第3話 緊急事態


「それならそうと最初から言ってください。てかそれ大丈夫なんですか!?」

 赤城がいきなり身を乗り出して顔を近づけてくる。

 顔がドアップになった視界の下の方では女性を強調する胸の谷間がハッキリと見えた。


「う……うん。それでやり方をとりあえず教えてくれる?」

 手を使い、赤城を落ち着かせる。


「そうですか。なら良いのですが。スキルは指をこう上から下にスライドするように動かすと出てきます。私達では何もなりませんが提督なら出てくるかと思います」


 試しに赤城がやったように見よう見まねでやってみると青いパネルが出現する。

 そこに提督固有スキルと言う物が合った。

 そのまま視線を下にズラすと、『仲間の絆』と書かれていた。


 提督固有スキル:仲間の絆(自動発動)


 効果1:使用者を中心とした半径十メートル以内の味方の能力を五%上昇

 効果2:使用者を中心とした半径十メートル以内の味方の総合値の三%を自身の能力に付加

 効果3:効果2を付与した特別攻撃機の発艦五機 ※特別攻撃機は搭載機と同じ


 どうやら影のスキルは味方の近くにいれば自動発動で回数制限のないスキルみたいだ。

 これならばスキルについてはあまり気にする必要がない気がすると影が考えていると、赤城が影の隣に来る。


「ちょっと横を失礼いたします。そのままその下にある装備って欄をタップしてみてください」


「こう?」


「はい。すると影提督の今の装備が出てきます。これは影提督が強くなるほど自動的に武器も強くなりますので、時々こうして確認しておいてください。ちなみに装備は今の私と同じですが、搭載機の数がやはり少ないですね」

 そのまま赤城に見るポイントなどを教えてもらいながら一緒にステータスを確認していく。


 提督:影 Lv.1


 装備


 搭載機 常用27機

 零式艦上戦闘機:10機

 九九式艦上爆撃機:5機

 九七式艦上攻撃機:10機

 彗星:2機


 となっていた。

 赤城曰く、これもスキルと同じく戦場に出て、敵を倒せば倒すほど強くなっていくらしい。どうやら今の影は他の島や海に面した陸を護っている提督はおろか今フェルト島を護っている艦隊少女達の中でもかなりのロースペックらしい。

 まぁ今初めたばかりなのでそれはそれで無理もないと諦める事にする。

 どうせならチート級の何か一つでも持っていればとどれだけ楽だっただろうかと嘆くが、世界はそんなに甘くないらしい。


「そんな顔しなくても大丈夫ですよ。基本的に旗艦である提督は私達がこの命を持ってお守り致しますので。ですから安心してください。時に提督の剣となり盾となる覚悟を私達はしております」

 それはつまり少女達にも命があり、時に死ぬと言う事なのだろう。

 もっと言えば、無能な旗艦であればある程仲間を失う事になり、いずれ自分も死ぬことになるのだろう。


「ありがとう。俺、強くなるから」


「そうですか。頼もしい提督でなによりです」

 赤城が笑みを見せながら答えてくれる。


 その時、戦時中をイメージさせる鐘の音が影がいる建物全体に響き渡る。突然騒がしくなる建物全体に影がうろたえていると、赤城が影の手を掴む。


『非戦闘員の皆さんは避難を開始してください。繰り返します。非戦闘員の皆さんは避難を開始してください。これは訓練ではありません。ただいま南西方面から精霊水雷戦隊がフェルト島に向かって侵攻して来ています』


 すると赤城が勢いよく立ち上がり、影の手を全力で引っ張って走り始める。

 こうなった以上、赤城を信じて後ろをついて行くことにする。

 どうやら敵はこちらの心の準備が終わるまで待ってくれる程優しくないらしい。


「提督。今フェルト島は多数方面から攻撃を受けており、戦える艦隊少女は殆どいません。やや強引な形ではありますが、私達でやりましょう!」


「私達!? ちょっと、うわぁぁぁぁぁぁぁ」


 そのまま出撃ハッチに半ば強引に身体毎放り込まれる。

 見た目によらず力があるらしい。

 そして狭く気持ち長い滑り台をゴロゴロとダンゴ虫のように丸まって転がり落ちる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る