1000年後の異世界を憂うリヴァイアと、ボコスカな仲良し4人の物語。
――私は、ここサロニアムの丘の上に立つと、どうしても思い出してしまう。
もう……よせばいいのに、思い出してしまう。
思い出したところで、人生は何も変わらないのにな。
変わることがあるとすれば……それは心の内にあるモヤモヤした気持ちの整理だけであって――
仲間達との出逢い、ともに生き、ともに戦い。別れて、旅立ち、泣いて……。
悲哀と悲壮の思い出から生まれた……懐かしさや悔しさなんてものは、結局は、過去に体験した私の恣意的な記憶でしかなくて――
あれから1000年が過ぎ……そんなものは、もう忘れてもいいのかもしれない。
いや、忘れたほうが賢明なのだろう……。
未だ何も変わらない私――リヴァイア・レ・クリスタリアがここにいる。
思い出して何になろう……?
けれど、思い出したくなくてもこのサクラの大樹を見ていると、どうしても思い出してしまうのだ。綺麗な思い出だけではないことは、リヴァイアは当然のこと分かっている。
一塊の騎士団としてサロニアム守護のために、日々戦い続けた。長く続いた戦乱で、多くの仲間が旅立っていった……。
やがて、騎士団長の道を選択することにした。それは、自らが率先して戦乱の世を終わらせたいという野心よりも、旅立っていった仲間達への弔いの意味合いが大きい。
あの時も、この丘の上のサクラの大樹が満開だった――
騎士団に入る前は、私は修道士として生きていきたいと願い。その道を歩いていた。若い頃の話だ。
サロニアムの街外れにある児童養護施設『聖サクランボ』で、修道士として修業の一環として、日々お世話になって働いていた。
何もかもが大切な思い出だ。懐かしい思い出だ……。
チェリーレイス…… レイス
――私が古代魔法の図書館で知ってしまった預言書。
1000年後の未来の出来事――そこに立つ聖剣士のこと。
「幼名をチェリーレイス。我が最愛の妹、レイス・ラ・クリスタリアよ……」
お前の後の運命を私は知ってしまい。その起因が、この私……リヴァイアにあることを知ってしまって。
――聖剣士になることは預言書に書かれていた。
このもどかしい……1000年後に悲運を受けるお前を、お前と後に出逢うことになる、毒気に犯された聖剣士の……このもどかしい気持ちを…………。
サロニアム守護のために戦うことでしか……憂さを……自分自身の心の内にしまい、なんとか気を紛らわせて生きてきた。
誰に対しても見せまいと……聖剣士を名乗る者としての覚悟の裏に秘め込んだ――
ああ、これは言い訳だな。