第30話 失敗は許されない
「赤城、加賀、蒼龍、飛龍、一旦全力で逃げるぞ。相手はスキルを使ってパワー勝負に持ち込もうとしているが、火力が上がり過ぎた兵器の性能に元の装備の性能が追いつていない」
「つまりどうゆう事ですか?」
飛行甲板を盾にしながら、逃げ回る蒼龍。
「簡潔にお願いします」
何とか攻撃の間を縫ってこちらに合流する飛龍。
「火力が高すぎて狙いが定め切れていな……」
影、赤城、加賀、飛龍の近くに砲弾が落ち、荒波が四人を襲う。
荒波のせいで影の言葉が途中で途切れたはしたが言いたい事は伝わったらしく、蒼龍も合流する。
そして菊月、夕月と合流して、影、蒼龍、飛龍も今のうちに直掩機を発進させる。
これで菊月と夕月の方にも航空戦力が投入される。
それにより事実上何とか均衡状態に持ち込む事が出来た。
菊月、夕月が航空母艦を護るように旋回しながら敵水雷戦隊と砲撃戦をする。
飛んでくるのは砲撃。
一撃でもまともに喰らえば、艦隊少女ならともかく影ならば死ぬかもしれない。
特に敵の戦艦からの砲撃は、威力がぶっ壊れている。
だがさっきもいたように、兵器性能を超えた火力に命中率が悪い。
もっと言えば、やはり砲身に負荷がかかり過ぎるのか次弾装填から発射までは遅い。
ここで敵駆逐艦一隻が沈んでいく。
残りの三隻も中破と小破ではあるが、後は時間の問題だろう。
「危ない、菊月避けて!」
「きゃぁぁぁ」
菊月が敵の攻撃を受けて、ダメージを負う。
見たところかなり痛そうだ。
影が声を掛けようとするが、菊月は夕月に護られながら自力で立ち上がる。
そして武器を構え、戦いに戻る。
「まだまだぁ! ここで負けるわけにはいかないんだ! ありがとう」
「OK~。このまま提督達を護りながら戦うよ~」
「うん。まずは中破した駆逐艦からお願い。私が少し前に出て敵の注意を引きつける」
「わかった」
「魚雷装填。一番、二番、飛んでけ!」
そのまま菊月が少し前に出て、夕月が中破状態の敵駆逐艦の撃破に向かう。
「魚雷装填完了。いっけぇーーー!」
夕月の魚雷が敵駆逐艦に直撃し、撃破に成功する。
そのまま夕月は敵戦艦並びに駆逐艦に包囲されそうになっている菊月の救出に向かう。
その時、赤城が第一次攻撃隊から入電を受け取る。
「提督。敵航空母艦が撤退を始めました。それと制空権確保に成功です」
「わかった」
「一度補給の為、第一次攻撃隊全機帰還します」
このまま一気に攻めたい所ではあったが、どうやらそう上手くはいかないらしい。
ゲームならばこのまますぐに攻められるが、現実はそうはいかないのだ。
影達が飛行甲板を差し出すと、次々と第一次攻撃隊が帰還してくる。
「提督、敵は航空戦力を失いつつあります。第三次攻撃隊発艦の許可をお願いします」
ここで飛龍が追撃の許可を影に取る。
確かに補給が既に終わっている、予備機を使う事で攻撃は可能であるが。
それをどちらに使うかが問題だった。
撤退を始めた航空母艦の撃墜に向かわせるのか、やはり手数で負けてる菊月達の方に向かわせるのか。
提督としての判断は今後の脅威を考え、敵航空母艦の撃沈。
影個人としては、今も一生懸命頑張っている菊月、夕月の援護。
――クソッ。どうすればいい……。
「提督、どうしますか?」
「……加賀なら敵空母と戦艦並びに駆逐艦どちらを優先する?」
「敵空母です。提督は何か勘違いしておりませんか?」
「勘違い?」
「はい。私達艦隊少女は提督を護るため、そしてフェルト島に住む皆の為に戦っています」
加賀が真っすぐと影の目だけを見る。
加賀の綺麗な瞳には、迷い戸惑っている影の姿がしっかりと映っていた。
「多少のリスクは承知の上で今回奪還任務を行っているのであれば、最後までそれを貫き通してください。提督が望むのであれば私達は命を懸けて影提督についていきます」
「ありがとう、加賀」
「はい」
影がお礼を言うと、加賀がほほ笑む。
「蒼龍、飛龍、第三次攻撃隊発艦。敵空母を逃がすな!」
「「はい!」」
「第三次攻撃隊、急いで全機発艦してください!」
「第三次攻撃の要を確認。承認。攻撃隊発艦!」
二航戦の飛行甲板から第三次攻撃隊が撤退を始めた敵航空母艦に向かって飛んでいく。
今回赤城、加賀は予備機を搭載していなかった。
これも戦闘に出る回数が二人は多く、既に資源不足で戦闘機の修復が間に合っていない為に起きていた。
「加賀、第一次攻撃隊の補給急がせて」
赤城が加賀に確認するように言う。
「わかってる。もうそろそろ第二次攻撃隊も燃料と弾薬がマズイ。何とかそれまでにはギリギリ間に合いそう」
加賀の表情が苦い表情になる。
資源不足がここまで影響してくるとは影は思っていなかった。
これもいい勉強になったと思いたいところではあったが……。
やはりこの奪還作戦の失敗は許されないと感じた。
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