第28話 全機発艦
影が方角を確認しながら進んでいると影を中央に配置するように、赤城、加賀、蒼龍、飛龍が囲むようにして来てくれる。そして菊月、夕月がそんな五人を護るように先行して影達を案内してくれる。
「菊月?」
「OK~。影提督、ここからは私と夕月が案内します」
「ありがとう。二人共宜しくね」
「「はい!!」」
影はやはり今も夜風に吹かれ動く度に見える夕月の下着が見え隠れする事にこれはアウトだろと思ったが、聞く限り敵も女性らしい事からこれも慣れだと自分に言い聞かせる事にする。とは言っても前を見てないとバランスがいまいち取れないわけだが、前を見るとどうししても視線が夕月の下着に行ってしまうのは男の性なのだろうか……。
ちなみに今は黒のパンツを履いている。
影は今の内に偵察機を飛ばしておく。
レベルアップにより影の偵察機――今は彗星が3機となっている。
一つここで心配なのは敵が今日の作戦を読んでいると言う事だ。
赤城達には黙っていたがセシル提督は精霊王の前ではどんな作戦も筒抜けだったと。
確かに言っていたのだ。
今更だが、それが精霊王の力だとしたら、精霊達の中にも似たような能力を持つのではないかと言う心配があった。
だから加賀達にはある事を今も黙っている。
それが影の最後の切り札になると信じて。
『敵艦隊確認。戦艦二、駆逐艦六』
『了解。そのまま敵に見つからないように監視をお願い』
『了解』
もしかしたらと思ったが今回に限っては報告を聞く限りその可能性はとても低そうだったので安心する。
今の所、すべて上手くいっている。
そう思うと少しだけ肩の荷が下りた気持ちになった。
「ちなみに影提督はもうお身体の傷は大丈夫なんですか?」
飛龍が心配そうに尋ねてくる。
そう言えば前回見た時は腕と足に包帯を巻いていたが言われてみればいつの間にか取れていた。
「大丈夫だよ。これも赤城がしっかりと看病してくれたおかげかな」
「当然です。影提督のお世話をするのも私の役目ですから」
「そうだね。赤城優しいから一緒におふ……んぅぅぅ」
すると慌てて赤城が影の口を塞ぐ。
赤城の力が強く、中々手が離れない。
そのまま影が言葉にならない声で喚く。
「そうなのよ。影提督の傷が癒えるまではやっぱり心配だったから」
と赤城が笑って誤魔化し始める。
「提督、一緒にお風呂入った事皆に言ったら、裸になれって強要され無理やり犯されたと言って社会的に抹殺した後に海の藻屑(もくず)にしますよ。わかりましたか?」
ボソッと赤城が影の耳元で囁く。
それはまるで悪魔の囁きのようにあま~い言葉のように。
影は喚く事を止め、コクりと頷く。
「いいですか。お風呂は私とか・げ・提・督だけの秘密ですよ」
影は赤城の笑顔が怖いと感じた。
どうやら影が思っている以上に、赤城にとっては皆に知られたくないエピソードみたいなのでこの件に関しては二度と触れないように気を付ける事にする。
「うん?」
「なんでもないよ、飛龍。あはは~」
最後は笑って誤魔化す影。
「ところで影提督は今どこに住んでいるのですか?」
「今? 赤城の家だよ」
その言葉に質問をしてきた加賀だけでなく、蒼龍と飛龍までもが赤城をジッと見つめる。
影は今マズい事を言ったかなと不安になりながらも赤城を見る。
すると、右手で髪の毛を触りながら、
「あれ? 皆に言ってなかったけ?」
と言った。
「言ってないけど?」
「言ってませんよ?」
「言ってませんよ?」
と三人の否定の言葉が入る。
「べっ、別にやましい事なんて何もないんだからいいじゃない!!!」
っと最後は顔を赤くして叫ぶ赤城。
そんな赤城を見て、影は思う。
赤城でもこんな可愛い顔をするんだなと。
「赤城顔赤いけど大丈夫?」
「もぉ~影提督までからかわないでください。それより助けてください」
「……ん?」
前を見るとフェルト資源庫まで後少しの所まで来ていた。
そして影の偵察機が状況に変わりなしと報告して戻って来る。
どうやらおふざけのお時間は終わりのようだ。
全員が真剣な表情になる。
「これよりフェルト資源庫の奪還任務を行う、一航戦赤城、加賀、二航戦蒼龍、飛龍、第一次攻撃隊全機発艦!」
「提督影、第一次攻撃隊全機発艦!」
「一航戦赤城」
「一航戦加賀」
「「第一次攻撃隊全機発艦!」」
「二航戦蒼龍」
「同じく飛龍」
「「第一次攻撃隊全機発艦してください!」」
影の指示により、第一次攻撃隊が各航空母艦から発進する。
そして隊長機である影の攻撃機を中心として敵精霊水雷戦隊へと向かう。
今回は今までの防衛戦とは違う。
影にとって初めての攻撃であり、最初の山場である。
ここで失敗すればフェルト鎮守府は航空戦力の大部分を失う事になる。
故に失敗は許されない。
影の緊張感が程よく全員に伝わる。
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