第43話 交差する想い


「あら、そんなに天井見てどうしたんですか?」


 すると、赤城が影の顔を覗き込むようにしてパッと顔を見せる。

 いきなりの事に影はビックリして驚いてしまった。


「わぁ!? ……びっくりした」


「うふふ。そんなに驚いて可愛いですね」


「もぉ、赤城からかないでよ」


「えぇ~いいじゃないですか?」


「…………」


「それよりほらここにはソファーが一つしかないんですから真ん中に座るんじゃなくて詰めてください。ほら、ズレてズレて」


 赤城が隣に座ると濡れた長い髪から甘くていい匂いがしてくる。


「それで何について考えてたんですか?」


「秘密……って近い近い」

 赤城は影の顔を覗き込むようにして顔を近づけて来る。


「なら素直に教えてください」

 影は照れながら小さい声でボソッと呟く。

 好きな人に嘘をつける性格だったらどれだけ良かっただろうかと自分を恨みながら。


「赤城の事についてだよ……。ほら赤城って綺麗だし仕事できるしすごいなぁ~って」

 ボンっと赤城の顔が真っ赤になる。

 そして頬が緩み、満面の笑みになる。


「あら、今日は素直ですね。ならそんな素直な提督にご褒美をあげましょう」


「ご褒美?」


「はい。何でも一つだけお願いを叶えてあげます。最近よくお仕事も頑張ってますから」


 その言葉に影が喜んでいると、念を押すようにして赤城が言葉を付け加える。


「先に言っておきますけど胸を触りたいとかエッチがしたいとかそう言ったのはナシですよ! 若い身体を持て余してしまうのはわかりますが、そうゆうのはそう言った関係になった人としてくださいね」


 と影の若さに対する警戒心をさりげなくアピールしてくる赤城。

 やはりあの時の飛龍とのやり取りを赤城は気にして警戒しているのだろう。

 でもそんな事をして欲しいとはそもそも言う自信がない影にはまぁ無縁の話しではあるわけだが。


 せっかくだしこの心の不安をなくしてくれる事がいいかなと思い影が考える。

 そこで候補としてまずは色々と考えて見る。


「ちょっとだけ考える時間頂戴」


「いいですよ。それにしても嬉しそうでなによりです」


 肩を揉んでもらう、お話し相手になってもらう、気持ちの整理の為に夜のお散歩に付き合ってもらう、……等々些細なことでも沢山して欲しい候補が出てきた。

 いつもなら何気ないことではあったが、好きと言う自覚を持ってからはとにかく何かを一緒にしたい、時間を共有したいと言う思いに心情が変化したようにも感じられた。


「あれ? もしかして何もないですか?」


 赤城が質問をする。

 赤城としては案外早く何かを言われるかと思っていたのでちょっと心配になった。


「いやこうしてもう少しお話し相手になって欲しかったり、赤城の過去のお話しを聞きたかったりって色々あってね」


「なるほど。私が思っている以上に影提督って私に興味を持ってくれてたんですね」


「多分そうかな? ちょっとそこらへんはちょっとわかんないけどね」


「ならそうですね……」


 そう言って赤城が少し考えて。


「ならこのまま二人で寝室に行ってマッサージでもしてあげます。そこで影提督の言うお話し相手に私がなりましょう」


「でもそれだと……」


 影の言葉を先回りするように。


「正直に言うと私が影提督に何かしてあげたいんです。それとお話しも。私にとって影提督は特別な存在ですから」


「ならお願いするね。赤城ありがとう」


「はい!」

 それから二人は寝室へと向かった。


 赤城はこの時内心喜んでいた。

 影は絶対にソファーで寝ると言う事は今までの経験上わかっていた。

 そして影は相手を嫌な気持ちにしてまで自分の願望を貫き通さない事も。

 簡単に言うと夜、狼になれないのだ……。

 だから何としてでも寝室に自然な形で呼ぶ必要があった。

 で素直に一緒に寝たいと言うのはやはり好きな相手だからこそ恥ずかしくて言えない。

 やっぱりそこは女の子だから。

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