪の美人が何か叫んでいる。早くしろって言われてもなー。男性器を出したら絶対文句言うよな―、この赤髪。嫌だな―、やりたくないなー。
まぁでもそんな事を言っていられる状況じゃないのもまた事実。仕方ない。ササッと済ませて感謝の一つや二つでも貰って宿屋に戻ろう。
俺は心の中でぶつくさ文句を言いながら、下半身を隠していた衣類を勢いよく脱ぎ捨てた。俺の息子は現在しおれているが問題ない。すぐに元気にしてみせる。
「!? ちょっとあんた、何してんの!?」
「何って……そこの満身創痍な人を治そうとしてるんだが?」
「何でそれで下半身を出す必要があるのよ!! 馬鹿じゃないの!?」
このクソ女……人がせっかく意を決して治そうとしてるのに、何だその態度は。たかだか下半身を丸出しにしただけじゃないか。それなのに何で馬鹿とまで言われないといけないんだ。
「……嫌なら別に俺は、治さなくたっていいんだぞ。その場合、そこにいる人は確実に死ぬと思うが。」
「治そうとしてくれてるのはありがたいわよ! でも何でそれと下半身を出す事が関係あるって言うの!?」
「そりゃあ、あんたの左腕を治したのが俺の精液だからさ。」
「は……? 精液……?」
「そうだよ。俺の精液は何か知らないけど、回復効果があるらしいんだよ。だからあんたの左腕に射精した。そしたら治った。だから多分この人も同じようにすれば治ると思う。」
「あんたそれ本気で言ってるの……?」
赤髪の美人が心底呆れたと言った顔で俺を見る。何で人命救助をしようとしている俺が、そんな目で見られないといけないんだ! おかしいだろ!? 俺はただ、人命救助の一環で射精しようとしているだけなのに! そこにやましい気持ちは微塵もないのに!
「……とにかく黙って見てろよ。そうすれば分かるから。」
そう言って俺は、無言で息子を扱き出した。ふと赤髪の美人の方に目をやると、信じられないという顔でこちらを見ている。だが決して殴りかかったりしようとはしてこない。俺の言っていることが本当の可能性もあるので、下手に手は出せないとでも考えているのだろう。
……それにしても何だ。こんな状況で不謹慎なのは分かっているが、美人に見られながら扱くというのも案外乙なものだな。いつもより早く果てることができそうだ。
そして息子を扱くこと数分、俺はまず一回目の射精をした。最初の一発目は、とりあえず潰れた顔にかけておいた。俗に言う顔射という奴だな。夢の一つが叶った。
するとどうだ。みるみる内に潰れた顔が再生していく。ほう、赤髪の方は美人という感じの顔だが、こちらは美少女という感じの顔だな。悪くない。むしろ好き。
「うそ、まさか本当に……!?」
赤髪の女が驚いたといった反応を示した。俺の精液はすごいんだぞ。分かったか。
「……だから言っただろ。俺の精液は何か知らないけどすごい力を秘めてるって。」
「……さっきまでの事は謝るわ。疑ってごめんなさい。」
「分かってくれたんならいい。」
「じゃあこの調子で他の箇所も……」
この調子で後三回ほど射精し続ければ、おそらくこの美少女の怪我は治るだろう。だがただ治すんじゃ芸がない。というより四回も連続で扱き続けるのは正直キツい。何か”おかず”でもあれば別だが。
こんな所まで無理やり走らされたあげく、グロテスクな光景を見せられ、息子を扱く所までガッツリ見られた。俺ばかり見られるのは不公平というものだ。そうだな……
「……治すのはいいが、条件がある。」
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