第7話 生まれて初めての経験
全部終わってから。
影は赤城と一緒に大浴場に入り、身体を温めていた。
異世界に来て初めてのお風呂にかなりドキドキしている影。
綺麗なお姉さんでとても頼りになる存在的な赤城。
タオル越しだと、その膨らみがより強調される胸。
また全身の肌はハリがあり、とても綺麗だった。
長い髪を今は別のタオルで巻いて、湯舟に付けないようにしているが、髪もハリがありとても綺麗だった。
印象としてはかなりの好印象。
「ねぇ、赤城?」
「なんですか?」
「色々と気を遣わせてゴメンね。でもありがとう」
「い~え。素直な提督が私は好きですから」
赤城は微笑みながらそう言ってきた。
その顔が僅かに赤みを帯びていた事に気が付いた影は艦隊少女と言っても普段は普通の女の子なんだなと思った。
やはり異性とのお風呂は誰だって緊張してしまう。
「そうそう、説明を忘れていましたが明日から正式に鎮守府に提督として着任してもらう事になりますのでそのつもりでいてください」
「わかったよ」
「とりあえず今日は私と一緒にいましょう。何かあればすぐにサポートできますし、ここなら人目を気にせずに二人きりでいれますから」
確かにまだわからない事が多い現状赤城と一緒にいた方がいい。
それに影には帰るべき家すらない。
なのでここで追い出されでもした日には、野宿確定になってしまうのだ。
それ以前に無一文の為、今日の夜ご飯すら食べれない弱者なのである。
対して赤城は恐らくかなりのお金持ちである。
今二人がいる浴槽も十人は余裕で入れそうなぐらい広い。
これだけでもお金持ちなのはよくわかる。
下手に見栄を張った所で赤城には今の所戦場でも鎮守府でも何一つ勝てない事がわかった。
男としてこれはこれで何処か情けないが現実を見て生きる事にする。
「ありがとう。赤城って優しいんだね」
「あっ、いえ、そんな事は……ありませんよ。やっぱり影提督はセシル提督とは違って何処かお優しいのですね」
前任のセシル提督のこと等殆ど知らない影。
それ故に何て反応していいかわからなかった。
一応影の中でのセシル提督は強引に影をこの世界に引きずり込んだ人物で、ある意味生涯忘れる事のできない名前の持ち主ではあった。
――それから二人は世間話をして交流を深めた。
その中で赤城は昔から面倒見がいい人物であることがわかった。
「ふぅー、サッパリしたぁー」
「それは良かったです。にしても提督は見てて可愛いですね」
流石に一緒に着替えると言うわけにもいかないので、赤城が着替え終わるのを待ってから自分も素早く着替えた影。
心身ともにリラックスした影は清々しい気持ちで一杯だった。
――前任提督のセシルを知っている者からしたら今の影は似ても似つかなかった
着任当時から上下関係に厳しく徹底的に統制がとれた指揮の元、精霊艦隊と闘っていたセシル提督。に対して影は何処か穏やかなで頼りなさが正直あるものの相手の気持ちを考えて行動してくれる優しい提督に今後なりそうだなと赤城は感じていた。それに今日一瞬見えた提督としての素質だけで言えば文句はなしだった。
なんというか。
(あまり褒められる事や感謝される事がなかった環境にいたせいか……)
「ありがとう」と言ってくれる異性に赤城の心は少しずつ揺れ動いていた。
――そんな乙女心を揺らすように追撃をする影。
「もし良かったら、今日だけでいいから泊めてくれないかな? あっ……勿論離れて寝るし何なら布団じゃなくてもソファーとかでもいいからそこで寝かせてくれない?」
と積極的な影に赤城は嬉しくも困ってしまった。
最近の若い男性はこんなにも積極的なのだろうかと勘違いしてしまう程に。
「えっ、あっ、はい……っかまいません」
生まれて初めての経験。
心臓の鼓動がいつもより速くなり、全身の血の巡りが速くなる感覚に襲われる。
だが――問題はそこでなく。
提督を見ていると胸が締め付けられるような感覚が痛くも気持ちいいと感じることだ。
これは一体どうしたらいいのだろうか。
「ありがとう」
「それよりそのままだと風邪引きますよ。ちょっとこっちに来てください」
とりあえず平常心を心掛け、濡れている影の髪の毛を見て言う。
そのままドライヤーを手に取り丁寧に影の濡れた髪の毛を乾かしていく。
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