今のご時世、提督も出撃しなければならない、てか提督スキルってなに……
光影
プロローグ
第1話 異世界転生
「これは?」
大学二年生、二十歳、人見知りが少しあり、どちらかと言うと引きこもり体質である。
本とゲームと言う物に出会ってからは、そこそこに勉強をして基本的には大学では小説を読み、家ではゲームと言う生活をしていた。
両親は大学の単位がしっかりと取れているなら別に構わないと言うスタイルらしく特に文句を言われることもなかった。一人息子と言う事もあり何だかんだ甘やかしてくれていたのだ。
ちなみにこれでも高校時代は当時好きな子と一緒にいたいと言う理由で弓道部だった!
なので昔から引きこもりと言うわけではない。
ちょっと内気な性格ではあるが。
話しを戻して。
そんなどちらかと言うと自由な大学生活を送っていた武藤だった。
それがまさかあんなことになるのだとは思いにもしなかった。
時間を少し巻き戻して。
武藤は家での暇つぶしとして何かいいゲームはないかと近所にあるゲーム屋に来ていた。
そこで世間的に有名なゲームはもう誰かが遊び攻略法が世に知れ渡っていると考えた武藤は少し古いゲームコーナーに立ち寄る。そこで世間的には注目を浴びなかったソフトの中から面白そうなゲームを探していた。
「提督の成り上がり?」
少し古そうな感じしかしないパッケージを見てそう呟いた。
だがパッケージのあらすじに目を通して見れば、提督として艦隊の女の子を指揮し敵を倒していくと言う好きな部類のゲームでは合った。
ただ世間的に類似作品が評価を受け、埋もれてしまった残念な作品と言う認識である。
だがこれも何かの縁と思い購入する事にした。
武藤が求めている物はとりあえず来月販売のある新作ゲーム販売までの暇つぶし用のお手軽ソフトなのでそれさえ叶えば何でも良いと言うのが本音であった。
ソフトを購入してからスマートフォンでどんなゲームなのかを調べていると、今の類似作品とあまり変わらない。つまりは王道ルートの作品だった。
可愛いヒロインが戦艦や空母の装備品一式を装備して戦う、後はその中のヒロインと結婚したり、領土を広げ世界を救ったりする感じのゲームだった。
まぁ、評価も悪くないしと内心期待しながら家に着いた武藤は早速ハードの電源を入れてソフトを入れ起動する。
ノーベル大陸、ライト王国――首都フェルト島。
赤道を南におき、東西に横長く広がる大陸、その最西端にある小さな国と言う名の島。
かつてはこの大陸以外にもノーベル大陸と海域ほとんど全てを支配していた大国では合ったが、今は見る影はない。
現在、残っている領土――その土地が最後の領土となっている。
もっと言えば、人類に残された数少ない領土の一つである。
『最後の命令だ。影……あとは頼んだ!』
――それがご命令とあれば、必ず成し遂げて見せましょう。
これが前任提督の最後の言葉でゲームを起動して初めの言葉? 会話? である。
前任提督の名はセシル。
何でも不治の病にかかり亡くなったらしい。
とりあえず初期設定は名前が影、年齢は二十、男性、身長百七十センチ、体重四十一キロ、茶髪セミロング、細身にした。
なのでここでの影とは武藤の事である。
その時、目の前のモニターにノイズが走る。
同時にソフトがフリーズする。
「あれ? どうしたんだ?」
すると――
モニターのノイズがドンドン酷くなっていく。
コントローラーのボタンを押しても直るはずもなく。
試しにモニターを叩いてみても直るはずもなく。
ハードを叩いても直るはずもなく。
これではどうしようもないと思い諦め、電源の入り切りをしようとした時。
モニターのスピーカーからさっき聞いたセシル提督の声が聞こえてきた。
『お主が影か?』
部屋のカーテンが突如閉まり、部屋の扉の鍵がガチャと音を鳴らし閉まる。
一体何が起きてるんだ?
『答えよ。お主が影か!?』
するとセシル提督が再び語りかけてきた。
ただの音に過ぎないその声は年相応の独特な威圧感を放っていた。
「……あぁ」
『そうか。では後の事は任せる。ワシの後任は現時刻を持ちお主とする。若き優秀な提督としてどうか人類を救って欲しい。では期待しておるぞ影!』
するとモニターから白い光が部屋全体を包み込む。
そのままモニターの中に武藤の身体は吸い込まれた。
それは突然部屋に出来たブラックホールのように抗う余地もない程の吸引力で……。
――……。
そして――。
白く染まる世界。
それが雲の中だった事に気が付いたのは急降下している感覚があったからだ。
そして、視界を下に向ければ、青い海が見える。
今、武藤……いやこの世界での影はパラシュートなしでスカイダイビングをしている状態だと理解した。
そこは――上空、パラシュートはなし海には当然クッションとなる物もなし。
「うぉおおおあああぁぁぁ!?」
自室から突然のスカイダイビング。
――だが驚くのはまだ早かった。
影の頭がこの状況を理解しようと、限界まで加速する。
「なんだぁ、これぇえええぇぇぇぇ!?」
――遠くを見れば上空では戦闘機同士が戦っている。
――同じく離れた海域では武装した女の子通しが、砲撃を撃ち合っていた。
ゲームのやり過ぎてとうとう頭が可笑しくなったかと思い、何度も見直すが変わらない光景。
地平線の向こうに見えるは、大きな大陸や小さな島の数々で。
どう考えても影が知る『世界』ではなかった。
だが何処かで見覚えのある武装に影の頭が悟る。
これはゲームのパッケージで見た武装。
つまりゲームの世界なのだと。
だが今はそんな事はどうでもよかった。
「誰かぁ~タスケテクレぇぇぇぇええええ!」
このままでは海に着地と同時に死んでしまうのだ。
すると戦闘機をそのまま縮小したような小さい戦闘機が並走してくる。
並走と言っても急降下ではあるが。
「新提督、こんな所で何をしているのですか?」
全く何が何だかがわからない影は反応に困ってしまった。
だがここには戦闘機の中にいる。これもまた一回り小さい女の子が乗っているだけで他には誰もいない。
「……もしかして、てっ、提督って俺の事?」
もしやと思い、恐る恐る聞いてみる。
「はい。他に提督はいませんから」
小さい女の子は首を傾向けながら答える。
苦笑いの影を置いて、小さい少女が言う。
「このままだと後三十秒で海に落下しますが、大丈夫ですか?」
――高みの見物をするこの少女にイラついている暇はなかった。
「……大丈夫なわけあるかぁ! てか助けれるならなんとかしてくれ!?」
「かしこまりました」
そう言って戦闘機と共に小さい少女は何処かに行ってしまう。
――そのまま影の意識は暗転した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます