第31話 よくやった菊月、夕月
「提督、こちらはもう燃料がないため、補給ができません」
「私はまだ少しありますが、第一次攻撃隊の半分が限界です」
予備機に補給用の燃料と弾薬を使った事により、蒼龍の資源が底をつき。
飛龍の燃料と弾薬も残り僅かとなった。
これでもかと言うぐらいに資源の大切さを学びながら、影が二人に頷く。
「わかった。飛龍はとりあえずできるだけ補給をして」
「わかりました」
本来であれば状況は良くなるはずなのに、逆に悪くなっていく。
これも準備不足いや確認不足が招いた結果だと言わんばかりに状況は悪くなっていく。
ここで影が気付く。
この戦いは、現実の物とさして変わらないのだと。
ゲームのように体力やお互いの信頼、後は弾薬、燃料、搭載機……等々数値化してみる事は出来ない――つまり。
『全て自分の頭の中で計算しておかないといけない』のだと。
ここはゲームの中で合って現実の世界であると。
「……ここからどうすればいい」
――残る敵は戦艦二隻、駆逐艦二隻。
だが、菊月と夕月は既に体力的に辛そうだった。
それに装備を見る限り、菊月は魚雷を全て使いきっている。
夕月も残り二本しか持っていない。
敵戦艦は二隻ともほぼ無傷で駆逐艦は一隻が大破、一隻が小破。
気づけば菊月と夕月は中破とあまり無理はさせられない状況になっている。
ここまで来ると……。
……そう――戦術が大幅に限られてくるのだ。
だが敵は表情一つ変えずに、動きながら攻撃を次々としてくる。
――戦況の悪化に仲間の戦意が下がり始める。
士気の低下は仲間全体の動きの悪化に繋がり、更なる悪循環を生む。
……こうなるとかなり厄介な事になる。
「……っ」
影が舌打ちをする。
旗艦である影の苛立ちに周りが気付き始める。
その時。
ふと、影が空を見れば敵の直掩機の撃破に成功した第二次攻撃隊の姿が見えた。
影は急いで確認する。
「赤城、加賀、蒼龍、飛龍。第二次攻撃隊の補給は必要?」
「はい。私は必要ですが、もう間もなく第一次攻撃隊の補給が終わりますので入れ替わりでいけます」
「私も赤城と同じです。後三十秒程で補給が終わります」
「私はもう補給は出来ませんが後少しなら戦えると皆さんが言ってます」
「私は蒼龍と同じくもう少しならと皆さん言ってます。それと補給できるだけですが、第一次攻撃隊の補給終わりました」
――その時、笑みがこぼれた。
影の頭がようやく状況の把握に追いついたからだ。
――忘れてはいけない。
影に敗北は許されない。
まして執務室であんなにカッコイイ事を言っておきながら負けましたとは言えない。
「赤城、加賀第一次攻撃隊の補給が終わり次第全機発艦。そのまま敵戦艦を攻撃開始と同時に第二次攻撃隊を戻して!」
「「わかりました!」」
「蒼龍、飛龍はそのまま皆に頑張ってもらうのと、飛龍は補給が終わった第一次攻撃隊を発艦させて菊月、夕月の援護を!」
「「はい!」」
「全員スキル持ちの戦艦は後回しだ!」
影は第一次攻撃隊を発艦させてから大声で叫ぶ。
全艦隊少女並びに、攻撃機舞台に聞こえるように。
「菊月、夕月、残った弾頭、魚雷を使いきっていい。敵駆逐艦を必ず落とせ!」
そして大きく息を吸って。
「艦隊少女の意地をみせてやれーーーーー!」
と腹の底から大声で叫ぶ。
――旗艦である影の言葉に影響を受けた全員の気持ちが前向きな物に変わる。
「夕月、まずは大破した駆逐艦を魚雷で沈めて。飛龍さん援護をお願いします」
「菊月、任せて。ならもう一隻の駆逐艦はその間こっちで足止めするね」
「ありがとうございます」
菊月と夕月の砲撃を躱しながらも、最後の悪あがきをする駆逐艦に夕月の魚雷が狙いを定める。
そして、来るべきタイミングを待ち。
「魚雷装填完了。一番、二番発射~!」
魚雷は真っすぐに飛んでいき、敵駆逐艦を撃墜する。
そのまま菊月、夕月の二人は残りの一隻を挟むようにして攻撃を開始する。
上空からは飛龍の攻撃隊が援護し、残り一隻となった敵駆逐艦は足早に沈んでいった。
「やった!」
「勝ったね!」
と言ってハイタッチをする菊月、夕月。
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