第4話 チュートリアル


「司令室聞こえる?」


「はい」


「赤城の名の元命令です。私と影提督が今から迎撃に向かいます。装備換算を急いで。そのまま燃料と艦載機の補給準備が出来次第すぐに出撃!」


「かしこまりました。装備の確認終了。問題なし。進路オールグリーン。航空母艦赤城出撃してください!」

 すると、ガガガッと言う油が切れたような音を鳴らしながら目の前にある巨大な扉がゆっくりと開く。そのまま目の前に見える青一色の世界。心の何処かで感動していると特殊な靴を自動的に機械によって履かされる。


「了解! 赤城出撃するわ!」


 そのままアイススケートのように赤城が滑るようにして出撃する。ただし見た感じ動きやすそうな靴にジェットブースターでも付いているようにも見えた。まるで地上と変わらないようにスイスイと進んでいくと、赤城の通った道筋をなぞるようにして弓と飛行甲板が影のいるハッチから飛ばされる。


「すげぇ~」


 影が感動していると空を飛び赤城の元に飛んでいく弓と飛行甲板が吸い込まれるようにして赤城に装備された。


「進路オールグリーン。提督影出撃してください!」


「……はい」

 どこか頼りない弱々しい声で影が返事をする。

 成り行きとは言え、まだ状況の整理に頭が追いついていないのだ。

 だが誰もそんな影の事を待ってはくれないらしく、勢いよく出撃する。

 水上でこけないようにバランスを取りながら赤城の元まで行くと、先ほどと同じく弓と飛行甲板が飛んできたので手を伸ばすと後は勝手に装備された。


「おっ、おぉ~凄い」


「水上では体重移動で加速、減速、方向転換が出来ます。後ここにある矢がそれぞれ搭載機となります。搭載機を飛ばしたい方向に矢を構えて矢を放てばある程度直進した後に搭載機へと元の姿になります。簡単に言うと矢は搭載機の仮の姿です。後、私の場合は一本の矢で五~七機ですが、提督の場合はまだ二~三機となります。これは搭載機の数や練度によって異なります」


 影の手を引っ張りながら誘導してくれる赤城が根絶丁寧に説明をしてくれる。

 影はゲームで言うチュートリアルみたいなものかと思いながら有り難く聞いて行く。


「搭載機の子達は私達の基本的なステータスに影響を受けて強くなって行きます。ですから提督の場合はレベルを上げたり射撃の練度を上げれば勝手に搭載機の子達も強くなります」


 人間命を懸けるとなると大抵どんな状況でも何とかなるものだなと思いながら敵水雷戦隊がいる方向に向かって進んでいく。正直、戸惑いはある。だけど、赤城なら何とかしてくれると心の中で期待している自分がおり、さほど怖くはなかった。


 とは言っても、まだ戦いと言う物がどんなものかを実際に感じていないからだと思う。今まで平和な世界で育ってきた自分が戦場に立ってもこの状態で平然と何かを出来るとは到底思えなかった。出来る事なら元の世界に戻りたいところではあるが、現状それは出来ない。むしろ出来たらそうしてる。手を通して伝わってくる赤城の温もりを感じながら影はそんな事を頭の中で考えていた。


 かくして――影の初出撃は航空母艦赤城と一緒に果たされた。


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