第21話 初対面


 ――――そして十分後。

 先ほどと同じ場所で、腰を降ろして赤城は胸に手を当て深呼吸をしていた。

(提督が好きとか言うから、ドキドキが止まらない……) 

 そして影の目の前には加賀、蒼龍、飛龍、菊月、夕月がいる。


「ゴメンね。いきなりこんな所に呼び出して」


「いえ、それより提督……あの時は提督を護れずすみませんでした」


「私も自分の事で手一杯になってしまい、足を引っ張ってしまい申し訳ございません」

 加賀と蒼龍が影に対して、頭を下げて謝ってくる。


「ううん。まぁ二人がこうならなくて本当に良かったよ。それにこれは俺の実力不足でこうなっただけだから二人共気にしないで。それより頭を上げて少しばかりお話しを聞いてくれないかな?」

 影は自分を反面教師にする。


「「あっ、ありがとうございます」」

 そして加賀、蒼龍が下げていた頭を上げる。


「えっと飛龍、菊月、夕月は初めましてだね。これからよろしくね」


「はい、よろしくお願いします。飛龍です、これから提督の為に一生懸命頑張ります!」

 黒色のショートカットが良く似合い、可愛い顔立ちで、服越しでもハッキリと分かるぐらいに胸が大きい飛龍。その胸につい視線が誘導されてしまう。それと怪我のせいか腕と足には白い包帯を巻いていた。


「えっと……提督よろしくお願いします。微力ながら提督の為に頑張りたいと思います」

 茶色の長い髪に背丈が低く、容姿だけで言えば中学生に間違われるのではないかと思われる印象がある菊月。


「よろしくお願いします。提督、私にエッチな事は期待しちゃダメですよ」

 赤みがあるオレンジ色の長い髪に背丈が低く、容姿だけで言えば中学生に間違われるのではないかと思われる印象がある。そして何故か丈が物凄く短いミニスカートを履いており、歩くたびに下着が見え隠れしそうな服装。ちょっと露出魔的なところがあるのかなと思わせぶりな態度をとる夕月。


 三人の自己紹介が終わって、影が一度深呼吸をする。

「先に答えから言うと、今集まってもらったメンバーでフェルト島資源庫の奪還作戦をしようと思う。攻めるのは二日後の深夜。簡単に言えば夜襲だね」


 その言葉に加賀、蒼龍、飛竜が驚き、菊月、夕月の顔から余裕がなくなる。

 少なからず全員が何か思う事があるみたいだ。

 かと言ってここで話しを止めていては先に進まないので、影は無視して話しを進める。


「旗艦は俺がするよ。俺と第一航空艦隊で出撃。それから菊月、夕月は、俺や赤城達の護衛をお願い。一航戦と二航戦なら夜戦にも慣れているだろうからそのまま敵艦隊の撃墜をお願いしたい。どうかな?」


 五人がそれぞれの顔を見て、ボソボソと何か相談を始める。

 影は五人の意見がまとまるまで大人しく待つことにする。


「提督、一つ宜しいですか?」


「どうしたの、飛龍?」


「提督も出撃されるのですか? どう見てもそのお身体では厳しい戦いになるかと思います。命じて頂ければ私達だけでも突撃します。今提督を失えばこのフェルト鎮守府は間違いなく危険な状態になるかと思います。ですから今は休まれてはいかがでしょうか?」

 影が迷う。

 やはり艦隊少女にとっては提督と言う存在は素人の影でも大きいらしい。

 赤城の時はお互いの信頼関係がある程度あり、納得させることが出来たが……と考えていると何とか平常心に戻る事が出来た赤城が後ろから助け船を出してくれる。


「飛龍?」


「はい」


「大丈夫よ。提督は私がこの命を懸けて必ずお護りするわ。だから皆、安心して」

 あれ? 影が思っていた流れとは何かが違う気もしなくはなかったが。

 何故か赤城に対する信頼の方が影よりあるのか皆がウンウンと言って納得する。

 これはこれで色々と問題あるわけだが、本命が通るならと思いここは黙って見守る事にする。


「それに勘違いしてるわ。提督の力は飛龍、菊月、夕月が思っている以上にかなり強いの。だから提督が自ら出撃して頂けるなら、その方が絶対いいわ」


「と言いますと?」


「加賀、蒼龍はもう知っているけど、影提督のスキルは『使用者を中心とした半径十メートル以内の味方の能力を五%上昇』なの。つまり効果範囲内に私達自身がいれば艦載機全ての能力が向上するわ」


「……うそ」

「……凄い」

「……カッコイイ」


 飛龍、菊月、夕月がそれぞれ口にする。


「だから提督の力は必要よ。それにいざとなれば提督だけでも鎮守府に救援を要請して逃がす事も可能。最悪私達が囮になればいいだけ。違う?」


「……確かに」

 赤城の言葉に飛龍が納得する。

 影としてはそれはそれで良くない方向で話しが進んでいたが、とりあえず皆の承認を得る事を最優先と位置づけ黙って見守る。最悪、後から細かい所は修正はできるからだ。


「そうですね。赤城さんの言う通り私達なら大丈夫だよ。きっと提督を護れる。何より提督のお力は凄いから」

 ここで蒼龍が飛龍の顔を見て、呟く。


「わかった」


「良し! なら皆文句はないって事でいいわね?」

 その言葉に全員が頷く。が影は何処か違和感を覚えた。

 そして赤城が私の力見ました? と言わんばかりに影の目を見つめてくる。

 ここで反応しては、せっかくいい感じにまとまった話しが脱線すると思い影はあえて無視する方向で行く。


「他に何か聞きたい事はあるかな?」


 全員の顔を見る限り特にないと言った感じがした。

(やっぱり、何か隠してる……気がする。気のせいだといいが……)


「なら作戦日の夜に詳しい事は話すからそれまでは自由にしていいよ」

 そう言って影は解散を指示する。

 すると一礼してから夕月が菊月の手を引っ張り何処かに走って行ってしまう。

 その時にやはり夕月のミニスカートは丈が短いためか、赤い下着がチラチラと見えた。

 あれはあれで注意しないとなと影は思ったが目を瞑る事にする。

 よくよく考えれば男が自分一人なので、同性でそう言ったいけない関係や事件はそう起きないと考えた時に自分が気を付ければ全てが丸く収まると考えたからだ。


「あら、あの子今日は赤のパンツなのね」

 そう思って安心した矢先に無視できない言葉が赤城の口から出てくる。


「また派手な下着をはいてますね」

 蒼龍が呟く。


「もしかしたら女の子の日なのではないでしょうか?」

 そして飛龍までもが女の子同士の話し合いに加わる。


「なるほど。まぁ年齢的にも来てないと可笑しい物ね」


「私はもう今月は終わりましたよ」


「私もです」


「私はまだよ。蒼龍と飛龍がちょっとだけ羨ましいわ。私の場合重たいから」


「あら、それは大変ですね」


「良かったら痛み止めあげましょうか?」


 ……以下略。


 影はこれが元居た世界では関わる事がなかった女の子同士の会話の一部始終なのかと思ってしまった。赤城をチラッと見ると「いつものことですよ。やっぱり女しかいませんからね」と影に耳打ちしてきた。そして確信に変わった。これが普通で正常な状態だと。これはこれで影が環境に適応する事で対応する事になる。影はやるべきことの多さに思わずため息を吐いた。


「なら今日は少し早いですが、家に帰りましょうか?」


「そうだね。悪いけど今日はお世話になるね」


「はい。提督が望むならいつでも大歓迎です。では行きましょう」

 影は楽しく会話する加賀、蒼龍、飛竜に挨拶をしてから赤城と一緒に帰宅する。


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