第32話、思わぬ再会
俺は晴れてホワイトからアイアンへ区分を上げる事ができた。
「おめでと。これであんたもアイアン区分、初心者から見習い冒険者の仲間入りね。」
「おめでとうございます、ザーメンさん!」
「あぁ、ありがとう。」
ルビサファ姉妹が俺の元へと近づき、祝福をしてくれた。あまりこういう事は慣れていないのだが、やはり嬉しいものだな。人に褒めてもらったり喜んでもらったりするのは。
「あんたも動き疲れてお腹空いてるだろうし、これから食事でもどうかしら? 今日この町を見て回ってたら美味しそうなお店を見つけたのよね。あんたの昇格祝に、今日は私が持つわ。」
「あっ、姉さん。今回は私も出します。二人でザーメンさんの分を払いましょう。」
「……すまないな、お言葉に甘えさせてもらう。」
俺とルビサファ姉妹は、ルビーの言う美味しそうな店とやらを目指して歩き始めた。目的の店は、ギルドから少し離れた町の中央にあるそうなので少し遠い。かなり疲労しているが、旨い飯が食えるならと、気合を入れて歩く事にした。
歩く事十数分、ようやく目的の店にたどり着くかという距離まで歩みを進めた所で、何やら町が騒がしい事に気が付いた。ここから少し先の所に何やら人だかりができている。
「……なんかあの辺騒がしいわね。」
「そうですね。ここからだと詳しくは分かりませんが、負傷者がいるといった内容の話が聞こえます。」
俺には話の内容なんてまるで聞こえないが、ルビサファ姉妹には聞こえるらしい。負傷者がどうとかって話だそうだ。何だろう、嫌な予感しかしないんだが。
「どうする? 私達も一応行ってみる?」
「……私達が行ってどうにかできるものでもないと思いますが、あの騒ぎは少し気になりますね。ザーメンさん、どうしますか?」
「……俺か? 俺は腹減ってるからできれば店に行きたんだが……二人が気になるなら別に行ってみても構わんぞ。」
「分かったわ。じゃあ少しだけ見てみましょうか。」
俺とルビサファ姉妹は騒ぎのしている場所へ歩みを進めた。近づくにつれて俺にもようやく騒ぎの内容が聞こえた。何でもこの辺では見ないような顔をした二人組が、相当な重症を負って町まで運ばれてきたらしい。
この辺では見かけないような顔ってのが、すごい気になるな。それはこの町とは違う地域から来た人間で、この辺では見かけない顔をしているという意味なのか。それとも俺と同じ様に向こうの世界から来た人的な意味で、この辺では見かけない顔なのか。どっちだ?
「ごめんなさーい、ちょっと通してちょうだいねー。」
ルビーが人だかりを強引にかき分け、負傷者の姿が視認できる所まで進んでいった。俺とサファイアも後ろからついてく。
ルビーの後ろをついて行って負傷者の姿を確認できる位置まで辿り着き、負傷者の姿を確認した。するとそこには、俺の見知った連中の姿があった。
「お前は……!?」
その連中とは、十日程前まで共に同じ屋根の下で過ごし、その後魔王的な存在討伐のために旅立った友人達だった。
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