第24話、次の町への道中1
「……ありがとう。肝に免じておく。」
俺達は雌のオークこと、エメラルドと軽く挨拶を交わし、村を出た。何か普通にいい奴だったな。少なくとも俺達にとっては。壁から男性器を生やしてた男性諸君がこれからどうなるのか分からないが、彼らとは二度と会うことはないだろうから問題ない。
「何ていうか……普通に見逃されちゃったわね……」
「……そうですね。正直エメラルドさんと遭遇した時は、もう駄目かと思いました。」
「何で見逃されたのかは分かんないけど、とにかくこれで次の町を目指すことができるわね。」
途中で雌のオークや、その他の強いモンスターと遭遇する可能性もなくはないだろうが、とりあえず最初の関門は突破したという所だろうか。ここから一週間歩きっぱなしは、一般人の俺にとっては正直かなりキツいんだが、何とか頑張るしかないな。
「あっ、そういえばさ。あんた結局何者なの? さっきの雌のオークが召喚者とか転移者とか言ってたけどさ。」
「……話さないといけないか?」
「別にあんたがどうしても話したくないってんなら、無理に話す必要はないわよ。ただあんまり聞き慣れない単語が飛び交ってたし、ちょっと気になったってだけ。」
これからこのルビサファ姉妹とはそれなりの付き合いになるだろうし、一応説明しておいた方がいいか。別に口止めとかはされてないしな。
「いや、話すよ。実は俺は、この世界の人間じゃないんだ。大体一月前くらいになるが、例の城の王様か誰かに、この世界の魔王的な奴を倒すために召喚されたんだ。」
「……ってことは何? あんたは魔王を倒すために召喚された、正義の勇者様って事?」
「いや、俺は勇者じゃあない。勇者は俺の友人。俺は召喚された時に友人と一緒にいたから巻き込まれただけの、ただの一般人だ。魔王を倒すのは俺の友人とその他の奴ら。」
「……ごめん、意味が分からないんだけど……? まず、巻き込まれたって何?」
「俺も詳しい事はよく分からない。当時友人と居た時に急に意識を失い、それで気が付いたらこの世界に召喚されていた。そして俺には友人みたいな勇者の力等はなかったから、城の奴らには疎まれていてな。友人達が旅に出るタイミングで、俺も一緒に城を出て、その後一人寂しくあの町に居たってわけだ。」
「でもあんたはさ、その……すごい力があるじゃない。あんなでたらめな回復魔法聞いたことないわよ。……そもそも魔法なのか怪しいけど。」
「私は意識を失っていたので実際の現場は見ていませんけど、あの時は正直もう助からないだろうなって覚悟を決めていました。でも気が付いたら怪我を負った箇所が全てキレイに治っていました。私が今まで読んできた本の中にも、あれ程の効果のある魔法は載っていなかったはずです。」
ルビサファ姉妹が若干の疑いが混じった目を俺に向けてきた。そんな目で見られてもな。俺も自分の精液に何であんな力があるのかさっぱり分からない。
「別に嘘はついてないぞ。確かにちょっと変な力を持っているかもしれんが、俺は本当にただの一般人だ。事実それ以外は何もできないしな。初歩的な攻撃魔法や回復魔法等色々試してはみたが、どれも全く使えなかった。」
「ふーん、まぁあんたがそう言うんなら信じるわよ。でもよかったわけ? あんなにすごい回復効果がある、その……精液があるんだから、あんたがついて行ってたらあんたの友人も、もっと楽に戦えるんじゃないの? 私達的にはあんたがあの町にいてくれたおかげで助かったわけだから、そんなに言えないんだけどさ。」
確かにその可能性はあるかもしれない。俺がついていくことで、少なくとも四肢程度なら回復できるからな。ただあいつらがそれをよしとはしないだろう。特にあのビッチ辺りが、キモいだの何だのって文句を言うに決まっている。
「勇者一行に精液を駆使して味方を癒やす奴がいても、あまり印象がよくないだろう。俺は友人達とお前達、あと城の兵士くらいしか見たことないから何とも言えないが、友人達は相当強いと思うぞ。だから俺なんかいなくても大丈夫だろう。むしろ回復以外はできない、その回復方法もあまり絵面はよくないで、邪魔になるんじゃないか。」
「……まぁそうね。普通、あんな方法で回復されたくはないわよね。私もサファイアもあんたに感謝はしてるけど、正直……ね。」
「まぁ次がない事を祈っておくんだな。」
もしもまたあんな事態になろうものなら、次はもっとすごい要求をしてやろう。具体的には揉む。そしてあわよくば舐めて吸うことも辞さない。そして最終的には……ゲヘヘ。
っ! おっといけないけない。こんな所で息子さんが元気になってしまっては処理ができないからな。流石に二人の前で息子をしご……ちょっと待てよ。俺はこれからこの二人と旅をするんだよな。
道中はモンスターと遭遇する可能性だってあるだろう。そして夜は焚き火をしながら見張り番を交代制で、みたいな事だってやるかもしれない。とてもじゃないが緊張で、抜いてる暇なんてないだろう。
なら、俺は! 一体いつ抜けばいいというんだ!? まさか一週間も我慢するのか!? この俺が!? そんな事、絶対にできるわけがないだろう!?
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