第25話 聖剣士リヴァイア、聖剣エクスカリバー。神の剣――おお、なんかすげ~


 ――預言者達が、なにやらざわついている。


 ここは、アルテクロス城の地下の部屋、預言者達の部屋である。

 部屋はランタンの明かりだけ、とても薄暗い。

 部屋の中は理科室の隣にある控室のようである。ホルマリン漬けされた名前も不明な怪しい怪魚? 小人族? サンドウォームの幼生ヴァージョン? みたいなのが、ずら~っと棚に並んで置かれている。

 下の段には、三角フラスコの容器に赤紫色や青紫色の液体が、ねっとりと底に沈殿物を積もらせて……何かしらの実験で使用されるであろう液体が、ずら~っと並んでいた。

 

「とうとう来られましたな。姫様が……大きゅうなられて……」

 預言者の1人がボソッと呟く。

「……サスーガ領主、今度は本腰を入れてダークバハムートを召喚なされるおつもりじゃ」

 その隣に座っている預言者も、ボソッと……、

「レイスのしるし、じゃ」

「ああ、そうだ。レイスのしるし」

「次に手に入れるは、大帝城サロニアム・キャピタルの皇帝の王冠か」


「ダイヤのキング!!」

 一斉に声を揃えて言い放つ。


『――アルテクロスの姫と共に生きる飛空艇乗り達は、必ず世界を救うでしょう』

 預言者達の更に奥。

 ランタンの明かりも届かない部屋の隅の椅子に座って、長い白髪を床にまで垂らしている老婆――預言者の中の預言者『大予言者・ドーガー』が、ボソッと呟いた。

 大きな鍋に火を起こし、菜箸を入れ斑に色鮮やかな液体をかき混ぜながら――


「これは……大預言者・ドーガー様が仰った」

「これは目出度い。大預言者・ドーガー様が預言を仰った」

 再び、部屋の中で預言者達がざわつき始めた。


「……誰か。私の更なる預言を、レイス、ルン、アリア、イレーヌ達へ伝えてはくれまいか……」

 大予言者・ドーガーは鍋を見続けながら、ゆるりゆるりとかき混ぜる――




       *




「そうだ。お前のチームリーダーのレイス姫が………お前らしい早とちりだな!! はははっ。はははははははははははっ」


 法神官ダンテマの笑い声が両天秤の間に木霊する。


「おお、ダンテマ殿! ようこそ、円卓の会議へ」

 サスーガ領主が法神官ダンテマを見つけ、なんと領主自ら起立し頭を下げた。法神官ってそんなに怖い存在なんだね……。

「サスーガ領主! このような一介の飛空艇乗りの余興、相手にしなさんな」

 法神官ダンテマが毅然とした態度で冷静に発言した。

「一介の飛空艇乗り?」

「もう! ルンって! やめてよ」

 法神官ダンテマにまで突っ掛かろうとする勢いのルンを、レイスが傍まで詰め寄って止めに入る。


「ルンさんってば、もうやめましょうよ。ケンカはね……」

 アリアも、窓際から駆け寄ってルンを静止させようと、

「ルン、やめないか。相手は法神官だ。また牢屋行きにされたいのか?」

 自分はもう牢屋はこりごりだから、という内心を秘めてイレーヌもルンのもとへ駆け寄り彼を止めに入った。

「ほう……。相変わらずチームワークだけは立派だな。飛空艇ノーチラスセブンのキャプテンよ。チームメイトに感謝するんだな。私は本気で、お前をもう一度牢屋に入れてやろうと思っていたのに……」


「……なんだと?」

「もう! やめてルンってば!!」


 ――こうして、ルンの一介の飛空艇乗りの“余興”は幕を閉じた。



 ルン、アリア、イレーヌは壁際にある自分の椅子へと腰掛けた。

 一方のレイスは円卓の席へ着席した。

 レイスは御姫様なのだから、末席では王令儀礼に対して無礼となってしまうからというのが、円卓の席を用意された理由だ。

 ……慣れない場の空気のために、円卓の上座の席でレイスは少し俯いている。


「――それでは、ウルスン村を奪還するための戦略会議を始めます」

 法神官ダンテマが切り出した。

「まず、この場を借りて、今日という日にアルテクロス城から長らく旅に出ていました姫君、レイス姫様がお戻りになりました」

 法神官ダンテマがそう言うと、パチパチ……と円卓に座っている皆がレイスに向けて拍手した。

 サスーガ領主もオーラン大臣もである。

「レイス姫様……大きくなりましたな……。さぞ、私を恨んでいることでしょう」

 サスーガ領主がレイスに語り掛ける。実の親子なのに、なんだか他人行儀である。

「……サスーガ領主様」

 俯いていたレイスが顔を起こし領主を見る。


「レイス姫様。……こんなことを言っても、もはや信じてはもらえないのかもしれません。あの時、……私は神官達からの進言で、究極の選択を迫られていました」

 それはスラムで、レイスの育ての親ママンから教えてくれた話――今度は、サスーガ領主が申し訳なく思ったか俯く。

「奴を封印するためには、どうしてもダークバハムートの力が必要なのです。そのダークバハムートは魔力を食らわねば動いてはくれぬ」

「奴……」

 レイスはその“奴”とは誰なのか? 何者なのか? 疑問に思った。

「神官達は、わしにこう言ったのです。『ダークバハムートへの魔力は、レイス姫様の身体に秘められた魔力である』『レイス姫様の全魔力を吸収することができれば、奴を確実に封印することができます。ですからどうか、ご許可を……』と、わしに懇願してきたのでした」

  サスーガ領主は、一瞬レイスの目を見ると、またすぐに俯いた。

「わしは言ったのじゃ……。『神官達よ……。そんなことをすれば、レイスはどうなってしまうのか?』、わしに続いて王女も言った。『神官達! わが娘レイスを道具としてしか見ていないのですか? 無礼ですよ』……とな」

「……サスーガ領主様、そんなことがあったのですか?」

 レイスは自分が知らないアルテクロス城の中で巻き起こっていた出来事を、しっかりと胸に刻み込もうと聞き入っている。

 自分はアルテクロスの御姫様なのだから、覚悟を決めて……それ相応の知見を持たなければと。


「神官は……。レイス姫様――あなたの命を奪ってでも、奴を封印しようと計画していました。しかし、……わしは、そして王女も、レイス姫様の命を奪ってまで、奴を封印しようとは思いませんでした。できませんでした……」

「わがを封印する道具にするなんてな!」

 大きな声で言ったのはルンである。


 ――またしてもルンの問題発言が出る。


 しばしの沈黙の後、

「……だからって、わが娘をスラムに捨てたのか? とんだ領主様だな。」

「もういいってば、ルンって! やめてって!!」

 壁際に座っているルンへ身体を向け、レイスが声を荒げて咎めた。

「だって、事実じゃないか!! 確かにレイスの命を神官達から守ることはできたけれど。その代わり、レイスは幼い頃からずっと、ずっと、スラムで生活する羽目になってしまった。それを今さらってな感じだぜ!!」

 両手を頭の後ろに当てて、膝を組んで……ルンが白けた感を隠さずに、円卓の上席に座る面々へ見せ付けた。

「もうってば、ルンさん。だめですよ。私達はお呼ばれしている身なんですからね」

「そうだ、ルン。ここは話をしっかりと聞こうではないか。だから落ち着けって……」

 隣に座っているアリアとイレーヌが彼を宥める。

「アリア! イレーヌ! こんなレイスへの仕打ちをな! お前たちは許せるのか!?」

 ルンが声を荒げて……すると、


 刹那――サスーガ領主の右手が上がった。

 それを見ていた近衛兵が、すかさず槍を高く振り上げて、


 ドン! ドン!


 と、床に叩き付けた。

「皆々様! ご静粛に!!」

 近衛兵の言葉が両天秤の間に響く。


「ルン殿……。貴殿の言葉はその通りである」

 右手を下ろしながらサスーガ領主は、ルンに視線を合わせることなく吐露する。

「……わしは、いくら娘の命を守るためとはいえ、我が娘を捨てた事実には変わりはない。それは、よーくわかっているつもりだ……。すまなかった、レイス姫」

 サスーガ領主は円卓に座っているレイスの方へ身体を向け、そして、深く……深く頭を下げた。謝罪である。

「サスーガ領主……、おとうさ……」

 レイスは思わず、というか、ずっと悩んでいたこと、それを言い掛けた。

 領主は実の父である。

 だから、領主といえども彼女にとっては父親である。


 しかし――、


「レイス姫様。わしを、どうか姫様の父とは思わないでください」

 レイスの言い掛けた言葉の意味を素早く理解するや否や、サスーガ領主が素早くそう切り出した。

「……わしは領主。ここアルテクロスの民衆の命と生活を守る義務があります。そして、それと同時に、レイス姫さま……実の娘の命も守りたかった。わしは、どこまでも欲深い男なのです」


「サスーガ領主、そんなことはありません」

 オーラン大臣が起立する。

 大臣もレイスに身体を向けて、領主と同じく深く頭を下げた。そのままの姿勢で――

「レイス姫様……。領主は、それはそれは苦渋の決断をなさったのです。それだけは……どうかご理解ください」

 頭を上げる大臣、レイスの目をしっかり見つめ心の底から謝罪する。

「わ、私は、別に何とも思って……」

 レイスは、オーラン大臣に言った。続いて、大臣の隣に着席するサスーガ領主を見る。

「……私、実はよく分からないんです。魔法とか魔力とか……だって、私、ずっとスラムで暮らしてきて、魔法も何も、そんなの使ったこと一度もないですし……。だから……」


 コホンッ


「……まあ、四方山話よもやまばなしはそれくらいにしませんか? 皆々様。この会議はウルスン村を奪還するための会議であることをお忘れなく……」

 ちょっと皮肉っぽく言って止めたのは、法神官ダンテマだ。

 法神官だけに理性の塊のような冷静さ……というよりも、泣く子も黙る法神官の立場から見て、この家族ゲーム? に聞き飽きたのか……?




       *




 聖剣士リヴァイアさまは、救国の英雄じゃった――

 

 あの『大帝城サロニアム・キャピタル』の城に教会を建設し、魔導士達の結界魔法で奴を封印するために、先導して守護された尊いお方じゃ。

 その聖剣士リヴァイアさまは、教会の完成の直前にこう言われたそうじゃ。

 これは記録にしっかりと残っていて……



 “ああサロニアムよ。 そうか……、ついに完成したのだな”


 “奴を封印するべく、完成したこの大帝城の教会”

 

 “そうか。ならば、そこに私の最後の封印を刻み込むのもあと少しか……”

 

 “この『聖剣エクスカリバー』を大帝城の最下層にある封印の間に突き刺して、……奴めを、何が何でも封印しようぞ”



 “この聖剣士リヴァイアが愛剣まなけんエクスカリバーで! 永遠に!!”



「――今でも聖剣エクスカリバーは大帝城サロニアム・キャピタルの地下の封印の間に突き刺さり、奴を……。しかし、こうして奴がなぜ、どうして復活したのは……分からぬのだ」

 サスーガ領主はレイスにこの世界を――奴から守護するために立ち上がった伝説の『聖剣士リヴァイア』の伝説を話した。

 その話をレイスは、そして、その後ろの壁際の椅子に腰掛けているルン、アリア、イレーヌも、みんな興味深く聞き入っていた。

 その時、


「聖剣士リヴァイア……、まさか? あの救国の?」

 イレーヌが何か思い付いた様子で、瞬間、椅子から身を乗り出そうとした。


「……どう……した? イレーヌ」

 アリアを挟んで席に座っているルンが、前屈みの姿勢になって小声でイレーヌに尋ねる。

「いや、ルン。なんでもない……」

 そのイレーヌ。言い出したっきり、そのまま沈黙してしまう。

「いや~ん、イレーヌさんてばっ! もう私達チームノーチラスなんですからっ! 教えてくださいよ~」

 天然なアリア、ここでも本領発揮だ。

 隣に座るイレーヌの肩を揺すり揺すり……、口籠った彼女をなんとか喋らそうとする。

 おかげでヤジロベー状態のイレーヌ――

「おい! アリア……。いつ……から、チームノーチラスになった? 俺の飛空艇ノーチラスセブンだぞ!!」

 この真剣な会議の場でも、飛空艇は俺のものなんだぞ! と威張るルン。そこへ、


「ちょ、ちょっとってば!」

 円卓に座っているレイスがこちらに振り向いて、

「そのチームリーダーは、私なんだからね! お忘れなく……」

 と……ボソボソと――もとい、ヒソヒソと小声で……でも、そんなこと言っていると、


 ドン! ドン!


「ご静粛に!! ご静粛に!!」

 ……近衛兵が床に槍を突くんだよ。ほ~ら怒られたね。



「やはり、あの御方の力無くして……。しかし、今はどこにいるのやら」

 ――飛空艇乗りの4人の“リーダー争奪戦”なんかには気にも掛けず、サスーガ領主は独り言を呟く。

「かつては……ドワーフの穴倉を寝床にしていたと聞きましたけれど。あの御方は風来坊ですからね……」

 領主の隣で同じく、オーラン大臣も呟いた。

「女性なのに風来坊か……」

「そうであると……いう伝説ですよ」


「……………」

「……………」


 互いに顔を見合わせて、無表情で口を閉じる。

 その間数秒――すぐにサスーガ領主は顔を両天秤の間の大窓に向けた。

「……奴を封印するには3つの封印を解かぬことには……。その1つは勿論、レイス姫様の……。もう1つは、あのお方の聖剣じゃ……」


「あの……さっきから聞いていて思ったんですけど。その聖剣なんちゃら……ってなんなのですか?」


 さっきまでチームどうたら……とか、飛空艇うんぬん……で言い争って、案の定、近衛兵に睨まれたルンが、あの~? ちょっと質問が……というように挙手

 あっけらかんな表情を円卓に座る一同に見せて、……これも無礼なのだけれどサスーガ領主に直接尋ねたのだった。

 そのルンの質問に対して、

「……ああ、聖剣とはな、古代に繁栄を謳歌した死骨竜しこつりゅうの化石から作られた、伝説の剣のことじゃ」

 サスーガ領主はルンの無礼な態度を気にすることなく、あっさりと返答した。

「死骨竜って……、あの俺達人間やエルフが繁栄する前の、火山がボコスカ・ボコスカって噴火していた時に、この世界を支配していた伝説の生き物」

「……そうじゃ、サロニアムの旧都である『ゾゴルフレア・シティー』が衰退する切っ掛けになった“大渓谷”や、サロニアムの砂漠を超えたずっとずっと向こうにある“大海峡”は、死骨竜が大地を食い荒らして裂けたという……」

「ゾゴルフレアって“忘却の都”って称されるゴーストタウンじゃ……」

「その名の通りに……何もかもを食い荒らして死だけを残していく妖獣ようじゅうじゃ」

 大窓から見えるアルテクロスの空を眺めていたサスーガ領主、くるりと顔を振りルンを見る。

「……人間やエルフがまだ進化する前の、ネズミみたいな姿をしていた時にいた巨大な雑食の妖獣だったっけ? 確か御先祖様は、ずっとそいつらに怯えて生きていて……」


「リヴァのつるぎ――真の名を聖剣エクスカリバーと称す。この世界の覇者だけが、その手に持つことを許されるという神のけんである。ご理解できましたか、ルン殿」

 サスーガ領主の隣に座っているオーラン大臣が話を付け加えた。


「聖剣士リヴァイア、聖剣エクスカリバー。神の剣――おお、なんかすげ~」

 ルンが天井を見上げる。なんか……、何故か、嬉しそうにニヤニヤと表情を緩ませた。




       *




「失礼します……」

 サロニアム城のメイドが扉の前で立ち止まり、一礼してから両天秤の間へと入ってきた。

 円卓のテーブルに、お茶と菓子を手際良く置いていく。

 

 最初に置いたのは、もちろんサスーガ領主の席である。

 次にレイス。レイスはテーブルにお茶を置かれると、すぐにペコリと頭を下げた。こんなの慣れていないものね。

 その次にオーラン大臣へ。――という具合に、メイドはお茶を置いていく。

 サスーガ領主とレイスは、視線を円卓に向けたままである。

 冷静で慎ましくお茶を? 否、ケンカをした後の気まずさのような沈黙が2人の間にはあった。

 実の親子なのであるが、ずっと疎遠だったためによそよそしい……。


 その最中、

「……あのう」

 恐縮している円卓の向こう側、壁際の椅子に腰掛けている飛空挺メンバーの1人から声が聞こえてきた。


 1人ずつお茶を置いていたメイドも手を止めて、その声がする方を向く。

 円卓に座っていたオーラン大臣、

「君は誰かね?」

 目を細めて睨みながら聞いてくる。

 続いて、その他の老人達も、この高貴な円卓の会議に平民風情の分際で……とかなんとか。なんか、嫌々感を丸出しにして、その人物を見た。


 ……その見られている人物とは、天然のアリアだった。


「あの~?」

 アリアは恐る恐る手を上げる。

「質問があるのですけれど……」

 RPGで強力なバリアーを越えたところに宝箱があったら、誰だって開けたいよね?

 でも、バリアー除けの呪文はまだ習得していないし。回復魔法で往復しても、HPのゲージが赤色になっちゃうし……どうしよう?

 でも欲しい!! ――これが、アリアの性格である。


 円卓に座っている老人達。無礼な小娘という感じでアリアに冷めた視線を当てている。

「質問なんですけど……い、いや、いいです」

 さすがの天然アリアさんも、あ? これ黙っとけという空気なんだと学習したみたい。

 しかし、

「オーラン大臣、よい」

 と言ったのはサスーガ領主である。

「しかし領主。平民風情をこの場で発言させるなんて前例がありません。それに後世の記録にも悪影響が出るのでは……」

 隣には着席していたオーラン大臣がサスーガ領主へ振り返って、慌てて提言した。

「前例とか後世とか言うでない。大体、奴を再び封印することができなければ、後世も何もないであろうが……」

「……それは、……そうですけれど。……よろしいのですね」

「だから構わん。質問を聞いてやれ!」

 大臣からの苦言を押し切り、領主は平民風情……アリアの発言を決定した。

 それを機会に、円卓の老人達も急に大人しくなる。


「……では、そこの……レイス姫様のお付きの」

「ああ、アリアと~申します」

「……では、アリア殿。質問を、その手短に」

 そう言われると、アリアは起立した。



「あの~。奴って誰なんですか?」




       *




 ――その者、『最果ての異空間』からアルテクロス城の一部始終を見ていた。



『オメガオーディン』である。



 ――その者も、『最果ての誓いの村』から同じくアルテクロス城の一部始終、そして最果ての異空間にいるオメガオーディンの姿と声を、心の目で見ていた。



『聖剣士リヴァイア』である。



「うずくか? うずくよな? 聖剣エクスカリバーよ……」

 聖剣士リヴァイアは、聖剣エクスカリバーを見た。

 暗い洞窟の中、再び聖剣エクスカリバーが明るく光りを放ち出す。

 その光は、彼女に何か語り掛けようとしているかのようで、ほわん……ほわん……と輝きに波打たせながら、次第に明るく明るく輝かせている。

「……まあ、待て。聖剣エクスカリバーよ。はやるな」

 聖剣士リヴァイアが、座っていた岩からスッと立ち上がった!


「そろそろ、私も行こう。勿論、お前も来い! 大帝城サロニアム・キャピタルはやっかいな城だ。恐らくオメガオーディンもあの城で、レイスたちを迎え撃つであろう。私なら、そうする。あの城に仕掛けられた罠を、アルテクロス城の預言者達はレイス達に必ず教えるであろう。……けれど、それでも、大帝城サロニアム・キャピタルはやっかいな城である」


 聖剣士リヴァイアは、聖剣エクスカリバーの柄頭を優しく撫でた。

 そして洞窟内で大きな声で、

「アルテクロス城の預言者よ! もう伝えたのか? 大帝城サロニアム・キャピタルで、飛空艇乗り4人の友情に試練の時がくることを!!」


 叫んだ刹那――


 聖剣エクスカリバーも、彼女の声に合わせるかのように、一層、大きく光を輝かせる!!

 ……まるで心臓がアドレナリンの作用によって、ドックン、ドックンと鼓動するかのように、脈打つかのように。

「そんなにはやるな、聖剣エクスカリバーよ。死骨竜から生まれた、我が聖剣エクスカリバーよ! “生き血”を啜って生き返りたいのだろう? それも、とびきりの生き血、オメガオーディンの“血”を啜ってか??」


 聖剣士リヴァイアが、闘志をみなぎらせる。





 続く


 この物語は、フィクションです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る