第29話 閃き
「菊月、夕月! 悪いけど敵艦隊が来たらお願いね」
「「はい、任せてください!!」」
「提督入電です。敵精霊艦隊を発見とのことです」
影が赤城の報告を聞いて一度頷く。
そして大きく深呼吸をして気合いを入れる。
「よし。これよりフェルト資源庫奪還作戦を開始する! 全攻撃隊突撃!」
影の戦闘機を中心に第一次攻撃隊が敵精霊水雷戦隊へ奇襲攻撃を開始する。
夜の海に上空からギリギリまで気配を消し近づく攻撃隊。
影達は指示が出せ攻撃隊達が被弾した際戻って来れるギリギリの場所で静かにその時を待つ。
この奇襲が成功するかしないかで作戦の成功率は大きく変わってくる。
だからなのかとても緊張していた。
手からは異様な汗が吹き出し、息を忘れるぐらいにただ遠目で見えない敵を見つめる。
――大丈夫、落ち着け
自分にそう言い聞かせる。
瞬間。
目の前で炎が勢いよく燃え始めた。
「提督! 入電です。トラトラトラ」
蒼龍が報告をする。
「提督。奇襲は成功です。ならびに敵直掩機と交戦に入りました。……これは?」
赤城がすぐに状況の報告をする。
が途中で言葉が止まる。
影の頭にも第一次攻撃隊から報告が来る。
影は意識を集中させて報告を聞く。
『カワカワカワ』
影が聞きなれない言葉に迷う。
ここに川はない。
あるのは海だけ。
だけど、何処かで聞いた事がある言葉に何だったかと思い出していると。
赤城が影の隣に来る。
「第二次攻撃隊の要請です」
と丁寧に教えてくれる。
「提督どうしますか? どうやら敵戦艦と駆逐艦もこちらに来ています」
飛龍が指さす先には戦艦二、駆逐艦四。
そのうち二隻の駆逐艦は中破、一隻は小破していた。
このまま固まっていては敵の標的になる。
影の頭が冷静にこの状況を判断していく。
今の艦隊の旗艦は影。
菊月、夕月がいるとは言え敵のスキルの事も考えれば。
正面からのぶつかり合いはかなり部が悪いことは明白。
今も来る報告では、奇襲は成功し敵駆逐艦二隻撃沈成功とのことだった。
「良し! 赤城、加賀第二次攻撃隊全機発艦!」
「「はい!」」
「一航戦赤城」
「一航戦加賀」
「「第二次攻撃隊全機発艦!」」
そして影はすぐにこちらの上空にも敵機が近づいている事に気付く。
『敵機そちらに行きました。奥の方に大型空母一隻発見!』
こちらの索敵から身を隠すように奥の方に隠れていた空母が戦場に姿を見せる。
やはり敵も馬鹿ではないようだ。
制空権はそう簡単にくれないらしい。
影のスキルが発動し味方攻撃隊の能力が向上している。
それでも簡単にはいかない。
「蒼龍、飛龍敵機がこっちに向かって来てる。迎撃を」
二人が頷く。
「二航戦蒼龍」
「同じく飛龍」
「「第二次攻撃隊全機発艦してください!」」
敵機をこちらに近づけないように二航戦の第二次攻撃隊を使い対処する。
そして敵水雷戦隊に捕まらないように逃げ回る。
今も飛んでくる砲弾に被弾しないように気を付けながら、動き回る。
菊月、夕月が反撃をしながら砲雷撃戦をするが……。
どう見ても敵の駆逐艦の方が火力が高い、これが精霊戦艦のスキル。
赤城が言っていたスキルのあるなしがここまで戦局を変える。
その意味がようやく分かった。
砲弾が影達の近くに落ちる度に波に身体が流されそうになる。
何とか赤城や加賀に身体を支えてもらいながら移動する。
それと同時に菊月、夕月も敵から距離を取りながら反撃する。
「夕月まずは敵の護衛艦から」
「OK~任せて~」
ドン、ドン、ドン!!!
夜の海に起きる火花。
そしてそのたびに余計に反応してしまう心臓。
これが戦いだと身体が実感する。
「菊月、夕月。敵駆逐艦は任せていい?」
「「はい!」」
影の言葉にすぐに笑みを向けて返事をする二人。
そして影が構える。
「提督影。第二次攻撃隊全機発艦!」
影の第二次攻撃隊が敵戦艦に向かって飛んでいく。
そのまま敵駆逐艦を菊月、夕月に任せた影達は戦艦と上空にいる敵機の殲滅に専念する。
「赤城、加賀、蒼龍、飛龍、直掩機出せる?」
クソッ、判断が遅れたと思いながらも、影が四人に確認する。
既に蒼龍と飛龍には直掩機を出す余裕はなく、敵の攻撃を躱す事に精一杯になっており返事はない。
「加賀!」
赤城の声に加賀が何とか反応する。
「大丈夫! 行ける」
赤城と加賀は何とか敵の攻撃の隙をついて直掩機を発進させる。
直掩機とは、敵機を迎撃して味方艦船や飛行場を守ったり、時には味方の航空機を掩護 (えんご) する戦闘空中哨戒を行う航空機である。
駆逐艦通しの砲雷撃戦も数で負け、火力でも負けてはいるが。
こちらも影のスキルの効果が発揮し、何とか頑張ってくれている。
本当に奇襲が成功して良かったと内心焦りながらも思う。
その時、影の飛行甲板に敵の攻撃がかする。
不幸中の幸いな事に影が足元を波にすくわれ、攻撃が直撃する事はなかった。
「提督! 大丈夫ですか!?」
「うっ、うん。大丈夫」
「赤城マズイ。敵の攻撃が止まない。このままだと菊月達と分断されちゃう」
加賀の飛行甲板も少しずつ破壊されていく。
これは第一次攻撃隊が敵空母を沈めるまでの辛抱だと思い影は耐える事を視野に入れる。
影の第二次攻撃隊も戦艦相手に突撃し奮闘する。
だが今も全力で攻撃をしているがまだ決定的なダメージは与えれていない。
視線を周囲に泳がせれば。
圧倒的な火力任せの攻撃に蒼龍と飛龍の飛行甲板がダメージを受けている。
――そう言えば何でこんなにも砲塔で攻撃されているのに……。
影の頭が考える。
そして、閃く。
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